決意
あと2話ぐらいで過去篇は終わるかも。
アラドと別れてから、一時間も経たないうちに次の任務の場所に着いた。
フィンペル王国東部のもう一つの村で、住民と魔法使いの間でトラブルが起きているという報告が入っており、仲裁と状況確認を行うという内容だった。難易度は低い。
村に着いた。最初に目に入ったのは、倒れている老人だった。村道の脇に、うずくまるように倒れていた。骨が折れているのか、片腕をかばうような姿勢だった。傍に、複数の若い魔法使いたちが立っていた。6人いた。年齢はまちまちで、一番上でも20歳前後に見えた。全員が杖を持っている。全員が、依頼を達成したという顔をしていた。
「何がどうした?」
ヴァルドが声をかけると、その中の一人が振り返った。リーダー格らしく、他の四人より少し前に立っていた。
「あ、冒険者さんですか。ちょうど良かった。この老いぼれが、魔物の討伐の邪魔をしたんですよ。だから、邪魔にならないようにどけてやりました」
どけた、とはどういう意味だ・・・
ヴァルドは老人を見た。老人はまだ意識があったが、その目は痛みに霞み、ヴァルドを虚ろに見つめている。
「邪魔だったから、魔法で吹き飛ばしました。何か問題でも?」
若い魔法使いは、まるで子供がいたずらを成功させたかのように、悪びれる様子もなく言った。
「魔物の討伐中に、横から「娘を・・・娘を早く助けてください」とか喚き散らしてきたんだ。でも、討伐中にそんなことを言われても困るじゃないですか。だから、黙らせてやったんですよ」
リーダー格の隣に立っていた別の一人が、補足するように言った。
黙らせたか。その言葉が、俺の心に重く響のは何故だろうか。
ヴァルドは周囲を見渡した。村道には、数人の村人が立っていた。全員、若い魔法使いの集団から距離を置いている。その目には、老人に近づきたいが、近づけない、という明確な怯えがあった。
「他に何かしたか?」
「特には。まあ、魔物を追って村の中を移動した時に、いくつか建物にぶつかってしまいましたが、それは事故です。魔物の動きが予測できなかったので。まさか、あんなに脆いとは思わなかったので、壁が崩れたり、火が出たりしたのは、私のせいではありません」
建物に当たった、というのが何を意味するかは、周囲を見れば一目瞭然だった。村道の端にある建物の壁は一部が崩れ落ち、別の建物からは焦げた跡が覗いていた。それは単なる「ぶつかった」というレベルではない、激しい衝撃の痕跡だった。
「魔物は倒せたのか?」
「はい、もちろんです。依頼は達成しています」
若い魔法使いは、誇らしげに胸を張った。
「・・・そうか」
ヴァルドは老人の傍にしゃがみ込み、折れた腕の状態を確認し始めた。
一応、ルグから色々教えてもらったから、外傷の確認ぐらいはできるが・・・この怪我の具合は、教わらなくても分かるほどの重症だ。魔法による衝撃で、無惨に骨が砕け散っている。粉砕骨折か。
粉砕骨折となると・・・俺では治せないな。そこまで手術のスキルや知識はないし、、治癒魔法も扱えるわけじゃない。あの男の仲間が扱えるかもしれんが、彼奴らは絶対治さないだろう。
そしたら・・・
「村に、医療ができる者はいるか?」
傍で見ていた村人の一人が、怯えながらも頷いた。老人を連れて行こうとしたその時、若い魔法使いが口を開いた。
「あの、依頼の報告書にサインをしてもらえますか?依頼達成の確認が必要なので。次の依頼に仲間と共に早く移りたいんです」
ヴァルドは立ち上がった。若い魔法使いを見た。その目に、悪意はなかった。ただ、自分が何をしたのか、その深刻さを微塵も理解していない。魔物を倒した。依頼は達成した。それだけの認識。
老人を吹き飛ばしたことも、建物に当たったことも、彼にとっては些細な、あるいは起こるべくして起こった事に過ぎないのだ。
「報告書の話は後だ」
