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リュートの楽しい楽しい数学教室(1)

先にリュートが作った問題(答え付き)此処に置いとく

*画像は生成AIです。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



テストの内容が決まったのは、夜の十時を過ぎた頃だった。


アリアへの数学の説明を終えて、其の流れで問題の構成を頭の中で整理した。基礎から上級まで十問。どこで詰まるかが分かれば、其処から教える順番が決められる。


あとは印刷。


リュートは翌朝、ルグを探した。

教員棟の廊下でルグを見つけた。右腕の包帯はまだそのままだった。


「ルグ先生、一つ頼みがあります」


「何ですか?あと、呼び捨てでも構いませんよ」


「呼び捨てにこだわり過ぎません?・・・実は、この問題を印刷してほしいんです。この施設に印刷できる魔道具がありますか?」


「あります。管理室に。何枚必要ですか?」


「十一枚。一枚は答え合わせ用で」


ルグがリュートの手元の紙を受け取った。問題に目を通した。

一問目から順に視線が動いていた。最初の数問は速い。四問目の辺りで少し止まった。五問目、六問目、七問目と進んでいくにつれて、目の動きが遅くなった。


「……これ、全問解けることが前提ですか」


「いや、最初の3問だけ、解ける前提で作りました。」


「後半の問題、難易度がおかしい気がしますが」


「でも、これで皆のレベルが分かるかと、」


ルグが少しの間、問題を見続けた。


「・・・少し待ってください」


「はい」


ルグが管理室に入った。しばらくして、紙と筆を持って出てきた。


「解いてみてもいいですか?」


「……構いませんが、何のためにですか」


「問題の難易度を実際に確認したい。印刷する前に、どの程度の問題なのかを把握しておく必要があります。あと、シンプルにワクワクしたからです。」


「分かりました」


ルグは廊下の端に置いてあった椅子に座った。問題に向かい始めた。


リュートは其の横で待った。

一問目から四問目までは、比較的速く進んでいた。筆が止まることなく動いていた。五問目で少し考える時間が生じた。六問目の確率の問題で、ルグが一度紙から目を離して、天井を見た。それから筆を走らせた。


七問目の座標の問題で、筆の速度が落ちた。丁寧に式を展開していた。


八問目の数列で少し止まった。


九問目の積分で、紙の端に計算式を複数書いてから答えを書いた。


十問目の確率と漸化式で、一番長く止まった。紙の余白が計算式で埋まっていった。


それから、筆が止まった。


「……終わりました」


時計を確認した。一時間と少しが経っていた。ルグが紙をリュートに返した。見ると、全問に答えが書いてあった。


リュートは答えを確認した。


丸付けを行った結果、全問正解。


「満点・・・すげぇ」


「結果的にそうなりました。ただ、九問目と十問目は時間がかかりました」


「どの辺りが難しかったですか?」


「十問目の漸化式の設定が、一番時間を要しました。漸化式そのものは分かりますが、確率との組み合わせで式を立てる部分に少し手間取りました」


「なるほど」


「改めて言いますが、この難易度は相当です。これが一時間で解けることを前提にしているなら、対象者はかなり限られます」


「そのために使うわけじゃないです。どこで詰まるかを見るためのものです」


「そうですか。・・・本題を忘れてました。では、印刷します」


ルグが管理室に戻った。しばらくして、十一枚の紙を持って出てきた。


「有り難うございます」


「その問題、どこで作りましたか?」


「前の世界の記憶です」


ルグが少しだけ間を置いた。


「……そうですか」


それ以上は聞かなかった。







夜になった。


アランが声をかけてくれたらしく、指定した時間の少し前から教室に人が集まり始めた。

リュートは教室の前に立って、入ってくる顔を確認した。


アランが先に来た。教科書と筆記用具を持っていた。其の後ろにケルビが続いた。クラウスが少し遅れて入ってきた。今日の茶会は早めに終わったらしく、表情に疲れはあまりなかった。


廊下からルーベルトの声がした。アベルと一緒に来ていた。其の後ろに、見慣れない顔が二人いた。


「フィンとリクスです。一緒に来てもいいですかと言ったので、連れてきました」


「構わないよ。人が増えるのはうれしい限りだよ~」


フィンは背が高く、落ち着いた表情をしていた。リクスは小柄で、少し緊張しているようだった。二人ともルーベルトとアベルの友人らしく、互いに慣れた様子で話していた。


エルナが入ってきた。其の後ろにリアとアリスが続いた。

リアはエルナやアリアの友人だとアランから聞いていた。明るい印象で、教室に入るなり周囲を見渡して「結構人いるね」と言った。アリスはリアより少し静かだった。二人ともエルナと同じクラスらしい。


