第204話 歪み
数日が経った。
静かな村。
だが。
異変に気付いた。
近所の人々が。
ドルガンの家を訪ねた。
父の姿が見えない。
嫌な予感。
そして。
扉を開けた。
目に映った光景。
全員が固まる。
そこにいた。
五歳の少年。
ドルガン。
そして。
神話の怪物。
ケルベロス。
巨大な怪物と。
ドルガンは遊んでいた。
笑顔で。
楽しそうに。
まるで。
犬と遊ぶように。
きゃっきゃと。
笑いながら。
遊んでいた。
地面には。
父の骨。
血痕。
静寂。
誰も動けない。
理解不能だった。
急ぎ。
国へ報告が入る。
国は即座に動いた。
ドルガンも。
保護された。
◇
レギウスは。
七歳になっていた。
その日。
国から呼ばれる。
静かな部屋。
偉そうな大人達。
そこで。
事実を知らされた。
父と母が死んだこと。
そして。
弟がいたこと。
さらに。
これから。
弟と一緒に過ごすこと。
静寂。
レギウスは。
複雑だった。
父。
母。
死んだ。
悲しかった。
確かに。
悲しい。
だが。
顔すら。
ほとんど覚えていない。
深い悲しみには。
ならなかった。
それよりも。
弟。
その言葉の方が。
心を動かした。
自分に。
弟がいる。
しかも。
これから。
一緒に暮らせる。
喜び。
不安。
期待。
複雑だった。
その時。
扉が開く。
兵士達が入る。
その後ろ。
一人の少年。
五歳。
だが。
大きすぎた。
レギウスが目を見開く。
異常。
身長。
百五十センチ。
体重。
七十キロ。
だが。
太っていない。
締まっている。
規格外。
五歳児じゃない。
怪物だった。
◇
同じ部屋。
二人だけ。
初めての対面。
静寂。
レギウスが。
先に口を開く。
「君が」
「弟なんだね」
ドルガンは黙る。
レギウスが続ける。
真っ直ぐ。
「お父さんを殺したんだって?」
ドルガンが答える。
あっさり。
「うん」
表情一つ変えず。
「だって」
「俺を愛してなかったから」
レギウスが固まる。
驚いた。
感情。
欠落していた。
普通じゃない。
この弟は。
明らかに。
何かが違う。
だが。
レギウスは。
目を逸らさなかった。
数秒。
考える。
そして。
言った。
「じゃあ」
ドルガンが見る。
レギウスが笑う。
優しく。
「僕が愛するよ」
静寂。
ドルガンの目が。
見開いた。
レギウスを見上げる。
そして。
口元が歪んだ。
そして。
ドルガンが言う。
「それは……」
「楽しみだ」
ドルガンが笑った。
◇
レギウスとドルガンは。
異例の速さで。
兵士として育てられた。
才能。
規格外。
国も理解していた。
この二人は。
国の未来。
そう信じていた。
だが。
周囲の大人達は。
恐怖していた。
レギウスではない。
ドルガンだ。
ドルガンは。
異常だった。
素手。
それだけで。
全てを破壊する。
壁。
鎧。
剣。
槍。
弓。
全部。
素手で壊す。
武器がいらない。
防具もいらない。
何を受けても。
身体には傷一つすらつかない。
さらに。
能力。
『地獄召喚』
異常。
恐れられて当然だった。
誰も近づかない。
避ける。
怯える。
当然だった。
一方。
レギウスは。
普通だった。
普通の七歳。
身体能力も。
普通。
だから。
周囲から見れば。
足手まとい。
ドルガンの方が。
圧倒的だった。
だが。
違った。
レギウスが。
剣を持った瞬間。
全てが変わる。
訓練場。
兵士が構える。
次の瞬間。
サラッ。
小さな音。
静寂。
兵士の武器。
防具。
全部。
塵になった。
一瞬。
跡形もない。
全員が凍りつく。
異次元。
ドルガンが。
その光景を見ていた。
黙って。
じっと。
その目。
感情が宿る。
初めて。
明確な。
黒い感情。
妬み。
嫉妬。
ドルガンは。
初めて理解した。
自分より上がいることを。




