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死んだ魚

遂に恐れていた、4月がやってきた。社会人生活が始まってしまう。


夢の北海道を離れる日。もう2度と戻れないかもしれないこの生活。不安。全ての家財道具を持って愛知県へ嫌々向かった。


新生活のアパートは、2階。重い荷物を部屋に運び込む。大学と大学院の教科書。2階に上げる前にノートも含め全て捨てることにした。


”もう興味がない、エンジニアはしない”


未来を決めた。


初出社日。ドアを開けた瞬間に、よどんだ空気。辞めると決めた。みな死んだ魚のように目が死んでいる。少なくとも僕にはそう見えた。こんなところにいたら自分が死んでしまう。最低限のコミュニケーション以外はなるべく人と目を合わせず、話もせず、周りからの影響を受けないように心掛けた。自分を守るために。この会社に染まったら自分の人生を見失う。


僕は海外駐在員として入社した。イタリアに行くのが目的だった。しかし、会社はまず中国へ行けという。しかも、単身。きっぱり断った。イタリアに行けるのも早くて3年という。海外駐在員としてイタリアに行き現地の会社に入る道は、ここで消えた。とても3年は待てない。


かな子には


”最近、笑わなくなったよね”


空気はよどみ、自然が少ない工業地帯。僅かな緑を求めて公園で散歩してた時に言われた。


お尻に火が付いた。早く自分で生きる術を見つけなければならない。何ができるのか。いや何がしたいのか。自問自答を続けた。結局、好きなことをリストアップし、それを組み合わせて何か仕事にならないかと考えた。それでも事業を興すのは大変だ。その勇気はまだなかった。


ただ、もう限界だ。次の会社を探す。アウトドア系会社2社を受けるものいずれも落ちた。北海度、新潟、長野、山が近ければどこでもいい。縁あって新潟県小千谷市の会社に決まった。初出社から4か月で退職。


一刻も早く山の近く、田舎に戻ろう。逃げるように都会を後にした。

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