第85話 迫る第6位
たくさんの鳥が空を飛んでいた。
青い空。
白い雲。
その中の。
一羽の鳥。
能力ランキング第78位。
ヴァイン。
能力『鳥人化』
鳥の姿になり。
空を飛んでいた。
だが。
その額には汗が滲んでいる。
自分たちは指名手配された。
世界中が敵になった。
ランキング者も。
一般人も。
賞金目当ての者も。
全員が敵。
だが。
鳥は違う。
鳥たちは味方だ。
しばらく鳥の姿で身を隠す。
そう思っていた。
その時だった。
「ねぇ」
ヴァインの目が見開く。
目の前の鳥が喋った。
「君は人だよね?」
「なっ……」
ヴァインは羽ばたきを乱す。
すると。
隣の鳥も口を開いた。
「人がなんで鳥の真似をしているの?」
さらに。
周囲の鳥が一斉に喋り出す。
「君は鳥じゃない」
「君は鳥じゃない」
「君は鳥じゃない」
「君は鳥じゃない」
「君は鳥じゃない」
ヴァインの呼吸が乱れる。
「なんだ……」
「なんなんだこれは……!」
急いで地面へ降りる。
そして。
能力を解除した。
人の姿へ戻る。
ヴァインは頭を抱えた。
「なんなんだよ……」
鳥が喋るはずがない。
分かっている。
分かっているのに。
耳から離れない。
その時だった。
「大丈夫ー?」
聞き慣れた声。
ヴァインが顔を上げる。
そこには。
アストラが立っていた。
派手な化粧。
長いツインテール。
いつもの笑顔。
助かった。
ヴァインは思わず近付く。
「アストラ……」
だが。
「えい☆」
剣が胸に刺さった。
「え……?」
ヴァインが目を見開く。
力が抜ける。
地面へ倒れる。
能力ランキング第78位。
ヴァイン。
死亡。
アストラが。
いや。
アストラの姿をした者が。
ヴァインを見下ろす。
そして。
姿が揺らぐ。
そこに立っていたのは。
少年だった。
能力ランキング第10位。
ハルシ。
能力『幻覚支配』
ハルシは笑った。
「まさか」
「偶然歩いていたら君を見つけるなんて」
嬉しそうに手を叩く。
「僕って運がいいね!!」
そして。
手配書を確認する。
そこには書かれている。
※殺した場合、三代まで一生困らない富を与える
ハルシは首を傾げた。
「……僕、子供いないよ?」
そう言って。
その場を去っていった。
◇
「ここは安全だ!!」
ノクリアが堂々と言い放つ。
「気にせず過ごすと良い!!」
その声には自信があった。
能力ランキング第89位。
マグ。
能力ランキング第77位。
サー。
二人は第8位ノクリアの国へ亡命していた。
最上位が守る国。
これ以上安全な場所はない。
二人は少し離れた場所で腰を下ろす。
マグが聞いた。
「なぁ、サー」
「お前はどうしてこっちに来たんだ?」
こっち。
つまり。
第8位ノクリアの国。
彼らには選択肢があった。
第7位カイのいる国か。
第8位ノクリアの国か。
サーは少し考える。
「そうだなぁ……」
そして答えた。
「第7位は王様じゃねぇから少し不安でな」
マグは頷く。
「なるほど」
すると。
サーはノクリアを見る。
そして。
にやけた。
「あとはやっぱり」
「あの女はたまらねぇ」
マグは無言になる。
そして。
深いため息を吐いた。
「聞くんじゃなかったよ」
ランキング下位たちは怯えていた。
ディバイド。
下位から順に殺されている。
その事実に恐怖し。
続々と。
第8位の治める国。
第7位のいる国。
その二つへ亡命し始めていた。
◇
アストラからクロエの居場所を聞き。
レイたちは走っていた。
アストラの最後の言葉が頭に残っている。
「私も行きたいけどー」
「もっと大変なことになるから逃げるねー」
当然だった。
ディバイドのリーダーと副リーダー。
二人が同じ場所にいれば。
全員が来る。
分散するしかない。
だから。
レイたちが向かう。
クロエの元へ。
しばらく進む。
そして。
クロエの居場所近くへ到着した。
その瞬間だった。
ドゴオオン!!
轟音。
木々が倒れていく。
地面が揺れる。
レイたちは足を止める。
戦闘中。
すでに始まっている。
そして。
聞こえた。
冷たい声。
「君はさっさと死ぬべきだろ?」
レイの顔が強張る。
その声を。
知っている。
能力ランキング第6位。
ネメシス。
能力『重力操作』
最悪の相手が。
もう来ていた。




