第79話 追われる者たち
最上位会議は騒然としていた。
能力ランキング第9位モルド。
その消失だけでも異常事態だった。
だが。
問題はそれ以上だった。
「ノーランクは一旦保留だ!」
ドルガンが机を叩く。
重い音が響いた。
「今はディバイドを潰せ!」
誰も反論しない。
下位ランキング者が連続して殺されている。
しかも。
犯人はディバイドを名乗っている。
放置はできなかった。
ドルガンが指示を出す。
「攻撃側と防御側に分かれろ」
全員が真剣な顔になる。
すると。
「僕は攻めるよー!」
ハルシが元気よく手を上げた。
まるで遊びに行くような口調。
ノクリアが立ち上がる。
「私は下位を保護する」
続いてカイも口を開く。
「俺もだ」
二人とも防衛側についた。
「僕は潰そうかな」
ネメシスが言う。
「私はどちらでも」
第5位ノアが興味なさそうに言う。
そして。
「わたしは攻めちゃう☆」
アストラが笑う。
だが。
笑顔とは裏腹に。
表情はどこか硬かった。
ドルガンが決断する。
「第8位、第7位、第5位は第90位を保護しろ」
「残りはディバイドの殲滅だ」
誰も異論はない。
しかし。
その時だった。
扉が開く。
「失礼いたします!」
兵士だった。
会議室の空気が凍る。
ドルガンが睨む。
「今すぐ要件を言え」
兵士は震えながら答えた。
「能力ランキング第90位トリス様が死亡しました」
沈黙。
全員の眉間にしわが寄る。
ドルガンは目を閉じた。
そして。
「変更だ」
低い声で言う。
「第89位を保護しろ」
これで。
能力ランキング第100位から第90位まで。
全員が死亡した。
◇
レイの傷が回復した。
そして。
村人から監獄が鎮圧されたことを聞いた。
「良かった」
レイは安堵した。
だが、ゆっくりしてはいられない。
四人は村を出た。
長く留まるわけにはいかない。
第9位を倒した以上。
ノーランクは。
いつ追われてもおかしくない。
レイたちは警戒しながら道を進む。
すると。
マッドが嬉しそうに言った。
「いやー!」
「指名手配犯の気分ですね!」
フォーサが呆れる。
「なんで嬉しそうなの?」
マッドは笑顔だった。
「だって」
少し空を見る。
「まさか僕みたいな人間が、世界を動かしてるなんて」
「昔は想像もできなかったので!」
フォーサはため息を吐く。
「それはどうでもいいとして」
「ひどい!」
フォーサに即座に切り捨てられた。
「本当にどうでもいいわね」
「ミントさんまで!?」
マッドがショックを受ける。
レイは少し笑った。
「ディバイドはどうするんだろうね?」
フォーサが聞く。
レイは考えるように言った。
「私たちが狙われることで」
「ディバイドは確かに動きやすくなった」
第9位撃破。
最上位の視線。
全部ノーランクへ向く。
その間にディバイドが動く。
本来はそうなるはずだった。
だが。
レイは首を振る。
「でも、しばらくは」
「そんな派手に動かないと思う」
「大合戦の被害が大きすぎたから」
ディバイドも無傷ではない。
主戦力の多くを失っている。
しばらくは潜伏するはずだ。
その時だった。
黒いフードの人物が現れる。
四人が同時に身構える。
しかし。
「私よ」
フードが外された。
クロエだった。
レイが驚く。
「どうしてここに?」
クロエは即答した。
「緊急事態よ」
その顔に余裕はない。
「すぐ本部へ来て」
レイたちは顔を見合わせた。
ここまで焦るクロエは初めてだった。
◇
ディバイド本部。
そこは騒然としていた。
人が走る。
指示が飛ぶ。
誰も落ち着いていない。
レイたちは急いで大広間へ向かった。
扉を開く。
そこには。
アストラ。
そして例の男二人が座っていた。
「レイちゃーん!!」
アストラが手を振る。
「おひさー☆」
いつもの調子。
だが。
レイは違和感に気付く。
「あなた」
「焦ってるの?」
アストラが止まった。
そして。
苦笑する。
「あは」
頭をかく。
「バレちゃったかー」
レイは目を見開く。
本当に焦っている。
こんなことは初めてだった。
アストラが椅子を指す。
「座ってー」
「大事な話だからー」
レイたちは席についた。
アストラが話し始める。
「本当はねー」
指をくるくる回す。
「レイちゃんたちが第9位をやってくれたからー」
「ディバイドは動きやすくなる予定だったのー」
そのはずだった。
だが。
アストラの顔が曇る。
「でもねー」
「知らない組織が」
「ランキング者を一瞬で五人殺しちゃったの☆」
沈黙。
レイたちが固まる。
「は?」
フォーサが思わず声を漏らした。
アストラは続ける。
「しかもねー」
嫌そうな顔をする。
「その集団」
「ディバイド名乗ってるの☆」
空気が凍る。
レイが聞く。
「あなたたちじゃないの?」
アストラは即座に首を振った。
「違う違う!」
両手を振る。
「そんな派手に動いたらー」
「レイちゃんたちの意味なくなっちゃうでしょー?」
確かにその通りだった。
レイたちが囮になる。
そのための第9位撃破だったのだから。
レイは眉をひそめる。
「じゃあ」
「誰が……」
アストラが肩をすくめる。
「知らなーい」
「でもそのせいで、ディバイド」
「最上位全員から狙われてるのー」
嘘泣きをする。
「かなしいー」
全然悲しそうじゃない。
だが。
状況は最悪だった。
アストラが続ける。
「だから、ディバイドはしばらく潜伏するねー」
レイは頷く。
当然だろう。
今動けば壊滅する。
しかし。
アストラは資料を取り出した。
「それでねー」
机へ置く。
「これまで死んだランキング者とー」
「今回殺されたランキング者なんだけどー」
レイたちが資料を見る。
順位が並んでいる。
100位。
99位。
98位。
……
90位。
死んでいる。
レイの顔色が変わった。
「下から……」
指が震える。
「まさか……」
アストラが静かに頷く。
「そう」
「今90位まで死んだ」
フォーサ。
ミント。
マッド。
全員が気付く。
アストラが呟く。
「88位のお仲間……」
「危ないかも」




