第九話 妹
レイはペーパーを見た。
そして静かに言う。
「反乱はやめたほうがいい」
その瞬間。
空気が凍った。
反乱軍全員がレイを睨む。
「なんだと?」
ペーパーの目が鋭くなる。
「どういう意味だ」
レイは落ち着いたまま答えた。
「私はランキング上位者に会ったことがある」
「ランキングは22位」
「だから分かる」
「51位もきっと怪物」
周囲がざわつく。
51位。
能力ランキング中位。
それがどれほどの存在なのか。
この場の誰も知らない。
だが。
レイだけは知っていた。
マッドが驚いた顔をする。
「レイさん」
「そのランキング者って……」
少し躊躇う。
そして聞いた。
「まさか」
「黒炎のブラッドですか?」
レイは頷く。
一瞬で空気が変わった。
ブラッド。
能力ランキング22位。
その名は隣の国にも知れ渡っていた。
周囲から動揺の声が上がる。
「22位だと……?」
「そんな奴を見たことがあるのか?」
「嘘だろ……」
だが。
ペーパーが大声を上げた。
「怯むな!!」
全員が黙る。
「無理だろうが何だろうがやるつもりだっただろ!!」
怒鳴る。
しかし。
その声の奥に。
不安が滲んでいた。
レイには分かった。
ペーパー自身も怖いのだ。
51位が。
73位が。
それでも止まれないだけだ。
レイはペーパーを見る。
「そんなに急ぐ必要があるの?」
ペーパーは黙った。
しばらく沈黙する。
そして。
小さく呟いた。
「俺の妹が捕まった」
周囲も静かになる。
「王に捕まったんだ」
ペーパーは拳を握り締める。
「元々」
「反乱の準備は進めていた」
「俺と妹を中心にな」
悔しそうに続ける。
「武器を運んでいる最中に見つかった」
「兵士に囲まれた」
「逃げられなかった」
レイは黙って聞く。
ペーパーは俯いた。
「妹は近々公開処刑される」
誰も何も言えなかった。
反乱軍の者たちも。
ただ下を向く。
レイは状況を整理する。
「つまり」
「反乱因子は全員死刑になるのね」
ペーパーが頷く。
「そうだ」
声が震える。
「妹が殺される」
そして顔を上げた。
「だから」
「その前にやる」
レイは目を閉じた。
母が燃える光景。
補償金の袋。
何も変わらない世界。
また同じことが起きる。
また弱い者が踏み潰される。
また能力ランキングが罪を守る。
また誰も裁かれない。
レイは拳を握った。
私は。
どうする。
マッドが不安そうに見つめる。
「レイさん……?」
レイは目を開いた。
そして言う。
「私達も乗るわ」
全員が固まる。
「おい」
ペーパーが驚く。
「さっきやめろって言ったじゃねぇか」
レイは頷いた。
「そうね」
「でも」
少しだけ笑う。
「聞いちゃった以上」
「やるわ」
その言葉に。
ペーパーは目を見開いた。
レイは続ける。
「能力ランキングを利用する奴らを許さない」
マッドが嬉しそうに笑った。
ペーパーも小さく笑う。
だが。
この場にいる誰一人として知らなかった。
能力ランキング51位。
その意味を。