「でも、早く次の依頼に」
「後だと言った」
ヴァルドの声は、先ほどよりも低く、冷たい響きを帯びていた。
若い魔法使いは、少し不満そうな顔をしたが、ヴァルドの鋭い視線に押され、黙った。ヴァルドは村人に老人を任せ、村の中を確認して回った。
壊れた建物は二棟。一棟は壁が崩れただけだったが、もう一棟は激しく燃えた跡があり、内部は黒焦げ、使い物にならない状態になっていた。村長が出てきた。顔色は青ざめ、その目は絶望に染まっていた。
「魔物は退治していただきましたが・・・あの方達が来てから、村の方がひどい被害で・・・」
「あの方達?何人来ていたんだ?それ以前に、いつから来ていた?」
「6人で今朝、ここに来ました。最初は丁寧に挨拶してくださって、良い方かと思いましたが・・・私たちに魔法を扱えるものがいないと分かった瞬間・・・」
「他に怪我人はいるか?」
「子供が一人・・・・・・子供が、魔法の余波を受けて、家の壁が崩れた時に・・・・・・今は家にいますが、軽傷だと思いますが・・・・・・」
子供が余波で怪我をした。ヴァルドはその言葉を聞いて、しばらくの間、凍りついたように動けなかった。弱者を守るために戦う者が、その手で弱者を傷つけている。それも、本人は全く気づかずに。
「あの方達に、出て行ってもらうことはできますか?」
村長が、絞り出すような声で尋ねた。
「対処する」
ヴァルドは、若い魔法使いの元に戻った。
「依頼の件だが・・・」
「はい、サインをもらえますか」
若い魔法使いは、まだ依頼達成の確認を急いでいるようだった。
「お前は今日、老人の腕を折った。子供を余波で怪我させた。建物を二棟、にした」
若い魔法使いは、少し眉を寄せた。
「でも、魔物は倒しました」
今度は別の一人が言った。その声に、反論しているという意識すらなかった。本当に分からないから、分からないと言っている、そういう声だった。
「魔物を倒すことと、村人を傷つけないことは、両方が依頼の条件だ。どちらか一方ではない」
「そんなこと、依頼書には書いてませんでした」
「書いていなくても、分かることだ」
「分かりません。私は魔物を倒す依頼を受けた。そして倒した。それだけです」
ヴァルドはその言葉を聞いた。分からない、と言った。本当に分からないのだ。村人を傷つけることが、どれほどの罪なのか、その感覚が、この若い魔法使いの中には欠如していた。悪意がないから、余計に始末が悪い。
「この村を出ろ。報告書のサインはしない」
「え、でも、依頼を達成したのに・・・」
「達成していない。出ろ、と言っている」
「納得できません!ギルドに抗議します!」
「好きにしろ。今すぐ、ここから出ろ」
若い魔法使いは、不満そうな顔のまま、村を出て行った。ヴァルドは、その無責任に軽やかな後ろ姿を、冷たい目で追っていた。
村の対処が終わり、ヴァルドは街道に戻った。夜になっていた。星が、冷たく瞬いている。歩きながら、今日見た光景が頭の中で何度も繰り返された。老人の、砕け散った腕。怯えた村人の目。子供が余波で怪我をしたという話。黒焦げになった建物。そして、本人が全く、それに気づいていないという事実。
魔物を倒すために来た者が、村人を傷つけた。その者に悪意はない。ただ、未熟だった。技術が足りなかった。何が問題なのか、どうあるべきなのかを考える訓練が、決定的に足りていなかった。
未熟な者が現場に来る。今日のようになって、弱者が傷つく。それが、繰り返される。
アラドが言っていた三つのプランが脳裏に蘇った。育成を広める。装置を作る。発生源に封印をかける。どれも、時間がかかる。その間にも、今日のようなことは起こり続ける。弱者は、傷つき続ける。
ヴァルドは歩きながら、昨夜の考えが、より鮮明に、より強く、蘇ってくるのを感じた。
『未熟な魔法使いは皆殺しにした方がいい』