アリアが最後に入ってきた。


「全員揃いましたね」


「そうだな」


リュートは教室全体を確認した。

アリア、ケルビ、クラウス、アラン、ルーベルト、アベル、フィン、リクス、エルナ、リア、アリス。


数えると十一人だった。


「十一人か・・・多くね」


リュートは全員に向けた。


「といっても、俺は君らと同じこの学校の生徒だ。何なら、一部の人は俺より身分が上の者もいる。だから、今からめっっっっっっちゃ偉そうなこと言うけど構わんか?」


皆の反応は、深いうなずきや相槌だった。


「んじゃ、偉そうに言うぞ。単刀直入に言う。皆の理数系のレベルを把握したい。其のためにテストをする。ただ、点数を評価するわけじゃない。どこで詰まっているかを確認するためのものだ」


アランが手を上げた。


「難しいんか?」


「問題による」


「それは怖い答えやな」


「一時間で出来るところまで解いてくれ。解けなくなったところで止めていい。無理に全部やる必要はない」


クラウスが静かに聞いた。


「結果はどう使うのですか?」


「其処から、何を教えるかを決める。苦手な場所が分かれば、其処から順番に整理できるだろ?」


「・・・なるほど」


リュートは問題用紙を配り、全員が受け取った。


「あ、ルーベルト。君はセラフィナと共に俺の補修受けてただろ?」


「え。うん。」


「だったら、大問6までとけるよね?」


「え、いや分かん・・・」


「解(・)け(・)る(・)よ(・)ね(・)?」


「・・・もし、解けなかったら?」


「さぁ?どうなるんだろうね?ハハハw」


「あの・・・その笑顔怖いから止めてくれる?」


「ごめん、リア。問題配ったら、開けていいよ」


教室が静かになった。


問題用紙を見た瞬間の反応が、一人ずつ微妙に違った。


アランが最初の数問を見て少し安堵したような顔をした。


エルナが二問目あたりから目を細めた。


ルーベルトは全体をざっと見渡してから、一問目に戻った。


クラウスは表情を変えずに読んでいた。


アリアは問題を見て、少し眉を動かした。昨夜教えた内容と繋がる部分があると気づいたのかもしれない。


「それじゃあ、始めてくれ」


筆が動き始めた。

リュートは教室の端に立って、全体を見渡した。


最初の三問は全員が比較的スムーズに進んでいた。


つるかめ算、出会い算、食塩水の濃度。基礎的な問題だ。食塩水の計算に関しては、それ自体は習っていないが似たようなものを魔法学でやったから、問題ないとは思うけど・・・手が止まっている者はいなさそうだ。


四問目に入った頃から、様子が変わり始めた。


アランが筆を止めた。問題を読み直している。また筆を動かして、途中で止まった。紙の端に何かを書いて、消して、また書いた。


ケルビも四問目で速度が落ちた。慎重に式を立てているようだった。丁寧な手の動きだったが、時間がかかっていた。


クラウスは四問目を解き終えて、五問目に進んでいた。式を展開する手が落ち着いていた。


エルナは五問目を解き終えて、六問目に入っていた。確率の問題を見て、少し考えてから筆を動かし始めた。


ルーベルトは七問目まで進んでいた。速い。座標の問題を解きながら、時々紙の余白に補助の計算を書いていた。


フィンとリクスは四問目で止まっていた。リクスは問題を読み返していた。フィンは式を一度書いてから、途中で消した。


アベルは四問目の途中まで計算していたが、符号の処理で迷っている様子だった。


リアが四問目を見ながら、隣のアリスに小声で何かを言いかけた。


「おーい其処の君~。他の人の答えは見ないで、自分の分かるところまでやってくれ」


「……はい」


アリアは五問目を解き終えて、六問目に入った。確率の問題を見て、少し止まった。昨夜は此処まで教えていなかったからな。自力で考えている。


三十分が経過した。


教室の中の様子が、はっきりと分かれてきた。


アランは四問目で止まっていた。式は立てているが、連立方程式の解き方で詰まっているようだった。


ケルビは四問目を何とか解き終えて、五問目に進んでいた。ただ、手の速度が明らかに落ちていた。


クラウスは六問目に入っていた。確率の問題を見て、全事象を書き出し始めていた。丁寧だが、時間がかかりそうだった。


エルナは六問目を解き終えて、七問目の座標の問題に入っていた。マジかよ、其処の所、まだこの学校では触れてすらないぞ?


