表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1ミリの光線しか出せない私が、能力ランキング22位を殺した日から全てが始まった  作者: eutoria


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/182

第70話 ランク1の女

夜。


レイは部屋でアンと話していた。


「ねぇ、レイ」


「あれがモルド様なんだね」


少し笑う。


「なんだか拍子抜けしちゃった」


レイも思い出す。


普通の青年。


特別な威圧感もない。


恐ろしい怪物にも見えなかった。


「確かにね……」


レイは頷く。


だが。


能力ランキング第9位。


油断していい相手ではない。


その時だった。


「レイ」


声が響く。


レイが振り向く。


そこにはランク1の女が立っていた。


「来なさい」


有無を言わせぬ口調。


レイは立ち上がる。


そして後をついていった。


案内された部屋。


そこには数人のランク6の女たちがいた。


全員緊張している。


ランク1の女が言う。


「あなたたちは私が選んだ、期待できるメンバーよ」


女たちの表情が変わる。


期待。


喜び。


不安。


様々だった。


そして。


ランク1の女は続ける。


「だから」


微笑む。


「今日この中で」


「モルド様に身体を捧げたい人は手を上げなさい」


レイは黙る。


そう来たか。


モルドへ接近できる。


情報も手に入るかもしれない。


だが。


まだ準備が足りない。


それに。


いくら潜入とはいえ。


身体を差し出すのは……


「私が!」


「いや、私が!!」


「わたしぃ!!」


一斉に手が上がる。


レイ以外。


全員。


当然だった。


ランクが上がれば生活は変わる。


豪華な服。


豪華な食事。


豪華な部屋。


自由に近い生活。


それを見れば。


憧れる。


今のランク6は。


召使い以下なのだから。


ランク1の女がレイを見る。


「あなたは手を上げないの?」


全員の視線が集まる。


レイは肩をすくめた。


「あいにく」


小さく笑う。


「私はそこまで安くないわ」


空気が凍る。


全員がレイを睨む。


だが。


ランク1の女は怒らなかった。


むしろ。


面白そうに笑う。


「良いわね」


そして振り返る。


「じゃあ、あなた以外連れていくわ」


選ばれた女たちが嬉しそうに着いていく。


そして。


部屋を去っていった。











翌朝。


昨日選ばれた女たちのうち。


何人かが戻ってきた。


ランク5へ昇格していた。


皆嬉しそうだった。


だが。


戻ってきていない女もいた。


レイは周囲を見る。


誰もそのことを話さない。


まるで。


最初から存在しなかったかのように。


その時だった。


「あなた」


レイが振り返る。


ランク1の女だった。


「少しお話しないかしら」


レイは警戒する。


何を企んでいるのか?


だが。


情報を得るなら。


この女が一番近い。


レイは頷いた。











案内された場所を見て。


レイは少し驚いた。


大きな庭。


綺麗に整えられた芝生。


白いパラソル。


その下には丸テーブル。


ポット。


ティーカップが二つ。


そして。


焼き立てのクッキー。


まるで貴族の庭園だった。


「どうぞ」


女が席を勧める。


レイは座った。


女も優雅に腰を下ろす。


そして。


紅茶を注いだ。


「話って何?」


レイが聞く。


女は微笑む。


「あら」


紅茶を口へ運ぶ。


「随分せっかちなのね」


優雅な仕草だった。


そして。


カップを置く。


「まずは名前から」


微笑む。


「私はシルヴィア」


女が名乗る。


そして。


レイを見つめた。


「レイ」


「あなたはどうしてここへ来たの?」


レイは目を細める。


探りか。


詮索か。


そう思う。


だから。


そのまま返した。


「あなたが答えたら答える」


シルヴィアは少し笑った。


「そう」


そして。


静かに語り始める。


「私は両親に売られたの」


レイの表情が変わる。


シルヴィアは平然としていた。


「借金だったらしいわ」


「詳しくは知らない」


紅茶を飲む。


「気付いたらここにいた」


レイは黙って聞いていた。


シルヴィアは続ける。


「最初はランク6」


「毎日泣いていたわ」


「逃げたいとも思った」


レイは意外だった。


今の姿からは想像できない。


「でも」


シルヴィアは空を見上げる。


「何人もの女が消えていく中で」


静かな声。


「私は残った」


「そして」


「モルド様に気に入られた」


指輪を見せる。


宝石が輝く。


「女の中で一人しかなれない」


「ランク1になったの」


誇らしげだった。


レイは思わず聞く。


「嬉しそうだけど……」


「外に出られなくていいの?」


すると。


シルヴィアの表情が変わった。


少しだけ鋭い目。


「外に?」


鼻で笑う。


「外に何の希望があるの?」


レイが言葉を失う。


シルヴィアは続ける。


「外の世界は残酷よ」


「親は私を売った」


「誰も助けてくれなかった」


紅茶を口にする。


「でもここでは違う」


「私は価値を認められた」


「努力した分だけ上へ行ける」


「綺麗な服もある」


「食事もある」


「居場所もある」


シルヴィアは満足そうだった。


「だから」


微笑む。


「私は幸せよ」


その笑顔に。


嘘は見えなかった。


レイは黙る。


反論できない。


頭に浮かぶ。


イザベル。


あの国。


あれは精神侵食だった。


しかし。


シルヴィアは違う。


自分の意思で。


自分の価値観で。


ここを選んでいる。


レイは拳を握った。


何が正しいのか。


分からなくなる。


また。


迷い始めてしまった。


もし面白いと思って頂けたら、ブックマークや評価を入れてもらえると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