第86話 共闘
ネメシスとクロエが対峙していた。
クロエは満身創痍だった。
肩。
腕。
脇腹。
全身から血が流れている。
呼吸も荒い。
それでも。
まだ立っていた。
ネメシスは退屈そうにため息を吐く。
「しつこいなぁ」
「黙って殺されればいいのに」
クロエは睨み返す。
だが。
焦っていた。
何も通じない。
能力『重力操作』
影を動かそうとしても。
重力で押し潰される。
近付こうとしても。
広範囲攻撃で潰される。
影を移動して攻撃をかわすしかできない。
クロエは歯を食いしばった。
その時だった。
バシュッ!
一筋の光線。
ネメシスへ向かう。
だが。
ドゴン!
光線が途中で曲がる。
そして。
地面へ激突した。
土煙が舞う。
「なんだぁ?」
ネメシスが不快そうに振り返る。
クロエも視線を向ける。
そこにいた。
右手を構えるレイ。
その後ろには。
マッド。
ミント。
フォーサ。
ノーランクだった。
◇
レイは右手を下ろした。
いよいよ。
能力ランキング第6位との決戦。
覚悟は決まっていた。
だが。
「やっぱりだめか……」
落ちた光線を見る。
予想通りだった。
重力に潰された。
だが。
「そうですか?」
マッドが首を傾げる。
レイが振り向く。
「どういうこと?」
マッドは言った。
「レイさんの光線」
「すぐには落ちませんでしたよ?」
レイの目が見開く。
マッドは続ける。
「つまり」
「全く効かないわけじゃなさそうです!!」
レイは少し驚く。
マッド。
また成長している。
以前なら。
こんな分析はできなかった。
その時。
ネメシスがこちらを見る。
「君」
「どこかで会った?」
レイは睨む。
ネメシスは続けた。
「ディバイドの味方ってことでいいのかな?」
呑気な声だった。
だが。
今はそんなことを話している場合じゃない。
レイは叫ぶ。
「クロエ!!」
クロエがこちらを見る。
「助けに来たわ!!」
クロエの目が見開く。
驚き。
だが。
すぐに状況を理解した。
そして。
小さく笑う。
「助かったわ」
呼吸は苦しそうだった。
それでも言う。
「私の能力で援護する」
血を流しながらクロエが言う。
かなり限界に近い。
それでも戦うつもりだった。
すると。
ネメシスが頭をかいた。
「めんどくさいなぁ」
「もうさっさと殺すか」
そう言って。
レイたちを睨む。
空気が変わる。
まずい。
レイの本能が警鐘を鳴らした。
その瞬間。
「行きますよ!!」
マッドが前へ出る。
両手を地面へついた。
能力発動。
ネメシスの足元の地面が泥に変わる。
「ん?」
ネメシスが少し驚く。
そして。
無数の泥の手が現れた。
一斉にネメシスの首を掴みに行く。
だが。
ドゴオオン!!
衝撃。
泥の手が全て砕け散る。
跡形もなく。
ネメシスが靴の汚れを払う。
「泥なんて」
嫌そうな顔。
「汚いことするなぁ」
その時。
レイ達の影が広がる。
「今よ」
クロエが呟く。
レイたちの体が沈む。
影の中へ。
ネメシスの眉間にしわが寄る。
「何?」
次の瞬間。
クロエの背後の影から。
レイ。
マッド。
ミント。
フォーサ。
全員が飛び出した。
影による移動。
クロエが小さく笑った。
「今ので私の能力」
「分かったわね」
レイたちが頷く。
その時だった。
フォーサが前へ出る。
両手を伸ばした。
緑の光が溢れる。
「『強制覚醒』」
光が全員を包み込む。
レイ。
マッド。
ミント。
クロエ。
能力が引き上げられる。
クロエが驚いた。
「随分強くなったわね」
「あなた」
フォーサを見る。
フォーサは少し照れた。
「えへへ……」
だが。
すぐに真面目な顔へ戻る。
クロエも前を見る。
ネメシスは変わらない。
余裕の表情。
まるで負ける気がしていない。
当然だった。
相手は。
能力ランキング第6位。
ネメシス。
クロエが言う。
「行くわよ」
レイが頷く。
マッドも拳を握る。
ミントとフォーサが後方へ下がる。
そして。
ノーランクとクロエは。
能力ランキング第6位へ挑む。




