第93話 最強の無能力者
レイ達は男の後を追っていた。
彼は何者なのか。
いや、それよりも。
クロエは助かるのか。
そのことばかりが気になっていた。
男は迷うことなく進む。
森を抜け。
山を越え。
そして。
視界が開けた。
「大きい……」
フォーサが思わず呟く。
その先にあったのは。
巨大な城だった。
レイ達が今まで見てきたどの城よりも大きい。
高い城壁。
無数の塔。
圧倒的な威圧感。
レイ達は思わず立ち止まり。
城を見上げた。
その時。
「ディオン様!」
兵士達が駆け寄ってくる。
「おかえりなさいませ!」
全員が頭を下げた。
レイが眉をひそめる。
ディオン?
すると。
ミントの顔色が変わった。
「ディオンって……まさか……」
ディオンが振り向く。
ミントが息を飲む。
「最強の無能力者?」
レイとマッドが驚く。
無能力者?
ディオンは頷いた。
「今はそんなことはいい」
クロエを見る。
「早くこいつを治療するぞ」
それ以上聞く暇はなかった。
レイ達は急いで城の中へ入った。
◇
治療室。
設備は異常なほど整っていた。
薬品。
器具。
回復用の設備。
どれも高水準だった。
クロエはすぐに治療へ入る。
フォーサとミントも同行した。
残ったのは。
レイ。
マッド。
そしてディオン。
しばらく沈黙が続く。
最初に口を開いたのはレイだった。
「あなた」
「何者?」
ディオンは肩をすくめる。
「俺はディオン」
「能力ランキング第11位だ」
レイとマッドが固まる。
第11位。
ライゼンやクロエより上位。
しかも。
無能力。
レイの脳裏にある言葉が蘇る。
第25位アクア。
能力至上主義の国で聞いた話。
「無能力なのに強すぎる人が現れたの」
「だから今は無能力者もランキングに入るのよ」
あの時は信じられなかった。
だが。
目の前にいた。
その張本人が。
レイが聞く。
「なんで助けてくれたの?」
ディオンは首を振った。
「それは、落ち着いたら話そう」
それ以上は語らなかった。
レイ達も追及しない。
今はクロエの方が心配だった。
◇
「くっそ!!」
筋肉隆々の男が全力で走っていた。
砂煙が舞う。
汗が流れる。
「なんでこんなことに!!」
頭上からミサイルが降り注ぐ。
さらに。
周囲の音が何も聞こえない。
自分の足音すら。
聞こえない。
異常だった。
「あぶねぇ!!」
とっさにしゃがむ。
ヒュッ。
頭上をナイフが通過した。
モルドの攻撃だ。
男は歯を食いしばる。
能力ランキング第74位。
マイト。
能力『腕力強化』
純粋なパワーを強化する能力。
彼は油断していた。
自分の番はまだ先だと。
だから亡命を後回しにしていた。
だが。
襲撃は思った以上に速かった。
「厳しいだろこれは!!」
マイトが叫ぶ。
だが。
声は聞こえない。
ネロが音を消しているからだ。
その時。
「とった!!」
クリアの声。
透明な剣が迫る。
マイトは反射的に振り向いた。
そして。
「うらぁ!!」
拳を振り抜く。
ドゴォン!!
クリアが吹き飛んだ。
透明なまま。
地面を転がる。
「ぐはっ」
声だけが聞こえた。
だが。
その隙を。
モルドは見逃さない。
「ぐわっ!!」
マイトの身体が止まる。
腹を見る。
ナイフ。
深く刺さっていた。
「いつの間に……」
膝をつく。
その時。
空を見る。
無数のミサイルが。
降ってきていた。
「ちくしょう……」
逃げられない。
能力ランキング第74位。
マイト。
死亡。
「おいおい」
モルドがクリアの飛ばされた場所を見る。
「大丈夫か?」
地面には。
恐らく倒れているクリア。
「……」
意識を失っているようだ。
モルドが笑う。
「殺すか?」
アベルが首を振った。
「だめだ」
「まだ使える」
モルドがつまらなそうな顔をする。
ネロも。
ポールも。
何も言わない。
グリッチに優しさはない。
価値があるか。
ないか。
それだけだった。
ブワァン
空間が開く。
五人は裂け目の中へ消えていく。
ランキング者狩りは。
終わらない。




