第209話 決戦の朝
決闘当日。
朝。
快晴。
世界は何故か。
あまりにも静かだった。
◇
レギウスは。
着替えていた。
静かな部屋。
鏡の前。
手に取る。
袴。
上下真っ白。
純白だった。
穢れなき白。
その意味は。
今まで一度も。
穢れたことがない。
傷を負ったことがない。
絶対無敗。
世界最強。
能力ランキング第1位。
その証。
レギウスが静かに袖を通す。
表情は穏やかだった。
だが。
瞳の奥は違う。
覚悟。
決意。
重いものを背負っていた。
ドルガン。
弟。
今日。
決着をつける。
ここで。
応えなければならない。
逃げれば。
世界が壊される。
それだけじゃない。
兄として。
そして。
第1位として。
受けなければならなかった。
その時。
後ろで扉が開く。
妻だった。
そして。
娘。
二人が立っていた。
妻は。
不安そうだった。
顔色が悪い。
娘は。
泣いていた。
涙をこらえきれない。
レギウスは。
二人を見る。
静かに。
優しく。
そして思う。
自分は。
本当は。
普通に生きたかった。
道場を開いて。
弟子を育てて。
好きな人と結婚して。
子供が生まれて。
家族と暮らす。
それでよかった。
それだけで。
十分だった。
だが。
世界が。
それを許さなかった。
レギウスが目を閉じる。
数秒。
深く息を吸う。
そして。
覚悟を決めた。
目を開く。
妻を見る。
娘を見る。
優しく微笑んだ。
そして。
一言だけ。
「行ってきます」
それだけだった。
レギウスは。
静かに家を出た。
◇
レイは。
着替えていた。
静かな部屋。
鏡の前。
服を見る。
何を着る。
少し考える。
だが。
すぐに思った。
服装に意味はあるのか。
今日の戦い。
たった一撃。
それで終わる。
あわよくばレギウスとドルガンの。
相打ちを期待する。
服装なんて。
何でもいい。
だからこそ。
考えた。
何を着たいか。
レイは。
目を閉じる。
思い出す。
あの日。
国を出た日。
全ての始まり。
両親を殺され。
ブラッドを殺し。
能力ランキングを壊すと決め。
旅立った日。
そして。
レイは決めた。
服を手に取る。
旅装束。
昔の服。
生まれ育った国を出た時の服。
原点。
レイが着替える。
静かに。
覚悟を込めて。
着終える。
鏡を見る。
そこにいたのは。
旅立った日の少女。
でも。
違った。
目が違う。
あの日より。
遥かに強く。
遥かに悲しかった。
レイは扉へ向かう。
そして。
部屋を出た。
◇
大広間。
レイ。
フォーサ。
スエルテ。
三人は待っていた。
静寂。
誰も喋らない。
重い空気。
張り詰めていた。
フォーサが。
レイを見る。
スエルテも。
見る。
その服装に。
二人とも。
驚いていた。
旅装束。
意味は分かった。
だが。
何も言わない。
言えなかった。
レイの目。
覚悟が宿っていた。
その時。
低い声。
「待たせたな」
三人が振り向く。
そして。
目を見開いた。
そこにいた。
ドルガン。
服装が違う。
上下真っ黒の袴。
漆黒。
闇のような黒。
その意味。
明白だった。
黒い感情。
嫉妬。
憎悪。
執着。
ドルガンそのもの。
レイ達が息を呑む。
ドルガンの目。
覚悟。
いや。
狂気だった。
その圧力だけで。
空気が変わる。
世界が。
震えるような感覚。
異常。
ドルガンが前を見る。
静かに。
低く言う。
「行くぞ」
それだけだった。
ついに。
始まる。
最後の戦い。
最強と最強。
兄と弟。
世界最強。
世界の支配者。
全ての因縁が。
ここで終わる。
最期の決戦が。




