第61話 試される思考
レイたちは屋敷の中へ入った。
豪華だった。
赤い絨毯。
高い天井。
煌びやかな装飾。
まるで王城だった。
ディバイドの本部。
もっと薄暗く。
血なまぐさい場所だと思っていた。
一行は大広間へ案内される。
その中心には。
長い机が置かれていた。
そして。
向かい側には三人の人影。
中央を一席空けて座っている。
一人は。
鳥のような顔をした男。
鋭い目。
もう一人は。
ただ座っているだけなのに。
嫌な圧を放つ男。
そして。
クロエだった。
クロエがレイを見る。
「久しぶりね」
レイも見返す。
あの日を思い出した。
ライゼン。
アクア。
大合戦。
「怪我はもう治ったの?」
レイが聞く。
「えぇ、なんとかね」
クロエが答える。
すると。
「座ってー☆」
アストラが言う。
レイたち四人は席へ座る。
そして。
アストラ自身も歩く。
空いていた中央席へ。
当然のように腰を下ろした。
誰も異論を唱えない。
この場の頂点。
それが誰なのか。
よく分かった。
アストラが笑う。
「さっそくだけどー」
机へ肘を置く。
「最上位会議の結果は知ってるー?」
レイが頷く。
「知ってるわ」
「ネメシスから聞いた」
クロエたちが少し驚く。
アストラだけが笑った。
「へぇー」
「第6位とお話したんだー」
レイは気にしない。
そして言う。
「最上位会議は」
「順位変動も」
「穴埋めも」
「何もしなかった」
空気が重くなる。
「能力ランキング制度は」
「何も変わらなかった」
悔しかった。
レイの脳裏に浮かぶ。
ライゼン。
アクア。
フレイム。
ミラー。
ギル。
ナギ。
あれだけ死んだ。
あれだけ戦った。
国まで滅んだ。
それなのに。
最上位は何も変わらなかった。
「大合戦は無意味だった……」
レイが呟く。
その時だった。
「あれー?」
アストラが首を傾げる。
「無意味じゃないよー?」
レイが顔を上げる。
アストラは笑った。
そして。
自分を指差す。
「私の目的はー」
「まさにそれ!!」
レイが固まる。
「どういうこと?」
アストラは楽しそうだった。
「能力ランキング制度はー」
「この程度じゃ変わらないの☆」
指を振る。
全員が聞いている。
「だからー」
「今回の大合戦でー」
「据え置きにされることを狙ってたの!」
レイの目が見開く。
据え置き。
それが目的。
「むしろねー」
アストラが笑う。
「制度が変わったりー」
「新しい人が補充されたらー」
肩をすくめる。
「キリないでしょ?☆」
レイは理解する。
ディバイドは。
制度を揺さぶりたかったわけじゃない。
補充を止める必要がある。
だから。
大量に殺した。
アストラが紙を机へ置く。
レイたちも見る。
能力ランキング者死亡リスト。
そこには。
死んだ者たちの名前が並んでいた。
アストラが指でなぞる。
「ここにー」
「仲間以外全部入れるの☆」
空気が凍る。
「そしてー」
アストラが両手を広げる。
「ディバイドが制度になる!!」
「それこそが私達の自由!!」
誇らしそうだった。
まるで。
素晴らしい未来を語るように。
だが。
レイは首を振る。
「私は反対」
即答だった。
鳥の男が目を細める。
もう一人の男もレイを見る。
クロエも眉をひそめる。
だが。
レイは止まらない。
「私たちは弱者の味方よ」
強い声だった。
「ランキング者の中にも」
「弱者を守る人がいる」
アクア。
イザベル。
ミント。
そして。
ペーパー。
「全員を殺すなんて間違ってる」
レイは言い切った。
クロエが立ち上がる。
「あなたね……!」
怒りが滲む。
「前にも言ったけど……」
だが。
アストラがクロエの前に手を上げる。
クロエが止まった。
アストラはレイを見る。
楽しそうだった。
まるで。
待っていたかのように。
「じゃあ聞かせてー?」
レイを見る。
真っ直ぐに。
「レイちゃんがー」
「どうするのかをー」
不敵な笑み。
試されている。
レイは理解した。
ここでの答え次第で。
自分の価値が決まる。
レイは深く息を吸う。
そして。
覚悟を決めた。