アラドは、効率が悪いという理由で、その考えを却下した。でも、今日見たことを考えれば。育成が間に合わない間に、弱者が傷つき続けるという「非効率」と、未熟な者を排除することの「非効率」と、どちらが大きい非効率なのだろうか。計算が合わない。
貴方は今、二つの考えを持っている。弱者を守るために戦う、という考えと、弱者を守るために排除することも辞さない、という考え。どちらを選んでも、あなたの自由だ
どちらを選んでも、あなたの自由だ。
ヴァルドは足を止めた。夜道の真ん中で、冷たい星空の下で、一人で立ち止まった。今日の老人の顔が浮かんだ。今日の子供の話が浮かんだ。今日の村長の顔が、絶望に歪んだ顔が、瞼の裏に焼き付いていた。
弱者を守るために戦う。それは、これまでずっと選んできた道だ。だが、未熟な者が弱者を傷つけ続ける現実がある。それを止めるためには・・・
「・・・決めた」
誰にも聞こえない声で、そう言った。空に向けて言ったわけでもなく、自分に言い聞かせたわけでもなかった。ただ、決まった。
未熟な魔法使いを、排除する。弱者を守るための、排除だ。魔力の歪みを作り、弱者を傷つけ、それでもそれに気づかない者を、この世界に残しておく理由がない。
頭の中が、冷えていた。怒りではなかった。悲しみでもなかった。ただ、決まった、という、絶対的な感覚だけがあった。
【レイン・フォン・アルヴィス】
アレイグランド王国。
その首都から少し離れた場所、経済都市アルヴィスにある一つの城の一室にレインは居た。レインはまだ、幼いルーベルトを寝かしつけていた。
「・・・やっと寝た。子育てって、暗殺業以上に大変だな・・・」
レインの金の使い道はすべて、ルーベルトの養育費として使っている。
アレイグランド王国は国王、または自身の住む土地の領主が、子供を産んだ際、養育費として、国民から月に最低、1GL(一万円)を収めるという、クソみたいな法律が存在する。おまけに、その法律の改正は国王にしか権限はない。
そのため、レインを含むアルヴィス家は国民の負担をできるだけ減らすために、国民からもらった養育費はすべて町の修繕や医療、教育、街道や騎士団など、様々な公共サービスにこっそり消費していった。
その結果、アルヴィス家の財産が少しずつ無くなっていった。そこで、レインが選んだのは闇ギルドの暗殺依頼を受けること。理由は単純で、暗殺ギルドで身元を隠して、お金を稼ぐことがレインにとって一番効率が良かったからだ。
「・・・どんだけ私は殺せばいいのだろうか。それよりも・・・」
レインは机に置いてある紙を持って、ベランダに出た。そこにあるベンチに腰を下ろして、窓から差し込む朝の光の中で、紙を読み始めた。
それは、ギルドから盗んだ緊急報告書だった。
緊急報告書
発行元:フィンペル王国 冒険者ギルド東部支部
受信先:各国ギルド・騎士団・関係機関
分類:重大事案/要注意人物情報共有
記録日:■■年■■月■■日
件名
バルガファルイス養成学校在籍生徒による複数魔法使い大量殺害事件について
1.概要
フィンペル王国東部において、同国バルガファルイス養成学校に在籍する生徒一名が、駆け出しまたは未熟と判断された魔法使いを対象に、計画的とみられる連続殺害を行ったことが確認された。
被害者数は計37名(登録冒険者31名、未登録見習い6名)
2.被害状況
(1)死因:剣による刺傷または斬傷による失血死。
(2)遺体状況:急所を一撃で攻撃。抵抗痕はほぼなし。一部に魔法防御突破の痕
跡あり。
(3)発見場所:東部の村・街道沿い。人通りの少ない場所が多い。
(4)期間:四日間。
3.実行者情報
氏名:ヴァルド・ハルウス
所属:バルガファルイス養成学校
年齢:十代後半
性別:男
特徴:長身、黒髪、長剣所持
推定実力:Sランク相当
4.目撃証言
「未熟だと言われた直後に倒された」(16歳男性、村人)
