第三話 復讐
父が死んだ。
また無罪。
そして補償金。
レイは屍のように生きていた。
能力ランキングは人の命より重い。
特に22位ともなれば、国が守る。
ただの平民は理不尽に殺されても、文句の一つも言えない。
そんなことがあっていいはずがない。
殺す。
そうしてレイの目は殺意に染まった。
◇
レイはブラッドを調べ尽くした。
ブラッドはいつも同じ酒場にいた。
戦争中は最前線で暴れているが、今は休暇中。
大量の酒を飲み、同じ道を通って帰る。
だから罠を張る。
酒に毒を仕込む。
道に爆弾を埋める。
最後はナイフで刺す。
もう死ぬことなんて怖くない。
両親の仇だ。
◇
決行当日。
レイは酒場に先回りしていた。
そこへブラッドが現れる。
レイはフードを深く被って顔を隠す。
ブラッドは酒を注文する。
しばらくして席を立った。
トイレへ向かったのだろう。
レイは急いで近づく。
そして酒に毒を流し込んだ。
すぐに店を出る。
今度は爆弾を埋めた場所へ向かう。
あとは待つだけ。
レイは近くの木の陰に身を隠した。
もし毒が効いているなら。
ブラッドはここには現れない。
現れないことを願った。
◇
ブラッドは現れた。
酒瓶を片手に歩いてくる。
毒が効いていない。
なぜ。
レイは唇を噛んだ。
だが、もう後には引けない。
ブラッドが指定の位置に来る。
今だ。
ドォン!!
爆音が響く。
炎と煙が吹き上がった。
レイは即座に飛び出す。
ナイフを握る。
煙の中へ突っ込む。
人影を見つける。
刺した。
そう思った。
だが。
手首を掴まれていた。
「残念だったなぁ」
煙の向こうでブラッドが笑う。
次の瞬間。
腹に衝撃が走った。
「ぐっ……!」
レイの体が吹き飛ぶ。
地面を転がる。
口から血が噴き出した。
ブラッドがゆっくり近づいてくる。
「んー?」
「お前、あの時のガキじゃねぇか」
レイは震えながら立ち上がる。
「なんで……」
「毒も爆発も効かないの?」
ブラッドは鼻で笑った。
「毒?」
「あぁ。俺は常に黒炎をまとってるからな」
「体に入った毒なんざ勝手に焼け死ぬ」
レイの顔が青ざめる。
ブラッドは続けた。
「爆発は悪くねぇ」
「だがな」
「戦場を何百回も潜り抜けてきた俺には通じねぇなぁ」
絶望。
その言葉しか浮かばなかった。
全て無駄だった。
何も届かなかった。
能力だけじゃない。
こいつ自身が怪物だった。
ブラッドが楽しそうに笑う。
「その顔」
「たまんねぇな!!」
レイの体が震える。
「父親も同じ顔してたぜ!!」
父。
優しかった父。
滅多に帰ってこなかったけれど。
自分を愛してくれていた父。
ブラッドは笑い続ける。
「お前の父親も殺すつもりだったがよぉ」
「自分から死にに来てくれた」
「馬鹿だよなぁ」
レイの頭が真っ白になる。
怒り。
悲しみ。
絶望。
全てが混ざり合う。
ブラッドはつまらなそうにため息を吐いた。
「復讐するならもっと本気でやれ」
「今のお前じゃ無理だ」
そしてレイの頭を乱暴に掴む。
「弱すぎる」
そのまま地面へ叩きつけた。
視界が揺れる。
意識が遠のく。
ブラッドは背を向けた。
「じゃあな」
「次はもう少し楽しませろよ」
そう言って去っていく。
レイは地面に倒れたまま動けなかった。
悔しい。
悔しい。
悔しい。
涙が溢れる。
だが。
その瞬間。
右手が熱を帯びた。
能力『光線』
一ミリしか出ないはずの光。
その光が。
今まで見たこともないほど眩しく輝き始めていた。




