第208話 最後の覚悟
ドルガンが。
話し終えた。
静寂。
誰も。
すぐには言葉を出せない。
レイ。
フォーサ。
スエルテ。
三人とも。
呆然としていた。
そして。
レイは思う。
この男は。
理解不能な怪物じゃない。
違う。
ただ。
一番になりたいだけ。
それだけの男。
子供のように。
意地を張り。
執着し。
兄を超えたい。
ただそれだけ。
最強最悪の。
駄々っ子。
それが。
ドルガンだった。
同時に。
レイの思考は。
別の場所へ向かう。
能力ランキング制度。
自分が。
破壊したかったもの。
憎み続けたもの。
その創始者。
ドルガン。
そして。
制度の目的。
レギウスを殺すため。
光速を持つ者を探すため。
つまり。
自分を探すためだった。
レイが固まる。
理解する。
ドルガンは。
ずっと。
自分を探していた。
そして。
見つけた。
達成された。
能力ランキング制度の目的は。
終わった。
つまり。
ランキング制度は。
レイによって。
終わった。
なんて皮肉だ。
自分は。
ランキング制度を壊すために。
ここまで来た。
だが。
その存在意義を終わらせたのも。
自分だった。
レイが考える。
……。
第2位ドルガンが。
全て悪かったのか?
彼の話に。
嘘はなかった。
ドルガンは。
能力者を守るため。
能力者が。
無駄に死なないように。
世界を統治した。
能力ランキング制度を作った。
治安も。
きっと。
安定したのだろう。
なら。
私は。
何をしてきた?
何人殺した?
何を壊した?
何を守れた?
レイが。
俯く。
苦しい。
答えが出ない。
その時。
ドルガンが立ち上がる。
静かな声。
「明日は」
「覚悟を決めろ」
それだけ。
ドルガンは去った。
◇
三人は。
部屋へ戻った。
静寂。
重い空気。
誰も。
口を開かない。
時間だけが過ぎる。
その時。
フォーサが。
口を開いた。
拳を強く握る。
震えていた。
「レイ……」
小さな声。
だが。
強い意志があった。
「もうやめよう」
静寂。
つい先日聞いた言葉。
だが。
今回は違った。
フォーサが続ける。
「レギウスを殺す必要なんてない」
涙が浮かぶ。
「彼は何も悪くない」
レイが目を閉じる。
その通りだった。
ドルガンの話では。
レギウスは何もしていない。
能力ランキング制度にも。
関わっていない。
ただ。
ドルガンと。
兄弟でいたかっただけ。
優しい兄。
それだけ。
殺す理由も。
必要もない。
だが。
レイには。
もう分からなかった。
何が正しいか。
何が間違いか。
何を守るべきか。
何を壊すべきか。
全部。
分からない。
脳裏に浮かぶ。
マッド。
ペーパー。
ミント。
クロエ。
失った仲間達。
フォーサが言う。
「もう……疲れたよ」
静寂。
その言葉が。
レイの胸に刺さる。
疲れた。
そうだ。
私も。
疲れた。
心も。
身体も。
全部。
限界だった。
レイは思う。
もう終わりでいい。
全部捨てて。
逃げてもいい。
そう思った。
だが。
脳裏によみがえる。
あの日。
母が。
ブラッドに殺された日。
血。
絶望。
涙。
あの日から。
全部始まった。
レイが拳を握る。
結局。
強者がいるから。
弱者が虐げられる。
この世界は。
変わらない。
ここまで来た。
もう。
止まれない。
今さら。
投げ出せない。
正解なんて。
分からない。
いや。
最初から。
そんなもの。
なかったのかもしれない。
レイが顔を上げる。
フォーサを見る。
優しい目。
そして言う。
「フォーサ」
「私も疲れた」
フォーサが顔を上げる。
レイが。
少しだけ。
微笑んだ。
悲しく。
優しく。
「でも」
レイの瞳に。
強い光が宿る。
「最後までやるよ」
その言葉。
覚悟だった。
全てを背負う覚悟。
フォーサが。
悲しい顔をする。
止められないと。
理解した。
スエルテは。
何も言わない。
ただ。
黙って。
二人を見ていた。




