第46話 四人目
レイたちは能力至上主義の国を後にした。
瓦礫となった国。
多くの死者。
誰も口を開かなかった。
レイは考えていた。
ディバイド。
彼女たちは悪だ。
能力ランキング制度を乗っ取ろうとしている。
その目的だけなら。
私と大差ない。
だが。
彼女たちは人を殺す。
善人も。
罪のない人も。
平然と。
レイは拳を握る。
私は違う。
弱い人を助けたい。
だから。
強者であっても。
弱者を守る人なら。
殺すべきではない。
思い出す。
マリン。
フォーサの父。
フレイム。
皆。
優しい人だった。
レイは前を見る。
そして。
心の中で決意した。
私は。
ディバイドのようにはならない。
その時だった。
「まさかあんな戦争に巻き込まれるなんて……」
「僕たち、もうすぐ出発する予定だったのに」
マッドがため息をつく。
疲れ切った声だった。
ペーパーが頷く。
「不運だったな」
肩をすくめる。
不運。
その言葉に。
レイは引っかかった。
本当にそうだろうか。
今回の事件。
ただの偶然だったのか。
ギルたちが来た。
確かに最初はそれだった。
だが。
それだけで。
あそこまで大きな戦争にはならない。
ディバイドだ。
彼らも襲撃した。
だからあれだけの戦争になった。
だが。
なぜこのタイミングだったのか。
ディバイドだって無傷ではない。
多くの戦力を失った。
第4位のアストラと第19位のクロエが生きているとはいえ。
決して軽い被害ではない。
なら。
それだけの犠牲を払ってでも。
やる理由があったはずだ。
レイは足を止めた。
振り返る。
「ねぇ」
全員を見る。
「この後、何か大きい出来事があったりしない?」
ミントが少し考える。
そして答えた。
「最上位会議が」
「もうすぐ開催されるわ」
レイの目が見開く。
それだ。
レイは確信した。
「レイ?」
フォーサが首を傾げる。
レイは説明する。
「今回の戦争」
「きっと最上位会議を混乱させるためだったのよ」
全員が見る。
レイは続けた。
「これだけランキング者が死んだ」
「こんな被害が出れば」
「能力ランキング制度は必ず動く」
沈黙。
マッドが呟く。
「なるほど……」
フォーサも頷く。
ペーパーは腕を組んだ。
レイは悔しかった。
ディバイドが能力ランキング制度に。
亀裂を入れたかもしれない。
先を越された気持ちだった。
その時。
「じゃあ見に行けばー?」
全員が振り向く。
スエルテだった。
相変わらず軽い。
「え?」
レイが聞き返す。
スエルテは指を前に向けた。
「最上位会議の場所」
「ここから結構近いよー?」
全員が固まる。
「中には入れないけどね」
近い。
つまり。
能力ランキング制度を支配する人間たちが。
すぐ近くにいる。
レイの脳裏に一人の顔が浮かぶ。
カイ兄。
そして。
レイは決めた。
「よし!」
全員を見る。
「最上位会議の近くまで行ってみよう!」
ペーパーが顔を引きつらせる。
「おいおいおい」
嫌な予感しかしない。
フォーサは笑った。
マッドは呆然とする。
ミントは優しく微笑む。
そして。
小さく手を挙げた。
「私も一緒でいいかしら?」
全員が驚く。
ミントは少し寂しそうに笑った。
「もう」
「私に帰る場所はないの」
能力至上主義の国は滅んだ。
ライゼンも。
アクアも。
いない。
「だから」
「仲間にしてくれる?」
レイたちは顔を見合わせる。
そして。
笑った。
「もちろんです!!」
マッドが叫ぶ。
「大歓迎だぜ!」
ペーパーも笑う。
フォーサも飛びついた。
「やったー!」
レイも微笑む。
能力ランキング第81位。
能力『軽度治癒』
ミントが仲間になった。
その時だった。
「あ、僕はならないよ」
スエルテが言う。
空気が止まる。
「は?」
ペーパーが聞き返す。
スエルテは平然としていた。
「あんな会議に近付くなんて」
「正気じゃないもん」
全員が無言になる。
スエルテは手を振った。
「ばいばーい」
そして。
別の道へ歩いていく。
「誰も誘ってねぇよ……」
ペーパーが今までにない殺気を放ち、紙の剣を向けた。
フォーサが睨む。
マッドがつばを吐く。
レイが右手を向ける。
ミントは深いため息をついた。
「彼は昔からあんな感じよ……」
誰も否定しなかった。
こうして。
レイ。
マッド。
フォーサ。
ペーパー。
ミント。
五人は歩き出す。
目指す先は。
最上位会議。
第1位から第10位。
世界最強たちの集会。
これまで出会った怪物たちですら。
霞むほどの化け物たちが待つ場所へ。




