第60話 欠けた旅
翌朝。
レイは目を覚ました。
静かな朝だった。
何気なく部屋を見渡す。
そして。
視線が止まる。
一つだけ空いているベッド。
ペーパー。
昨日までそこにいた。
「俺は反乱軍のリーダー」
「ペーパーだ」
初めて会った時を思い出す。
そこからずっと。
一緒に旅をしていた。
だが。
もういない。
レイは唇を噛む。
もしかしたら。
もう二度と会えないかもしれない。
胸が苦しくなった。
涙が出そうになる。
その時だった。
「おはよう、レイ」
聞き慣れた声。
レイが振り向く。
そこには。
ミントが立っていた。
「ミント!!」
レイは立ち上がる。
そして。
勢いよく抱き着いた。
ミントが少し驚く。
「よかった!!」
声が震えていた。
「本当によかった……」
ペーパーは失った。
だからこそ。
ミントまで失わなくてよかった。
心からそう思った。
ミントは優しく微笑む。
そして。
小さな声で言った。
「ありがとう、レイ」
その言葉だけで。
救われた気がした。
その後。
マッドとフォーサも起きた。
二人もミントの復帰に喜んでいた。
レイはミントへ全てを話した。
精神侵食。
イザベル。
アストラ。
ペーパーの離脱。
全て。
話し終える。
ミントは静かに聞いていた。
そして。
俯く。
「そうだったのね……」
それだけだった。
だが。
ミントは胸を痛めていた。
ミントは気付いていた。
精神攻撃に。
異常に。
だが。
自分を守ることだけで精一杯だった。
もし。
もっと早く動いていたら。
もっと早く皆に伝えていたら。
ペーパーは去らなかったかもしれない。
ミントは拳を握る。
悔しかった。
その時。
マッドが立ち上がった。
「僕は……」
涙をこらえる。
「僕はペーパーさんの分まで強くなる!!」
全員が見る。
マッドは続けた。
「必ずもっと強くなって!」
「ペーパーさんの待つ、誰かになってみせます!!」
涙目だった。
だが。
その目は真っ直ぐだった。
すると。
フォーサも立ち上がる。
「私も!!」
拳を握る。
「必ず平和にする!!」
強い声だった。
ミントは微笑む。
レイも笑った。
まだ終わっていない。
まだ折れていない。
仲間は減った。
それでも。
前へ進める。
そう思えた。
その中で。
アストラだけが。
不気味に笑っていた。
「いいねいいねー☆」
何が面白いのか。
ずっと笑っていた。
◇
レイたちはアストラと共に国を出た。
平和な国。
ペーパーが残った国。
もう振り返らない。
しばらく歩いた後。
レイはアストラを見る。
「いいの?」
アストラが首を傾げる。
「んー?」
レイは続けた。
「あなたの目的はイザベルを殺すことでしょ?」
アストラは笑う。
「良いよ良いよー」
手をひらひら振る。
「あのおばさん」
「国に入らなければ害ないしー☆」
レイたちは顔を見合わせる。
すると。
アストラが続けた。
「それにー」
笑顔。
「いつでも殺せるから☆」
全員の背筋が凍る。
そうだ。
こいつは。
能力ランキング第4位。
あのネメシスより上。
正真正銘の怪物。
レイは冷や汗を流しながら聞く。
「それで」
「お願いって何?」
アストラはニコニコしている。
「それはねー」
指を立てる。
「ディバイドの本部で話すよー☆」
レイたちが固まる。
本部。
つまり。
ディバイドの本拠地。
レイは嫌な予感しかしなかった。
その時だった。
アストラが前を指差す。
「あっ、着いたー☆」
全員が顔を上げる。
そして。
絶句した。
そこにあったのは。
巨大な豪邸だった。
城ではない。
だが。
普通の屋敷とも違う。
異様なほど大きい。
そして。
正面の門には。
複数の黒フードたちが立っていた。
レイたちは身構える。
アストラが両手を広げる。
満面の笑み。
「ようこそー☆」
「ディバイド本部へ!!」
ここから世界はさらなる混沌へと巻き込まれていく。
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