第33話 第27位の実力
ペーパーの額から血が流れる。
熱い。
視界の端を赤い液体が伝う。
「ファングさん……」
呆れた声が聞こえた。
「いきなり能力を使わないでくださいよ」
犬の鼻を持つ男が歩いてくる。
見た目はどこか愛嬌がある。
だが。
ペーパーは理解していた。
こいつも強い。
自分よりずっと。
「お前ら……」
ペーパーが睨む。
「ランキングに入ってるな?」
獣の男が笑った。
「あぁ」
牙を見せる。
「そうだ」
胸を叩く。
「俺は能力ランキング第36位」
地面が震える。
「ファング」
筋肉が膨れ上がる。
鋭い爪。
巨大な牙。
まるで獣だった。
「能力は『獣王化』だ」
圧倒的な威圧感。
ペーパーの背中に冷や汗が流れる。
すると。
隣の男がため息を吐いた。
「わざわざ情報を与える必要はない気がしますがね」
冷たい目。
感情が感じられない。
「どうせ殺すんですから」
淡々と言った。
ペーパーは息を呑む。
男は続けた。
「能力ランキング第67位」
軽く頭を下げる。
「トレイルです」
そして。
鼻を指差した。
「能力は『嗅覚追跡』」
第36位と第67位。
ペーパーの顔が歪む。
勝てない。
正直そう思った。
だが。
死ねない。
ここで死ぬわけにはいかない。
レイたちを残して。
ペーパーは大量の紙をばら撒く。
紙。
紙。
紙。
紙。
空を覆う。
そして。
一斉に破れた。
紙吹雪。
視界が真っ白になる。
「チッ」
ファングが舌打ちする。
「目くらましか」
その時。
トレイルが迷いなく指を差した。
「そこです」
ペーパーの顔色が変わる。
バレている。
紙吹雪の中。
正確に。
位置を。
「くそっ……!」
額から流れる血。
汗。
焦り。
全部が混ざる。
逃げられない。
あの能力からは。
その瞬間だった。
「トレイル!!」
「かわせ!!」
ファングが叫ぶ。
空が赤く染まる。
大量の火球。
雨のように降ってきた。
ドドドドドドドドドドドドド!!
爆発。
爆発。
爆発。
トレイルが後退する。
ファングも飛び退いた。
「ペーパー、無事か!!」
聞き慣れた声。
ペーパーが振り返る。
思わず笑った。
「お前……」
そこにいたのは。
赤い髪。
赤い服。
能力ランキング第70位。
フレイム。
ペーパーは立ち上がる。
少しだけ。
希望が見えた。
だが。
相手は。
第36位と第67位。
まだ不利だった。
勝ち筋を見つけなければならない。
◇
別の戦場。
ストームは槍を放ち続けていた。
一本。
十本。
百本。
止まらない。
だが。
全て。
土の壁が防ぐ。
ドガガガガガガガガ!!
轟音。
土煙。
それでも。
破れない。
「くそっ!!」
「なんて硬さだ!!」
ストームが叫ぶ。
能力ランキング第27位。
ロア。
強い。
想像以上だった。
ロアは土壁の向こうで呟く。
「強いな」
「第49位」
ストームは歯を食いしばる。
ロアは続けた。
「正直」
「距離を保つので精いっぱいだ」
ストームの目が細くなる。
距離。
そうか。
ロアは決して大柄ではない。
接近戦向きには見えない。
なら。
勝機はある。
ストームは槍を握った。
そして。
笑う。
「変化」
ロアの顔が変わる。
「!?」
ストームの身体が崩れる。
肉体が消える。
一本の槍になる。
さらに。
無数の槍が出現する。
どれが本物か分からない。
「チッ」
ロアが舌打ちした。
巨大な土壁を作る。
ドドドドドドドド!!
槍が突き刺さる。
だが。
その中の一本。
それだけが違った。
ストームだった。
槍から人の姿に戻る。
土壁を駆け上がる。
そして。
飛ぶ。
ロアの目の前へ。
槍を握る。
「とるぞ!!」
「第27位!!」
勝った。
そう思った。
だが。
ロアは動じなかった。
むしろ。
少しだけ笑った。
「ああ」
「やっぱり来た」
その瞬間。
地面から。
巨大な土壁。
二枚。
閉じる。
「なん……」
ストームの言葉は最後まで続かなかった。
ドゴォォォン!!
二枚の土壁が激突する。
血が飛ぶ。
槍が砕ける。
静寂。
ロアは不敵に笑う。
「必ず接近戦を選ぶと思ったよ」
土壁が崩れる。
そこに。
ストームの姿はなかった。
能力ランキング49位。
能力『槍』
ストーム。
死亡。
大合戦は。
まだ始まったばかりだった。
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能力至上主義の国
15位 ライゼン 『雷神化』
25位 アクア 『海王化』
37位 ミラー 『反射障壁』
49位 ストーム 『槍』 死亡
59位 ? 『無能力』
70位 フレイム 『火炎球』
81位 ミント 『軽度治癒』
88位 ペーパー 『紙変形』
96位 スパーク 『光電』
ディバイド陣営
19位 クロエ 『影喰い』
27位 ロア 『地殻操作』
36位 ファング 『獣王化』
67位 トレイル 『嗅覚追跡』
ギル陣営
30位 ギル 『金属融合』
62位 ナギ 『水流操作』
99位 ミスト 『湿度操作』




