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1ミリの光線しか出せない私が、能力ランキング22位を殺した日から全てが始まった  作者: eutoria


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第71話 獄長室

結局。


レイはシルヴィアの質問へ曖昧に答えた。


自分が何者なのか。


なぜここへ来たのか。


本当のことは言えない。


シルヴィアも深く追及しなかった。


こうして。


お茶会は終わった。











それから数日後。


アンが珍しく上機嫌だった。


「レイ!」


嬉しそうに駆け寄ってくる。


「私!」


「遂にモルド様に身を捧げる時が来たの!!」


レイの表情が固まる。


「え……?」


嫌な予感がした。


「まさか」


「行く気なの?」


アンは当然のように頷く。


レイは立ち上がる。


「ちょっと待って!」


アンが驚く。


「失敗したらどうなるか分かってるの!?」


仮にも。


数日間一緒に過ごした。


情が湧いていた。


だが。


アンの顔色が変わる。


「なに?」


冷たい声だった。


「もしかして嫉妬してるの?」


レイが言葉を失う。


「違う!」


思わず声が大きくなる。


「そんなわけ……」


すると。


アンが怒鳴った。


「ほっといて!!」


部屋が静まり返る。


アンは拳を握る。


「私にやっと来たチャンスなの!!」


目に涙が浮かぶ。


「私はね」


「生まれてから不細工で」


「スタイルも悪かった」


レイは黙る。


「頭も悪い」


「唯一好きになった男にも騙された」


「それでここに連れてこられたの!!」


涙がこぼれる。


「だから!!」


「もうこれが最後なの!!」


必死だった。


レイは何も言えない。


アンを止める言葉が見つからない。


静寂。


やがて。


アンが目を伏せる。


「……ごめん」


小さく謝った。


そして。


寂しそうに笑う。


「心配してくれてるんだよね」


レイは答えられない。


アンは続ける。


「でも私」


少し俯く。


「レイと違って」


「弱いから……」


違う。


レイは心の中で否定する。


自分も弱い。


ペーパーを失った。


アストラとクロエに正義を否定された。


何度も迷った。


何度も折れそうになった。


それでも。


マッドがいた。


フォーサがいた。


ミントがいた。


支えてくれる仲間がいた。


だから。


立っていられるだけだ。


レイは何も言えなかった。


何も。


アンは立ち上がる。


そして。


笑った。


「ありがとう、レイ」


その一言だけ残して。


部屋を出ていった。


アンは。


二度と戻ってこなかった。











数日後。


レイは一人で掃除をしていた。


トイレ掃除。


床磨き。


いつもアンとやっていた仕事。


ふと。


アンの顔が浮かぶ。


少しだけ。


胸が痛くなった。


その時だった。


「なに浮かない顔してるの?」


聞き慣れた声。


レイが振り向く。


シルヴィアだった。


「ほっといて」


レイが冷たく答える。


シルヴィアは気にしない。


そして。


淡々と言った。


「モルド様からお声がかかったわ」


レイの手が止まる。


数秒。


固まる。


「私に?」


シルヴィアが頷く。


「なんで?」


一度断った。


それなのに。


なぜ。


シルヴィアは肩をすくめる。


「知らないわ」


少し不満そうだった。


「こんなこと初めてよ」


レイは黙る。


シルヴィアは続けた。


「とりあえず」


「今日の夜までにおめかしして」


振り返る。


それだけ言って去っていった。


レイはその場に立ち尽くす。


どうする。


殺すか?


いや。


相手は能力ランキング第9位。


能力『無傷』


方法がない。


思考が加速する。


考える。


考える。


考える。


だが。


何も思い付かない。


結局。


時間だけが過ぎていった。











夜。


レイは鏡を見ていた。


慣れない服。


慣れない化粧。


自分ではないみたいだった。


レイは拳を握る。


絶対に生きて戻る。


そう心に決める。


やがて。


シルヴィアが迎えに来た。


二人は無言で歩く。


長い廊下。


階段を上る。


重い空気。


最上階。


そして。


一つの扉の前で止まった。


「ここよ」


シルヴィアが言う。


レイは扉を見る。


巨大な扉。


その向こうに。


能力ランキング第9位がいる。


シルヴィアが振り返る。


「後は一人で行きなさい」


そう言って去っていく。


レイは一人残された。


逃げるか?


一瞬考える。


だが。


首を振った。


ここで逃げれば。


何も変わらない。


それに。


マッドがいる。


レイは深呼吸した。


そして。


意を決して扉を開ける。


ギィ。


重い音。


広い部屋だった。


豪華な机。


豪華な椅子。


大きな窓。


そして。


窓の外を眺める男。


モルド。


「待っていた」


振り返らずに言う。


レイは警戒する。


「……私に何の用?」


モルドが小さく笑う。


そして。


ゆっくり振り返った。


「随分威勢がいいな」


穏やかな顔。


普通の青年。


だが。


次の瞬間。


レイの全身が凍った。


「第7位の妹」


戦慄が走る。


息が止まる。


なぜ。


それを知っている。


レイの動揺を見て。


モルドは笑った。


「色々話そうか」


不敵な笑みだった。


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