「魔法より剣が速かった」(22歳女性、村人)
「感情なく静かに剣を抜いた」(36歳男性、村人)
5.特記事項
対象は経験が浅い魔法使いのみ。選別行動あり。
「未熟な魔法使いは弱者を傷つける」との発言確認。
6.対応状況
指名手配済み。Sランク相当のため共同対応必要。
養成学校は活動制限予定。
レインは報告書を読み終えた。
ヴァルド・ハルウス。あの砦で戦った者たちの中の一人だった気がする。でも・・・まさか、四日間の内に37人殺害か。
感情的に動いたのではなく、冷えた状態で動いたのか。その方が、厄介だったな。感情的な者は、感情が尽きれば止まるが、冷えた者は、論理が変わるまで止まらないからな。
「弱者を守るために始めたのか?」
報告書に書かれた内容だけでは、分からない。
ただ、一つだけ確かなことがあった。
あの砦で見たヴァルドと、この報告書のヴァルドは、何かが変わっている。あの時、仲間を守ろうとして突っ込んできた男が、今は別の方向に動いている。
報告書を、裏返した。裏は被害者名簿だった。
レインは被害者名簿を一通り見た。どうやら、身内の人間は殺されていないらしい。
「関係ないか」
自分には関係のない話だ。依頼があれば動く。なければ動かない。それがレインの暗殺者としての進め方だ。
【レティシア・ヴァイアクロイツ】
報告書が届いたのは、朝の授業が始まる前だった。
ラズロイが教員室に全員を呼び集めた。ヴァルド以外全員が揃ったのを確認すると、ラズロイは机の上に紙を置いた。
「読め」
一枚ずつ回した。その一枚をレティシアが受け取り、読み始めた。
「・・・」
声が出なかった。
ヴァルド・ハルウスという名前が、実行者の欄に書いてあった。四日間で37名。全員が未熟な魔法使い。急所を一撃。感情的な様子はなかった。
理解しているのに、実感が来なかった。
朝の訓練を一緒にやっていた。食堂でカレーを食べた。廃豪邸の帰り道を一緒に歩いた。砦の廊下で並んで話した。
その男が、十七人を殺した。
「・・・本当に、ヴァルド君が?」
セレナの声が、かすれていた。
「報告書の内容と、複数の目撃証言が一致している。別人とは考えにくい」
ラズロイが静かに答えた。
「なんで・・・?」
「動機の詳細はまだ調査中だ。ただ、関係者への聞き取りで、未熟な魔法使いは弱者を傷つける存在だという趣旨の発言をしていたことが確認されている」
「それが理由で・・・」
セレナはそれ以上言えなかった。
エルンストは報告書を一度読んで、机に置いた。その顔に感情はなかったが、普段のエルンストより、空白が多かった。何かを考えているというより、何かを整理できていない顔だった。
クロカワが報告書を持ったまま、動かなかった。縫い合わせた腕をさりげなく押さえていた。意識的かどうかは分からなかった。
ティオは報告書を読み終えて、一言だけ言った。
「信じたくないが、信じないわけにもいかない」
ルグは報告書を静かに読んで、返した。その後、何も言わなかった。窓の外を見ていた。
レティシアは報告書を持ったまま、下を向いていた。
・・・何を考えていた。
あの廊下での会話を思い出した。
魔力の制御が崩れていた。エルンストが指摘した。訓練を始めると言っていた。ラズロイの育成の話に引っかかりを感じていた。それは自分も同じだった。
二つの考えを持っていると、誰かが言っていた。いや、レティシアが言ったのではなく、ヴァルドが自分で言っていた。
あの時、レティシアはその考えの片方がどこまで行くかを、見えていなかった。
・・・見えていれば、何かできたか。
いや、できなかったかもしれない。でも、何か言えたかもしれない。訓練の時に、もう少し話せたかもしれない。廊下での会話の後、もう少し踏み込めたかもしれない。
・・・でも、踏み込まなかった。
