第202話 狂気のドルガン
レギウスに案内され。
レイ達は。
家の中へ入った。
ドルガンは。
大きすぎた。
そのままでは入れない。
四つん這いになる。
無理やり入った。
少し。
滑稽だった。
だが。
誰も笑えない。
中は。
吹き抜けだった。
天井が高い。
広い。
普通の家。
普通のテーブル。
普通の椅子。
あまりにも。
普通だった。
レギウスが座る。
向かい側に。
ドルガン。
だが。
体格差が異常すぎる。
ドルガンだけ。
空間を圧迫していた。
レイ。
フォーサ。
スエルテ。
三人は後ろで立つ。
その時。
足音。
レギウスの妻だった。
静かに。
お茶を置く。
カタ。
優しい香り。
だが。
空気は最悪だった。
奥。
そこには。
娘がいた。
レギウスの娘。
ドルガンを。
強い殺意で睨んでいる。
レイが思う。
家族。
レギウスには。
守るものがある。
静寂。
先に。
ドルガンが口を開いた。
「長話は不要だ」
そう言って。
お茶を持つ。
そして。
一気に飲み干した。
ゴク。
空になる。
次の瞬間。
バキ。
ドルガンの手に。
力が入る。
バキバキ。
カップが砕ける。
さらに。
握る。
粉々。
最後は。
塵になった。
レイが息を呑む。
握力が。
人間じゃない。
ドルガンが言う。
「舞台は整った」
静寂。
殺意。
「お前を殺す」
真正面から。
言い放つ。
レギウスは。
静かだった。
少し目を閉じる。
そして。
小さく言う。
「そうか……」
そして。
目を開いて言った。
「もう」
「やめないか?」
レイ達が目を見開く。
レギウスが続ける。
「俺はお前を」
「殺したくはない」
その瞬間。
ドルガンが立ち上がった。
空気が変わる。
圧。
圧。
圧。
凄まじい。
今まで感じた。
どんな威圧感よりも。
重い。
強い。
恐ろしい。
フォーサが。
膝から崩れた。
「うっ……」
立てない。
レイも。
スエルテも。
息を呑む。
ドルガンが叫ぶ。
「その顔が!!」
怒声。
空間が揺れる。
「その自分が勝てると」
「確信している顔が!!」
「むかつくんだよ!!!!」
絶叫。
静寂。
数秒。
ドルガンが。
呼吸を整える。
そして。
冷たく言った。
「俺は」
「お前を殺して」
「一番になる」
そして。
レイを指差す。
「こいつと一緒にな」
レギウスの視線が。
レイへ向く。
まっすぐ。
静かな目。
そして。
レギウスが言った。
「……残念だ」
悲しそうだった。
本当に。
心から。
悲しい顔。
レイの胸がざわつく。
ドルガンが立つ。
もう話は終わりだった。
去る。
出口へ向かう。
去り際。
一言。
「明日正午」
「約束の地に来い」
それだけ言って。
ドルガンは去った。
レイ達も。
慌てて後を追う。
◇
大広間。
ドルガンが座る。
レイ。
フォーサ。
スエルテ。
三人を見る。
そして。
口を開いた。
「というわけだ」
「明日の正午」
「やるぞ」
ドルガンの顔。
決意。
迷いはない。
兄を殺す。
その顔は。
レイが。
カイを殺すと決めた時と。
同じだった。
レイが聞く。
「作戦は……?」
ドルガンが答える。
「複雑なことはしない」
「俺が突撃する」
「攻撃を受ける」
「そして、次の攻撃までに」
ドルガンがレイを見る。
「お前が光線を放て」
それだけ。
あまりにも。
単純だった。
レイが考える。
レギウス。
能力。
『居合空間』
半径一キロメートル以内。
全てが射程。
そして。
レギウス自身の潜在能力。
斬撃速度。
光速。
無敵。
本来なら。
勝てない。
だが。
唯一。
隙がある。
レギウスが。
攻撃を別方向へ放つ瞬間。
その一瞬だけ。
光線なら届く。
防げない。
光を超える速度が。
存在しないから。
勝負は。
一瞬。
レイがふと思う。
そして。
ドルガンを見る。
「あなた」
「死ぬ気なの?」
フォーサとスエルテも。
ドルガンを見る。
当然だった。
この作戦なら。
最初に斬撃を受けるのは。
ドルガンだ。
あのすべてを塵にする斬撃。
例え一撃でも。
死ぬ。
ドルガンが答える。
「一撃は受けるしかない」
「耐えられるかは……知らん」
レイ達が驚く。
ドルガンが続ける。
「だが」
その瞬間。
上着を脱いだ。
バサッ。
レイ達が固まる。
「な……」
言葉を失う。
ドルガンの上半身。
傷だらけだった。
無数の傷跡。
斬撃。
爪痕。
火傷。
だが。
それ以上に。
目を奪われた。
筋肉。
厚み。
異常だった。
鋼鉄。
いや。
それ以上。
人間の肉体には見えない。
圧倒的。
完成された肉体。
ドルガンが笑う。
獰猛に。
「その一撃を受けるためだけに」
「地獄で鍛え続けた」
静寂。
狂気だった。
『地獄召喚』
能力だけでも。
世界を支配できる。
それなのに。
ドルガンは。
違った。
兄を殺すためだけに。
何十年も。
地獄で。
鍛え続けていた。
ただ。
一撃を受けきるために。
ドルガンの瞳が。
鋭くなる。
「明日」
「必ず兄貴を殺す」




