第二十四話 能力者の国
「お前たち、旅の者か?」
門番の兵士が聞いてきた。
「はい」
レイが答える。
兵士はレイたちを見渡した。
「お前たちは能力者か?」
今度はマッドが前へ出る。
胸を張って答えた。
「そうです!」
レイは少し笑う。
随分立派になったものだ。
以前のマッドなら。
きっとこんな風には答えられなかった。
兵士は全員を見る。
レイ。
マッド。
ペーパー。
フォーサ。
「……いいだろう」
「全員入れ」
巨大な門が開かれる。
重い音が響いた。
◇
中へ入った瞬間。
レイたちは足を止めた。
異様な光景だった。
あらゆる場所に訓練施設がある。
能力者同士が戦っている。
炎。
雷。
氷。
様々な能力が飛び交う。
建物の屋上では能力の制御訓練。
広場では模擬戦。
訓練場では集団戦。
まるで国全体が訓練施設だった。
「すごい……」
フォーサが呟く。
「こっちだ」
兵士が歩き出す。
レイたちは後を追う。
しばらく歩き。
たどり着いたのは。
豪華な扉の前だった。
「まさか」
マッドが嫌な予感を覚える。
兵士は平然と言った。
「王の間だ」
「いきなり王様ですか!?」
マッドが叫ぶ。
ペーパーも驚いていた。
レイは少し笑う。
前にも。
こんなことがあった気がする。
兵士が扉を開いた。
そして。
レイたちは息を呑む。
「……!?」
王座には。
大男と大女が座っていた。
だが。
普通ではない。
二人とも異常な威圧感を放っている。
強い。
レイは瞬時に理解した。
ブラッドや。
クロエに近い。
「ようこそ我が国へ」
王が笑う。
それだけなのに。
全員の身体が震えた。
「あらあなた」
女王が苦笑する。
「怖がってるわよ」
王は腕を組む。
「そうか」
少し考える。
そして笑った。
「これからに期待だな」
その言葉で。
少しだけ空気が和らいだ。
王はレイたちを見る。
「お前たちは能力ランキングに入っているか?」
「俺は88位だ」
ペーパーが答える。
王と女王の目が少し変わる。
他の三人は首を横に振った。
「そうか」
王が頷く。
そして。
立ち上がった。
「我が国の目的は!!」
大声が響く。
全員が驚く。
「『最上位会議』に参加できる実力者を育てることだ!!」
レイは目を細めた。
最上位会議。
世界の頂点。
1位から10位までで構成される会議。
世界のあらゆることを決める存在。
「その会議に入りたいってこと?」
レイが聞く。
女王が答えた。
「えぇ」
「国から一人でも入れば」
「世界を牛耳ったも同然だから」
当たり前のように言う。
レイは考える。
この国も結局。
力を求めている。
王は笑った。
「だから!!」
王の声が響く。
「この国は能力者を歓迎する!!」
「可能性がゼロではないからな!!」
王はレイたちを見る。
期待するような目だった。
そして。
「今日は休め」
「話はそれからだ」
レイたちは客室へ案内された。
◇
客室へ向かう途中。
兵士が説明した。
「本日は自由を許可します」
「明日までに決めてください」
「この国の民になるか」
「それとも出ていくか」
感情のない口調だった。
「我々は歓迎しております」
そう言い残して去っていく。
レイたちは部屋へ入った。
しばらく沈黙。
最初に口を開いたのはペーパーだった。
「おいおい」
「まさか民になるのか?」
腕を組む。
フォーサが申し訳なさそうに言う。
「ごめん」
「私、あんまり知らなかった」
マッドが考え込む。
「レイさんが目指す能力ランキング制度の破壊とは」
「真逆ですね……」
真逆。
本当にそうだろうか。
レイは考える。
制度を壊す。
そのためには。
制度を知らなければならない。
そして。
変えるなら。
外からより。
内からの方がいい。
もし。
この国から誰かが最上位会議へ入れば。
制度そのものに異議を唱えられるかもしれない。
何より。
今の自分たちは弱い。
クロエにも。
ギルにも。
届かない。
だから。
答えは決まっていた。
「入ろう」
レイが言う。
全員が驚く。
「私たちは」
「強くならないといけない」
レイは仲間たちを見る。
「これはまたとないチャンスよ」
沈黙。
そして。
マッドが頷く。
「僕も賛成です」
ペーパーが笑う。
「まぁ、面白そうだしな」
フォーサも嬉しそうだった。
こうして。
レイたちは能力者の国の民となった。
まだ誰も知らない。
この国で待ち受ける運命を。
大合戦のことを。




