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1ミリの光線しか出せない私が、能力ランキング22位を殺した日から全てが始まった  作者: eutoria


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第76話 紅茶の約束

レイの光線がモルドに直撃した。


「チッ」


モルドが舌打ちする。


モルドの体は吹き飛び。


監獄の壁を突き破って、外へ消えていく。


その直後だった。


「っ……!」


レイがその場に膝をつく。


「レイさん!?」


マッドが慌てて駆け寄った。


見た瞬間、顔色が変わる。


レイの腹部にナイフが深く刺さっていた。


「な、なんでですか!?」


マッドの声が震える。


レイの額から汗が流れ落ちる。


やられた。


前の囚人と同じだ。


意識の外から飛んでくるナイフ。


気付いた時にはもう遅かった。


「はぁ……はぁ……」


呼吸が苦しい。


その時、下の階から足音が響いてきた。


兵士たちだ。


騒ぎを聞きつけたのだろう。


「レイさん!」


マッドが焦る。


しかしレイは歯を食いしばりながら叫んだ。


「マッド!」


「は、はい!!」


マッドが思わず背筋を伸ばす。


「手紙を置いてから」


「泥で下まで下りて」


「……はい!」


マッドは机に手紙を置いた後。


両手を地面につけた。


能力発動。


床が一瞬で泥へと変わる。


二人の体はそのまま沈み込み、下の階へと落ちていった。











牢屋の階。


レイは壁にもたれながら腰を下ろした。


「ちょっと……横にならせて……」


「レイさん!本当に大丈夫ですか!?」


マッドの顔は真っ青だった。


レイの呼吸は弱い。


だが、それ以上に……


何か重い決断をしようとしていた。


「マッド……よく聞いて」


「はい!」


「ペーパーの反乱を思い出すのよ」


「反乱……?」


マッドは一瞬考える。


そして目を見開いた。


「あっ……!」


全てを理解する。


「……分かりました!!」











「だいぶ飛ばされたな……」


モルドはゆっくりと立ち上がった。


監獄からかなり離れた場所まで吹き飛ばされていた。


「あの光線……噂の光の女か……」


モルドは会議を思い出していた。


「今はどうでもいい」


埃をはらう。


当然ダメージはない。


能力『無傷』


それに。


「レイにはナイフを刺した」


モルドが笑う。


あの傷では満足に動けない。


その上、兵士たちもいる。


逃げ切れるはずがない。


「ゆっくり戻るか」


そう言って歩き出した。


だが次の瞬間。


モルドの表情が変わる。


遠くから聞こえてくる音。


怒号。


悲鳴。


金属音。


規模がおかしい。


レイたちと兵士の戦いなど比べものにならない。


「まさか……」


嫌な予感が走る。


そして答えにたどり着いた。


「あの眼鏡か!!」


モルドの顔が怒りに歪む。


次の瞬間には全力で駆け出していた。











監獄は地獄と化していた。


牢屋という牢屋が開放されている。


囚人たちが暴れ回っていた。


暴動の規模は兵士たちの手に負えるものではない。


鉄格子は泥に沈み。


壁は破壊され。


悲鳴が響き渡る。


全てマッドの仕業だった。


ペーパーの反乱。


あの時と同じ。


監獄そのものを敵にぶつけたのだ。


レイたちにとって苦渋の決断だった。


ペーパーの時と違う。


全員が凶悪犯ということ。


「レイさん、行きますよ」


マッドがレイを軽そうに抱きかかえる。


「あなた……随分立派になったのね」


マッドは少し照れくさそうに顔を逸らした。











二人は出口へ向かう。


そして。


出口の前で足を止めた。


一人の女が立っていた。


手にはナイフ。


シルヴィアだった。


「シルヴィア……」


レイが呟く。


シルヴィアの瞳には怒りが宿っていた。


「レイ」


冷たい声。


「私の居場所を、よくもめちゃくちゃにしてくれたわね」


殺意が溢れている。


「レイさん、僕の能力で……」


「待って」


レイがマッドを制した。


そしてシルヴィアを真っ直ぐ見つめる。


「シルヴィア」


「何よ」


「あなた、本当にここが居場所だと思っているの?」


シルヴィアの眉がぴくりと動いた。


「そうよ!」


叫ぶ。


「前にも言ったでしょ!!」


「私は両親に売られたの!!」


怒りと悲しみが混ざった声。


「外の人間なんて信じられない!!」


「誰も私を必要としてくれなかった!!」


「でもここだけは違った!!」


「ここだけが私を受け入れてくれたのよ!!」


レイは静かに聞いていた。


そして口を開く。


「私は両親を殺されたの」


「……え?」


シルヴィアが固まる。


「そこから一人で旅をした」


「本当は怖かった」


レイは続ける。


「でも、その中で仲間と出会った」


「同じ志を持つ仲間」


「こんな私をリーダーだと言ってくれる仲間に」


シルヴィアは唇を噛む。


「それは……」


震える声。


「あなたが強いからでしょ……!」


レイは首を横に振った。


「ううん」


「私は弱い」


「何度も迷った」


「何度も後悔した」


「何度も負けた」


レイの目が揺れる。


アンの姿が脳裏をよぎった。


「ここに来てからだって」


「迷った結果」


「アンすら救えなかった」


「そして今も」


「あなたを救えていない」


レイは苦しそうに言う。


だが、それでも前を向いた。


「でもね」


「必ず外には明るい希望がある」


「たとえ今がどれだけ暗くても」


「明るくなる」


レイは強く言った。


そして叫ぶ。


「いや……」


「私たちが明るくする!!」


シルヴィアは黙って空を見上げた。


その瞬間。


「ごほっ!」


レイが大量の血を吐く。


「レイさん!!」


マッドが慌てる。


傷は限界に近かった。


さらに。


遠くから怒号が響く。


「レイ!!!」


「眼鏡!!!」


「お前ら殺してやる!!!」


モルドだ。


もう近い。


追いつかれる。


マッドの顔が青ざめる。


シルヴィアは静かに言った。


「悪いけど」


レイを見る。


「あなたの言葉は響かないわ」


レイが目を見開く。


「私はこの場所を守る」


「そのためには」


「あなたは邪魔」


冷たい声。


だがどこか優しかった。


「だから」


シルヴィアはまっすぐレイを見る。


「早く行きなさい」


「……え?」


レイが呆然とする。


シルヴィアは、そのまま城の中へ歩き出した。


そしてレイの横を通るとき。


小さく言った。


「もし、外で会ったら」


「また紅茶を飲みましょ」


シルヴィアはそのまま去っていった。


レイは小さく呟いた。


「……うん」


マッドはレイを抱え直した。


二人は監獄を出た。

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