第六話 同行者
黒いフードを被った者たちが地面を見ていた。
「これは……?」
一人が呟く。
地面が焼け焦げている。
異常なほど広範囲に。
「あっちを見て」
女が指を差した。
全員がそちらを見る。
木々。
岩。
その全てに穴が開いていた。
まるで何かが一直線に貫いたように。
「熱線の類ね」
女はフードを外した。
黒い長髪。
それを後ろの高い位置で束ねている。
鋭い瞳が周囲を見渡す。
「どうやら化け物が近くにいるわね」
彼女は地面に残る痕跡を見つめる。
そして。
「追うわよ」
黒いフードの集団はレイの行方を追い始めた。
◇
レイはマッドを連れて歩いていた。
幸い。
追手の姿はない。
「誰も来ませんね」
マッドが安心したように言う。
「そうね」
レイは立ち止まる。
「それじゃ」
マッドと離れ、歩き出そうとした。
だが。
「待ってください!!」
マッドが慌てて声を上げる。
レイが振り返る。
「何?」
「僕も連れて行ってください!!」
レイは少し困った顔をした。
「悪いけど、やることがあるの」
「もう家に帰りなさい」
「家族が待ってるでしょ」
少し皮肉も混ざっていた。
マッドは黙る。
レイは歩き出す。
そして。
「家族はとっくに全員死にました」
マッドが俯きながら言う。
レイの足が止まった。
「能力者売りの連中に殺されました」
静かな声だった。
だが。
その言葉は重かった。
レイは何も言えなかった。
そうか。
この子も。
自分と同じなのか。
しばらく沈黙が続く。
やがてレイが口を開いた。
「マッド」
「はい」
「能力ランキングを恨んでる?」
マッドは少し黙った。
そして。
「はい」
迷いなく答えた。
レイは空を見上げる。
能力ランキング。
強者だけが守られる制度。
弱者を踏み潰す制度。
自分が壊すと決めたもの。
「……分かった」
レイが言う。
「一緒に行こ」
マッドの顔が明るくなる。
「本当ですか!?」
こうして。
能力『泥』
マッドが仲間になった。
◇
二人は道を歩いた。
「マッド、何歳なの?」
レイが聞く。
「僕は15歳です!」
「15歳……」
レイは少し驚く。
もっと幼く見えた。
身長が低く。
丸眼鏡をかけているせいだろうか。
「レイさんは?」
「17歳」
「二つ上なんですね」
マッドは嬉しそうだった。
レイは少しだけ笑う。
久しぶりだった。
そんな会話をしたのは。
やがて。
遠くに巨大な城壁が見えてきた。
「国だ!!」
マッドが声を上げる。
レイは足を止めた。
大きい。
村でしか暮らしたことのないレイには。
別世界のようだった。
世界を見る。
能力ランキングを知る。
そして。
壊し方を見つける。
レイは城門を見上げた。
「行こう」
二人は国へ足を踏み入れた。