ルーベルトは八問目の数列に進んでいた。等差数列の和の公式を使って式を立てていた。さすが、俺スパルタ補修を耐えた奴だ。次元が違う。


アリアは六問目で止まっていた。確率の場合の数を書き出していたが、途中で迷っているようだった。


一時間が経過した。


「止め」


筆が止まった。


教室がざわめいた。


リュートは全員の答案を回収した。其れを確認していく。


クラウスは六問目まで到達していた。六問目の確率は途中まで合っていたが、最後の計算で一箇所ずれていた。


エルナは六問目まで全問正解だった。七問目の座標の問題の途中まで解いていたが、面積の計算の方法で手が止まっていた。


ルーベルトは八問目まで到達していた。一問目から七問目までは全問正解。八問目の数列の和の式は正しく立てられていて、二次方程式に持ち込んでから因数分解する途中で時間切れになって文字が止まっていた。


アリアは五問目まで全問正解。六問目の確率は途中まで正しく、場合の数の数え方で一部抜けがあった。


ケルビは四問目まで全問正解。五問目の二次方程式の式は正しく立てられていたが、解の公式を使う段階で手が止まっていた。


アランは四問目の途中まで。連立方程式の式は正しく立てられていたが、解く過程で符号の処理を誤っていた。昨夜と同じ詰まり方だった。


アベルは四問目の途中まで。符号の処理でアランと同じ場所で詰まっていた。


フィンは四問目の式を立てる手前で止まっていた。文字式の立て方が分かっていない。


リクスも同じ場所だった。


リアは四問目の途中まで。連立方程式を見て、式は立てたが解く手順が分からなかったようだった。


アリスは三問目まで全問正解。四問目の文字式を見た段階で止まっていた。


リュートは答案を纏めて、頭の中で整理した。


大まかに三つのグループに分かれた。


一つ目は、四問目の連立方程式の手前、または途中で止まっているグループ。アラン、アベル、フィン、リクス、リア、アリス。文字式の扱い方と連立方程式の解き方が共通の課題だ。


二つ目は、六問目の確率前後で止まっているグループ。アリア、ケルビ、クラウス。二次方程式と確率が課題の中心だった。ただし、ケルビは二次方程式が先に詰まっているため、クラウスとアリアとは少し課題の位置が違うな。


三つ目は、六問目以降まで到達しているグループ。エルナとルーベルト。エルナは座標の面積計算、ルーベルトは数列の二次方程式への変換が課題・・・といっても、其処の部分教えるのは結構先になりそうだな。


「結果を話すと・・・」


全員がこちらを向いた。


「全員、三問目までは問題ないが、四問目から差が出た。詰まっている場所によって、教える順番が変わる」


アランが手を上げた。


「俺、やばかったか?」


「四問目の連立方程式が課題。でも、式は正しく立てられている。解く手順の問題だ」


「じゃあ其処を直せばいいんか」


「そうだ。符号の処理を覚えれば、五問目以降に進める」


「分かった。頼んます」


クラウスが静かに聞いた。


「僕は確率が課題ということですか」


「六問目は途中まで正しかった。場合の数の数え方に一箇所抜けがあった。系統的に書き出す方法を整理すれば解けるようになる」


「なるほど。ありがとうございます」


ルーベルトが少し考えるような顔をした。


「八問目の奴、何?」


「其処は・・・すまん、まだ教えてない所だった。」


「なら、後で教えて」


リアが少し申し訳なさそうに言った。


「ごめんなさい・・・私、四問目で完全に止まってしまいました」


「大丈夫さ。文字式を式で立てる部分は出来ていた。連立方程式自体の解き方を知らなかっただけだ。其処を教えれば進めれる」


「よかった。方法を知らなかっただけなのね」


「そうだ。才能の問題じゃない・・・普通の生徒なら、知ってた方がおかしい。」


リアが少しほっとした顔をした。


エルナが言った。


「座標の面積計算、三角形の分割の仕方が分からなかった・・・」


「図形として捉えれば分かりやすくなる。補助線の引き方を覚えれば解ける」


「分かりました」


てか、エルナって俺の補修受けてないよな?失礼極まりないが、何で此処の所出来たんだ?数学関係の家系なのか?どっっかで、聞いてみようかな?


アリスが小さく聞いた。


「私は三問目までしか出来なかったのですが、解説があるなら四問目から始めてもらえますか?」


「そのつもり。文字式の立て方から始める」


「ありがとうございます」


全員が何かしら課題を把握した顔をしていた。


リュートは教室を見渡した。

十一人。詰まっている場所がそれぞれ違う。グループ分けして、課題の近い者同士で教える方が効率がいい。


「一旦、休憩。各々好きなように過ごしな」


そう言うと、皆問題の振り返りをし始めた。

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