第98話 崩れ始める計画
別空間。
水色だけが広がる世界。
アベルは頭を抱えていた。
ポールとネロは黙っている。
二人とも。
アベルがここまで取り乱す姿を初めて見ていた。
重い沈黙。
やがてポールが口を開く。
「なぁ、アベル……」
「そんなに気にすることなのか?」
アベルが顔を上げる。
そして。
怒鳴った。
「気にするさ!!」
ポールが固まる。
アベルは立ち上がる。
「俺達の計画は何だった!?」
「ランキング下位から順に殺し!!」
「第7位と第8位の国へ追い込み!!」
「最後にまとめて爆撃で殺す!!」
拳を握る。
「その際第7位と第8位が対処をする」
「その隙に別空間で奴らの背後を取り」
「クリアの透明化で二人を殺す!!」
「そうすれば下位能力者を一掃できる!!」
「最上位も消せる!!」
「グリッチは最強の組織になれたんだ!!」
静寂。
グリッチの作戦だった。
だが、能力がバレた以上。
超爆撃も別空間も対策される。
ランキング下位を集めることに意味は無くなった。
アベルらしくない怒りだった。
ネロがため息を吐く。
「とにかく」
「今は身を隠すしかない」
アベルも。
ポールも。
反論できなかった。
その話を聞いていたクリアが口を開く。
「話は分かったけどよぉ」
寝転びながら聞く。
「モルドどうすんだ?」
電磁砲で吹き飛ばされた男。
第9位。
モルド。
アベルが冷たく言う。
「あいつが無理に動こうとした」
「だから失敗した」
クリアが眉を上げる。
アベルは続けた。
「俺達の情報も割れた」
「計画も崩れた」
そして。
「もういらん」
静かな声だった。
ネロも。
ポールも。
何も言わなかった。
グリッチは。
四人となった。
◇
遥か辺境。
人の気配もない荒野。
そこに。
モルドはいた。
「ちっ……」
身体を起こす。
電磁砲の衝撃は想像以上だった。
「助けに来ねぇじゃねぇか」
舌打ちする。
そのとき。
モルドは異変に気づく。
遠くで。
地面。
木々。
岩。
全てが崩れている。
まるで存在そのものが壊れていくように。
「なんだ?」
目を細める。
そこにいた。
一人の男。
左手で頭を掴み。
右手を前へ向けて歩いてくる。
異様だった。
モルドが声をかける。
「おい」
「なんだお前?」
男は反応しない。
ぶつぶつ呟く。
独り言。
そして。
ゆっくり顔を上げた。
「俺は」
「第14位アルディオだ」
モルドの目が開く。
アルディオ。
能力ランキング第14位。
能力『核崩壊』
対象の核を破壊する能力。
強力。
だが。
射程が短い。
発動も遅い。
だから上位には届かなかった。
無論、モルドの能力『無傷』にも。
ダメージは与えられない。
少なくとも。
モルドの知るアルディオは。
そうだった。
しかし。
今は違う。
周囲数十メートル。
全てが崩れている。
明らかに異常。
モルドが眉をひそめる。
やばい。
本能が告げる。
ナイフを投げる。
ヒュッ!!
高速。
だが。
アルディオの数メートル手前。
ナイフが崩れた。
砂のように。
砕け散る。
「なに……!?」
モルドが驚く。
アルディオが言う。
「その程度の速度では」
「俺は倒せない」
そして。
一歩前へ出た。
地面が崩れる。
草木が崩れる。
世界が壊れていく。
アルディオが目を見開く。
「俺がランキングトップになる」
その瞬間。
アルディオが走り出した。
モルドの顔色が変わる。
速くはない。
だが。
射程が広い。
モルドは直感した。
今までのアルディオじゃない。
覚醒している。
「面白ぇじゃねぇか」
モルドが笑う。
ナイフを構える。
第9位。
能力『無傷』
ここで終わるつもりはない。




