怖さを知る
大学院1年。
イギリス一周の次はどうしよう?昨夏、ポーランド、スイス、オランダに友達ができた。彼らに会いに行こう。
ポーランドに降り立ち友人の住む町へ。彼らはワルシャワの北に住んでいた。そこで数日間、風車や郷土料理、城址などポーランドを案内してもらいいよいよ旅スタート。と初日に、自転車旅なのに、大事な自転車が盗難にあう。しかも自転車屋の前で・・・
幸い、宿にチェックイン後だったのでパスポートなど貴重品は無事。初めて海外で警察に、英語の通訳者を挟んで盗難証明書を作ってもらった。日本一周、そしてイギリス一周した思い出の自転車はポーランドへ旅立った。僕は、盗難場所前の自転車屋で新しい自転車を購入。旅を再スタート。山々を越えチェコ共和国、首都ウィーンへ。ポーランドもチェコもこの数年後にEUへ加盟したが、市街地を新開発、きれいに整えていた。
チェコから山々を越え、オーストリア。きれいな山並み沿い、わき水が豊富。日本からインスブルックに渡った友人に会い、将来自分が海外に住んだらというイメージを作った。西へ移動し、カナダジャスパーで出会ったスイス人の友人に会う。彼女は後に日本にもやってきた。
この夏はヨーロッパは1540年以来の記録的な酷暑(ヨーロッパ熱波)。熱射病など暑さで7万人以上が亡くなった。その真っただ中、帰国日が迫っていて、3日で約750㎞、1日平均250㎞のペースでオランダまで行かなければいけない。スイスからはライン川沿いを1日中たち漕ぎで急いでいた。
僕はこの記録的な熱波に気づいておらず、熱さを感じていたものの、何の対策もとらず、とにかく急いでいた。1日目。なんとか乗り越え、城址の豪華なユースホステル。2日目、ドイツが近づきビールとソーセージを堪能。そして運命の3日目。酷暑の中、無理をしたつけが出た。熱射病で吐き気と発熱でオランダ友人宅で寝込んでしまう。
このオランダ人家族には昨夏イギリススコットランドで出会った。3日ほど宿が一緒になり、意気投合。多くの話をした。お母さんには、
”あなたは、イギリス一周を自転車でできるのだから、人生、なんでもできるわよ”
と言葉をもらった。心を許せる第2の家族に会えて気が緩んだのかもしれない。丸一日横になり、なんとか体調回復。数日間オランダを案内してもらった。僕と同年代の男の子と女の子が2人。女の子は僕との出会いがきっかけになったのか日本文学を学び、日本にもやってきた。
この家族との出会いは僕に大きな影響を与えてくれた。人生を思い通りに生きる決意を促してくれたように思う。
結局、時間が足りなくなり、オランダ人家族はフランスとの国境まで僕を送ってくれた。2日ほどかけてパリ凱旋門へゴール。パリ・シャルル・ド・ゴール空港から帰国した。
この旅はこれまでと違っていた。昨夏の経験は、僕を精神的に強くしたが、命の危機を感じる強烈な経験は、恐怖も生み出した。そう、楽しいというより、怖かった。今日は無事に宿まで辿り着けるだろうか。毎日その連続。
飛行機に乗れて、心底ほっとした。




