第203話 最強兄弟の始まり
レイが。
ドルガンを見る。
静かな空気。
レイが口を開く。
「作戦は理解した」
ドルガンは黙って聞く。
レイが続ける。
「でも」
「最後に聞きたい」
真っ直ぐ。
ドルガンを見る。
聞けるのは。
今しかない。
「あなたとレギウスに」
「何があったの?」
静寂。
フォーサも。
スエルテも。
黙っていた。
二人も気になっていた。
レギウス。
世界最強。
ドルガン。
世界の支配者。
兄弟。
だが。
二人の間にあるものは。
憎しみ。
執着。
狂気。
自分達には。
到底理解できない関係。
ドルガンが目を閉じる。
数秒。
そして。
口を開いた。
「少し長くなるが……」
◇
小さな国。
田舎だった。
平和で。
穏やかで。
どこにでもある国。
そこに。
一つの家庭があった。
ごく普通の家庭。
父。
母。
そして。
生まれた。
男の子。
レギウス。
普通の赤ん坊だった。
身長。
体重。
何もかも。
普通。
両親は喜んだ。
笑った。
幸せだった。
普通の家族。
普通の未来。
そのはずだった。
だが。
全ては。
レギウスが一歳の時に変わる。
母が。
おもちゃを持ってきた。
空気を入れて膨らむ。
細長いおもちゃ。
剣のような形。
母が笑う。
「ほら、レギウス」
レギウスへ渡した。
次の瞬間。
サラッ。
小さな音。
静寂。
母が固まる。
目を見開く。
周囲。
全てが。
塵になっていた。
壁。
机。
椅子。
玩具。
全部。
消えた。
切断すら見えない。
ただ。
塵。
母の身体が震える。
理解した。
異常。
この子は。
普通じゃない。
そう。
レギウスは。
生まれながらに。
持っていた。
光速の斬撃を。
両親は。
一般人だった。
どうすればいいか分からない。
すぐに。
国へ相談した。
国は即座にレギウスを保護した。
そして。
理解した。
この子は。
国を変える。
世界を変える。
「この子がいれば」
国の上層部が言った。
「我々は最強の国になれる」
そうして。
レギウスは。
国に管理されることになった。
◇
一年後。
母が。
再び身ごもった。
最初は。
喜びだった。
だが。
異変が起きる。
腹が。
異常な速度で膨らむ。
日に日に。
明らかに。
大きくなっていく。
父の顔が青ざめる。
母が苦しむ。
そして。
ある日。
限界が来た。
「痛い!!」
母が叫ぶ。
絶叫。
「痛い痛い痛い!!!」
父が慌てる。
急いで病院へ運ぶ。
医者達が集まる。
回復能力者も呼ばれた。
だが。
無理だった。
胎内の赤子。
異常成長。
速すぎる。
母体が耐えられない。
限界。
母が血を吐く。
そして。
死んだ。
静寂。
その直後。
腹が裂ける。
血。
肉。
そして。
這い出てきた。
赤ん坊。
男の子。
だが。
普通じゃない。
大きい。
身長。
普通の赤ん坊の二倍。
体重。
三倍。
異常な肉体。
怪物だった。
その男の子こそ。
ドルガンだった。
◇
父は。
悲しみの中で。
ドルガンを育てた。
母が。
命を懸けて産んだ子供。
大切な子供。
だが。
同時に。
母を殺した子供。
複雑だった。
父は。
愛そうとした。
何度も。
何度も。
だが。
できなかった。
まっすぐ。
愛せなかった。
◇
五年後。
ドルガンが。
五歳になった時。
事件が起きる。
家。
父とドルガン。
二人だけだった。
静かな日。
何の変哲もない日。
その時。
空間が歪んだ。
ズズズズズ……。
不気味な音。
闇が開く。
父が振り向く。
そして。
固まった。
そこにいた。
神話の怪物。
三つ首。
巨大な獣。
ケルベロス。
ドルガンの能力。
『地獄召喚』
開花したのだ。
父が呆然とする。
理解が追いつかない。
だが。
次の瞬間。
バクン。
鈍い音。
父の頭が。
食われた。
血が舞う。
身体が崩れる。
静寂。
ドルガンは。
その光景を見ていた。
じっと。
数秒。
そして。
きゃっ。
きゃっきゃっ。
笑った。
楽しそうに。
無邪気に。
笑っていた。




