第80話 偽ディバイド
レイたちは全力で走っていた。
目的地は一つ。
第13位イザベルの国。
そこには……
第88位ペーパーがいる。
「ペーパーさん生きてますよね!?」
マッドが焦った声を上げる。
「分からない……」
「でも急がないと」
ミントも表情を曇らせる。
レイは前だけを見ていた。
胸騒ぎがする。
嫌な予感が消えない。
ペーパー。
あんな別れ方をしたのに。
こんな終わり方だけは嫌だった。
四人は足を止めない。
ただひたすら走った。
◇
第13位イザベルの国へ到着した。
美しい街並み。
穏やかな笑顔。
争いのない平和な国。
だが。
レイたちは知っている。
この平和が自然なものではないことを。
第13位イザベル。
能力『精神侵食』
人々の本心を塗り替え。
平和を作り出している国。
そして。
ここにはペーパーもいる。
「急ごう!」
レイが駆け出す。
三人も続いた。
街の人間に聞き込みを行う。
居場所を探す。
そして。
ついに見つけた。
「ペーパー!!」
レイが叫ぶ。
作業場だった。
紙束を運ぶペーパー。
その隣にはミレア。
二人が振り返る。
驚いた顔。
無事だった。
レイは安堵する。
その瞬間だった。
ブワァン
空間が歪む。
ペーパーのすぐ横。
黒い裂け目が現れた。
「え……?」
フォーサが固まる。
だが。
レイは違った。
右手を向ける。
「危ない!!」
バシュ!
光線が放たれる。
裂け目へ直撃。
「チッ」
舌打ち。
空間は閉じた。
そして。
再び。
ブワァン
今度は少し離れた場所。
空間が開く。
三人の人影が現れた。
レイたちは身構える。
こいつらが。
偽ディバイド。
中央の男が口を開く。
低い声だった。
「危ないな」
その隣。
筋肉質の男が笑う。
「早く始末しようぜ!」
そしてもう一人。
奇妙な男。
声に雑音が混ざっている。
「私が音を聞き分けなければ」
「今ので死んでだぞ」
不気味だった。
レイが前へ出る。
「あなたたち何者?」
中央の男が答えた。
「我々は……」
「ディバイドだ」
嘘だ。
レイは確信する。
本物のディバイドではない。
だが。
先ほどの空間能力。
普通ではない。
レイが聞く。
「ランキングは?」
男は首を振った。
「我々はランキングには入っていない」
四人が驚く。
ランキング外。
あり得ない。
男は続ける。
「我々は隠れていた」
「ずっとな」
レイは息を飲む。
自分と同じ。
ランキングに属さない存在。
だからこそ。
底が見えない。
すると。
筋肉質の男が笑った。
「やるぜ!!」
両拳をぶつける。
パチン。
小さな火種が生まれた。
そして。
それが空へ飛んでいく。
レイの背筋が凍る。
まずい。
本能が叫ぶ。
「くらえ!!」
男が両手を広げる。
「『超爆撃』!!」
ドォン
空で爆発。
次の瞬間。
無数のミサイルが降り注いだ。
村一帯を覆うほどの規模。
「フォーサ!!」
レイが叫ぶ。
フォーサが我に返る。
両手を伸ばす。
緑の光。
『強制覚醒』
レイたちの能力が底上げされる。
「俺にもかけてくれ!」
ペーパーが叫ぶ。
フォーサが頷く。
光を当てる。
レイが聞く。
「ペーパー、いける!?」
ペーパーが笑う。
「あぁ!」
「事情は知らねぇが!」
「お前に合わせるぜ!!」
大量の紙が舞う。
空へ。
空へ。
紙が重なり。
巨大な天井を作った。
さらに。
マッドが地面へ手をつく。
泥が広がる。
紙へ絡みつく。
巨大な防壁。
「間を開けて!」
レイが叫ぶ。
マッドとペーパーが頷く。
レイは隙間から右手を向けた。
バシュ!!
バシュ!!
光線が次々と飛ぶ。
ミサイルを撃ち落としていく。
「やるな」
リーダーの男が呟いた。
そして。
ブワァン
空間が開く。
三人が中へ消える。
だが。
レイは嫌な予感がした。
終わっていない。
そんな気がした。
ドドドドドドドドド!!
ミサイルが降り注ぐ。
爆音。
熱風。
衝撃。
紙の天井が軋む。
マッドが歯を食いしばる。
ペーパーが能力を維持する。
レイは撃ち続ける。
そして。
数十秒後。
静かになった。
音が消える。
レイたちが息を吐く。
その瞬間。
「がはっ……」
嫌な音。
レイが振り返る。
時間が止まった。
ペーパーの胸。
透明な何かが心臓を貫いていた。
「ペーパー!!」
レイが叫ぶ。
ペーパーが崩れ落ちる。
ミレアの悲鳴。
誰もいない。
何も見えない。
だが。
レイは気付いた。
「透明!!」
即座に右手を向ける。
光線を放とうとした。
しかし。
ブワァン
空間が開く。
何かがそこへ飛び込む。
そして。
空間は閉じた。
静寂。
残ったのは。
血だまりの中に倒れるペーパーだけだった。
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