第64話 第9位の能力
レイはアストラを見ていた。
ディバイド。
能力ランキング第4位。
この女は。
自分たちに第9位を殺せと言った。
だが。
理由が分からない。
レイは聞く。
「ちゃんと理由を教えて」
アストラはにっこり笑う。
「いいよー☆」
椅子をくるくる回す。
そして。
楽しそうに説明を始めた。
「ディバイドを動けるようにするにはー」
指を一本立てる。
「もっと脅威的な存在が出てくればいいわけー」
レイたちは黙って聞く。
アストラは続ける。
「じゃあそれはどんな存在か!!」
勢いよく立ち上がる。
そして。
片手を高く上げた。
「ずばり!!」
「最上位を殺す集団でーす☆」
レイたちは固まる。
アストラは楽しそうだった。
「今みんなー」
「ディバイドに注目してるでしょー?」
大合戦。
ランキング者大量死亡。
当然だ。
「でもねー」
アストラは机に乗り出す。
「新しい集団が最上位を殺したらー?」
「みーんなそっち見るよねー☆」
そういうことか。
ディバイドへの注目を逸らす。
そのための囮。
いや。
新勢力。
「第9位はランキング制度に賛同してるしー」
「レイちゃんたちの目的に一致してる!」
両手を広げる。
「レイちゃんたちが殺せばー」
「一気に知名度アップアッープ!!☆」
クロエも頷いている。
どうやら本気らしい。
「お互いウィンウィンだねー☆」
レイは頭を抱えたくなる。
理屈は分かる。
だが。
最上位の一角。
マッドが恐る恐る手を挙げる。
「でも……」
少し青い顔。
「第9位なんて」
「勝てますかね……」
当然の疑問だった。
アストラ。
ネメシス。
空中都市。
最上位というだけで恐ろしい。
だが。
アストラは即答した。
「大丈夫!!」
全く根拠がなさそうな笑顔。
「そんなに強くないから!!」
全員が不安になる。
全く信用できない。
すると。
アストラが咳払いした。
「では発表します!!」
「能力ランキング第9位!!」
「モルドちゃーん!!」
「その能力はー?」
突然ドラムロールを始める。
「デレレレレレレレレレレ」
口で。
クロエが頭を抱える。
鳥顔の男もため息を吐く。
そして。
アストラが叫んだ。
「デン!!」
満面の笑み。
「能力『無傷』!!」
沈黙。
数秒。
誰も理解できなかった。
「え……?」
レイが呟く。
三人も固まっている。
アストラは説明する。
「どんな攻撃も効きません!!」
笑顔。
「以上!!」
以上だった。
レイたちは唖然とする。
なんだそれ。
意味が分からない。
フォーサが叫ぶ。
「そんなでたらめな!!」
アストラは笑う。
「ほんとだよー☆」
マッドが青ざめる。
ミントも無言だった。
レイはふと思う。
そして。
アストラへ聞いた。
「それ」
「あなたなら殺せるんじゃない?」
アストラは親指を立てた。
「イエース!!」
満面の笑み。
「アストラちゃんなら一撃でーす☆」
能力無効。
それなら。
無傷も無効化できる。
レイは立ち上がる。
「じゃあなんでしないの!?」
当然だった。
殺せるなら殺せばいい。
だが。
アストラは肩をすくめる。
「だってばれちゃうじゃーん」
レイが首を傾げる。
アストラは続けた。
「私が殺したってー」
そして。
ニヤリと笑う。
「モルドちゃんの天敵は私だけだからー☆」
全員が理解する。
なるほど。
モルドが死ねば。
真っ先に疑われるのはアストラ。
だから自分では動けない。
「無傷なんて」
「どうやって殺すの?」
レイがアストラへ聞く。
すると。
アストラは即答した。
「しらなーい☆」
全員が固まる。
クロエですら顔をしかめる。
「めちゃくちゃだ……」
フォーサが呟く。
アストラは気にしない。
「まっ!」
「頑張ってねー☆」
無責任だった。
そして。
最後に言う。
「あっ」
「グループ名も決めてねー☆」
それだけだった。
アストラは立ち上がる。
そして。
部屋から出て行った。
「ちょっ……!」
レイが慌てて追おうとする。
だが。
「話は以上だ」
低い声。
鳥顔の男だった。
レイが止まる。
男は机の上へ紙を置く。
「第9位の居場所だ」
地図だった。
かなり詳細に書かれている。
「健闘を祈る」
感情のない声。
そして。
男も立ち上がる。
クロエも。
もう一人の男も。
全員去っていく。
残されたのは。
レイたち四人だけだった。
静寂。
マッドがぽつりと呟く。
「どうします……?」
誰も答えない。
レイは地図を見る。
能力ランキング第9位。
モルド。
能力。
『無傷』
レイはゆっくり息を吐いた。
どうやら。
自分たちは。
とんでもないことに。
巻き込まれたらしい。




