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1ミリの光線しか出せない私が、能力ランキング22位を殺した日から全てが始まった  作者: eutoria


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第77話 奈落

マッドが必死で走る。


腕ではレイが苦しそうな顔をしている。


腹には深い傷。


呼吸も弱くなっている。


「はぁ……はぁ……」


だがマッドは足を止めなかった。


後ろから迫ってくる。


あの男が。


能力ランキング第9位。


モルドが。


いくら鍛えたとはいえ、一人抱えて走っているのだ。


このままではいずれ追いつかれる。


だからこそ。


マッドは決められた場所まで全力で走った。


あと少し。


あと少しだけ。


その時だった。


「うわっ!」


マッドがとっさにしゃがみ込む。


ヒュンッ!!


数本のナイフが頭上を通り過ぎた。


「レイ! 眼鏡!」


マッドの顔が強張る。


振り返る。


そこにはモルドが立っていた。


「俺の監獄をよくもやってくれたな……」


その顔は怒りに満ちていた。


「お前らは手の先から足の先まで」


「切り刻んでやる!」


殺意が溢れていた。


その時。


「はぁ……はぁ……」


レイがゆっくり立ち上がる。


傷は深い。


顔色も悪い。


それでもモルドを見据えた。


「切れ味の鋭いナイフね……」


モルドが笑う。


「まだ威勢を張るか?」


一歩前へ出る。


「分かっただろ?」


「俺にはお前の攻撃が効かないって!」


能力『無傷』


あらゆる攻撃を受けても傷つかない。


それがモルドだ。


レイは小さく笑った。


「えぇ……もう限界ね……」


ふらつく。


今にも倒れそうだった。


「せめて一突きで殺してくれないかしら」


モルドの口元が歪む。


「いいだろう!」


嬉しそうに笑った。


「お前は俺が惚れた女だ!!」


「特別に一突きでやってやる!!」


そして。


「ただし……」


マッドを見る。


「メガネはバラバラだ」


ナイフの刃を舌でなめる。


モルドがゆっくり近づく。


勝利を確信していた。


だから気付かない。


レイの目がまだ死んでいないことに。


「今よ!!」


レイが叫ぶ。


「はい!!」


マッドが能力を発動する。


地面が泥へと変わる。


モルドが鼻で笑った。


「なんだ? またその……」


そこまでだった。


ズブッ。


モルドの体が沈む。


だが。


泥ではない。


「……は?」


次の瞬間。


足場が消えた。


モルドの体が真っ逆さまに落ちていく。


「何ィィィ!?」


叫ぶ。


巨大な黒い穴。


底が見えないほど深い。


「くそっ!!」


モルドが手を伸ばす。


届かない。


落ちる。


ただ落ちる。


レイはその姿を見下ろしていた。


「あなた」


静かに言う。


「私をランク0で自由にさせたでしょ?」


モルドの目が見開かれる。


「だから罠を作る時間はたくさんあった」


「何度も光線で地面を削ったの」


そして。


レイは言い放った。


「モルド」


「あなたは能力『無傷』なだけ」


「この深い穴から上る力も能力もない」


モルドの顔が歪む。


理解した。


負けたのだ。


「さようなら」


「第9位」


レイが言う。


「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


絶叫が響く。


声はどんどん小さくなり。


やがて消えた。


静寂。


マッドはすぐに能力を発動する。


周囲の地面を泥に変える。


そして穴に蓋をした。


完全に。


何もなかったかのように。


「便利な能力ね……」


レイが微笑む。


マッドは少し照れた。


「はい!」


「レイさんに言われて練習したらできました!!」


嬉しそうに答える。


だが。


その直後。


レイの体から力が抜けた。


「あ……」


マッドが目を見開く。


レイが崩れ落ちる。


「レイさん!?」


まだ、倒れるわけには……


囚人を止めないと……


だが、意識は遠くへ消えていった。











監獄は地獄だった。


女たちが逃げ惑う。


兵士たちが叫ぶ。


囚人たちは完全に制御を失っていた。


だが。


突然。


囚人たちの動きが止まる。


一人の女が現れた。


この世の者とは思えないほど美しい女。


囚人たちは見惚れる。


女は微笑んだ。


そして。


ゆっくりと服を脱ぐ。


囚人たちの理性が吹き飛ぶ。


「おおおおお!!」


「なんてきれいな女だ!!」


「捕まえろ!!」


女が指をくいっと動かす。


手招き。


それだけだった。


囚人たちは一斉に走り出した。


誰も気付かない。


女の足元が。


巨大な穴になっていることに。


そして。


その底に無数の槍が仕掛けられていることに。


「ぎゃあああああああ!!」


悲鳴。


絶叫。


肉が裂ける音。


血が飛び散る。


女は微笑んだままだった。











「うーん」


一人の少年が呟く。


魔導士のような服。


幼い顔。


「モルドで遊ぼうと思って来たら」


辺りを見回す。


死体。


悲鳴。


崩壊した監獄。


「大変なことになってるなー」


少年は笑う。


そして最上階へ向かった。


獄長室。


扉を開ける。


机の上に一通の手紙が置いてあった。


「ん?」


少年が手に取る。


そこには短く書かれていた。


> 我々が第9位を始末した

> ノーランクより


数秒の沈黙。


そして。


少年の口元が大きく歪んだ。


「これはとーっても」


肩を震わせる。


「面白いねぇ!!」


能力ランキング第10位。


ハルシ。


能力。


『幻覚支配』


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