遠くなった、とセレナが言った。その通りだった。覚醒勇者になってから、一人でいることが多くなって、ヴァルドとの距離も遠くなった。朝の訓練は続けていたが、終わった後に話すことが減っていた。
距離が遠くなっていた。そこに何かがあった可能性があるのだろう。
「今後の対応についてだ」
ラズロイが続けた。
「騎士団が指名手配を出した。同等以上の実力を持つ者の協力が必要とされている。お前たちにも、この件への対応について考えてもらうことになる」
「対応、というのは」
「ヴァルドを止めることだ」
止める
その言葉が、頭の中で転がった。
ヴァルドを止める。四日間で十七人を殺した、Sランク相当のヴァルドを。
「先生は・・・」
レティシアが口を開いた。
「なんだ」
「ヴァルドが此処まで来るのを、止めることはできなかったんですか?」
教員室が静かになった。ラズロイは少しの間、レティシアを見た。
「できなかった」
「何故ですか?」
「見えていなかった。此処まで早く動くとは、判断できなかった」
「・・・そうですか」
レティシアは報告書を机に置いた。
自分に言い聞かせるように、もう一度繰り返した。
見えていなかった。
それは自分も同じだ。ラズロイだけの話ではない。全員、見えていなかった。
でも、見えていなかったで終わらせていいのかどうかが、分からなかった。
その日の夕方、追加の報告が届いた。
ラズロイが再び全員を呼んだ。今度は報告書ではなく、口頭だった。
「続報が入った。ヴァルドによる殺害対象に、彼の身内が含まれていることが確認された」
「身内、とは」
「ヴァルゼン帝国に、ヴァルドの幼少期から関わりのある人物がいた。師匠格にあたる者と、かつて共に行動していた見習いの魔法使いが、三名。そのうち二名が死亡しているのが確認された」
「・・・!」
師範格って・・・もしかして、私とヴァルドの剣を教えてくれた師匠の事じゃ・・・
「一名は重傷。現在治療中。師匠格の者は未熟ではなかったが、かばおうとして巻き込まれた」
今度はさっきより長い沈黙だった。
未熟な魔法使いを殺すというだけでも、衝撃は大きかった。でも、身内を殺した。かつて共に動いた者たちを。
それが意味することを、頭の中で考えようとしたが、考えられなかった。
「ヴァルドは・・・今どこにいるんですか」
セレナが震えた声で聞いた。
「現時点では不明だ。騎士団が追跡しているが、痕跡を追えていない」
「見つかったら、どうなるんですか?」
「状況次第だ。ただし、今のヴァルドの状態次第では、対話での解決が難しい可能性がある」
セレナは何も言わないで、うつむいていた。
クロカワが壁に背を預けて、天井を見上げた。その目が、赤くはなかったが、乾いていた。
ティオが椅子に座ったまま、手を組んで、床を見ていた。
エルンストは窓の外を見ていた。
ルグは机の上の報告書を見たまま、動かなかった。
レティシアは立ったまま、何も言わなかった。
・・・身内を殺した。
弱者を守るために始めた、と言っていたが、まさかその考えが、身内に向くとは思わなかった。
弱者を傷つける存在を排除する。未熟な魔法使いを排除する。かつて関わりのあった者でも、未熟であれば排除する。
自分が覚醒勇者として覚醒した。でも、覚醒勇者の能力でヴァルドを止める方法は、いくらでも思いつく。でも、私自身が止める方法は一切思いつかない。まるで答えだけがすっぽりと抜け落ちたように。
・・・考えることが嫌になった。仲間のことを、対処する方法として考えている自分が嫌だった。
でも、他にどう考えればいいのかも分からなかった。
「今日は解散する。また続報が入り次第、伝える」
ラズロイが言い、全員が教員室を出た。廊下を歩きながら、レティシアは誰とも話さなかった。
世界律が何か言いかけた。
「今は黙ってて」
世界律は気にせず、言い続けた。




