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1ミリの光線しか出せない私が、能力ランキング22位を殺した日から全てが始まった  作者: eutoria


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第五話 泥

マッドは逃げていた。


能力『泥』


地面を泥に変える能力。


ただそれだけ。


戦闘向きではない。


「待て!!」


後ろから怒号が飛ぶ。


武器を持った男たちが追いかけてくる。


マッドは必死に能力を使った。


地面を泥に変える。


男たちの足が沈む。


だが。


距離は縮まる。


マッド自身が遅いからだ。


追いつかれる。


そう思った時。


前方に少女が見えた。


黄色い髪。


旅装束。


一人。


「助けてください!!」


マッドは少女にしがみついた。


少女……レイは面倒そうにマッドを見る。


身長の低い、丸眼鏡をかけた少年。


「何?」


「追われてるんです!」


「このままじゃ売られるんです!」


売られる。


レイの眉が動く。


すると。


追手が追いついた。


五人。


全員武器を持っている。


レイは目を細めた。


武器が小さく震えている。


能力か。


「あ?」


リーダーらしき男が睨む。


「なんだお前」


レイは答えない。


代わりにマッドを見る。


「説明して」


「は、はい!」


マッドは慌てて答えた。


「能力者売りです!」


「能力者を捕まえて売る連中です!」


レイは黙る。


そんな商売もあるのか。


この世界は本当に腐っている。


「お嬢ちゃん」


男が笑う。


「能力者か?」


「……いいえ?」


マッドの顔が絶望に染まる。


だが男は笑った。


「まぁいいさ」


「女は別ルートで高く売れる」


「最近胴元のお偉いさんが死んでな」


「バタバタしてるが、いい金にはなるだろ」


レイは聞いていた。


ただ静かに。


男たちは気付かない。


その目が少しずつ冷たくなっていることに。


「あなた」


レイがリーダーに聞く。


「ランキングに入ってる?」


男は鼻で笑った。


「あ?」


「まだだ」


「だがもうすぐ入る」


男が武器を掲げる。


小さく振動している。


「俺はウェイブ!」


「能力『振動』!」


「武器を振動させて威力を上げる!」


「もうすぐランキング入りさ!」


レイは少し考える。


入っていない。


ブラッドとは違う。


強者ではない。


殺す必要はないかもしれない。


そう思った。


だが。


男は続けた。


「女子供を売りまくって」


「名を世界に轟かせるんだ!」


母の顔が浮かぶ。


父の顔が浮かぶ。


ブラッドの顔が浮かぶ。


レイは小さく息を吐いた。


「……やっぱり駄目」


マッドが聞き返す。


「え?」


レイが振り向く。


「あなた」


「マッドです」


「……マッド」


「はい」


「今から見ること」


「誰にも言わないで」


マッドは何かを感じた。


本能が警告する。


目の前の少女は危険だと。


それでも。


黙って頷いた。


レイが前へ出る。


ウェイブが眉をひそめる。


異様な空気。


嫌な予感。


「おい、お前ら……」


言い終わらなかった。


光が走った。


ウェイブの胸に穴が開く。


「え……?」


血が溢れる。


崩れ落ちる。


残った四人が凍り付く。


何が起きたか分からない。


レイは無表情だった。


右手を向ける。


光。


一人。


また一人。


また一人。


心臓を貫かれる。


悲鳴すら上がらない。


全員が倒れた。


マッドは動けなかった。


五人。


一瞬だった。


レイは死体を見る。


そして。


右手を向ける。


光線。


何度も。


何度も。


何度も。


死体を消していく。


肉が消える。


骨が消える。


やがて何も残らなくなった。


風だけが吹く。


レイは振り返る。


「行こう」


「え……?」


「まだ追手が来るかもしれない」


マッドは震えていた。


目の前の少女が。


能力ランキング22位を殺したことなど。


まだ知る由もなかった。


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