第201話 宣戦布告
レイは。
ドルガンの城へ戻っていた。
早歩き。
迷いなく。
だが。
心の中は荒れていた。
怒り。
殺意。
苛立ち。
感情が渦巻く。
城内を進む。
そして。
大広間の扉を。
勢いよく開いた。
バン!!
そこにいた。
ドルガン。
座っている。
悠然と。
まるで何事もなかったように。
レイの怒りが爆発した。
「どういうつもり!?」
怒声が響く。
ドルガンが首をかしげる。
本気で分からないような顔。
「何がだ?」
とぼける。
レイがさらに怒鳴る。
「あの怪物!!」
「あなたでしょ!!」
静寂。
ドルガンが答えた。
短く。
「そうだ」
レイが固まる。
静寂。
そして。
ドルガンが言った。
「タイミングの重要性は理解したか?」
その一言。
レイの思考が止まる。
言葉を失う。
理解した。
こいつは。
ただ。
タイミングの重要性を教えるためだけに。
アルディオを生かした。
自分と戦わせた。
勝っても。
負けても。
レイだけは生かす。
そして。
最後はアルディオを始末する。
全て。
計算だった。
レイの怒りが冷えていく。
怒りすら通り越す。
目の前の男。
理解不能。
最も自分勝手で。
最も理不尽な怪物。
ドルガンが立ち上がる。
圧倒的威圧感。
「さて」
「準備は整った」
ドルガンがレイを見る。
「俺と一緒に」
「レギウスを殺すぞ」
静寂。
レイは考える。
残る最上位は二人。
レギウス。
ドルガン。
現時点で。
ドルガンには勝てない。
なら。
どうする。
二つの案が出る。
一つ。
ドルガンを裏切り。
レギウスにドルガンを殺させる。
だが。
判断材料が足りない。
このドルガンを。
レギウスが本当に殺せるか分からない。
能力ランキング第1位。
世界最強。
その実力を。
見極める必要がある。
二つ。
レギウスがドルガン以上なら。
まずはドルガンと共闘してレギウスを倒す。
そして最後に。
ドルガンを殺す方法を考える。
レイは理解する。
どのみち。
今は協力するしかない。
レイが小さく頷く。
ドルガンが笑う。
「よし」
「あの仲間二人を連れてこい」
「すぐ行くぞ」
レイが聞く。
「どこに……?」
ドルガンが笑った。
凶悪に。
「決まってるだろ」
「レギウスに宣戦布告しに行く」
レイの目が見開く。
◇
ドルガンに連れられ。
レイ。
フォーサ。
スエルテ。
三人は黙ってついていった。
長い道。
静かな空気。
やがて。
目的地に着く。
レイが目を細める。
そこにあったのは。
大きな城でも。
巨大な屋敷でもない。
一軒家。
少し大きめ。
だが。
普通の家だった。
レイが固まる。
「ここが……?」
フォーサも驚く。
スエルテも目を丸くする。
庭があった。
畑もある。
そこには。
スイカ。
大きく実っている。
平和。
あまりにも平和な光景。
そして。
庭に。
一人の男がいた。
「ふぅ……」
汗を拭う。
スイカを収穫していた。
ただのおじさん。
そう見えた。
レギウス。
世界最強。
ドルガンが三人へ言う。
「お前達」
「見てろ」
次の瞬間。
ズズズズズズ……。
不気味な音。
空間が歪む。
闇が開く。
そこから。
四つの影。
現れる。
ケルベロス。
ガルーダ。
サキュバス。
デュラハン。
神話の怪物。
四体。
圧倒的殺気。
レイ達が息を呑む。
ドルガンが命じる。
「行け」
四体が動いた。
一斉に。
レギウスへ襲いかかる。
速い。
凄まじい速度。
必殺。
誰も避けられない。
その瞬間。
レギウスがスイカを置く。
そして。
サラッ。
小さな音。
レイの瞳が見開く。
「え……?」
四体が。
塵になっていた。
跡形もなく。
消えた。
静寂。
レイの思考が止まる。
自分がどれだけ成長しても。
見えなかった。
何も。
レギウスが。
ゆっくり振り向く。
汗をぬぐう。
静かな目。
ドルガンを見る。
そして。
口を開いた。
「随分な挨拶だな」
「ドルガン」
静かな声。
怒りはない。
ドルガンが。
ニヤリと笑う。
獰猛に。
そして。
一歩前へ出た。
「兄貴」
「最後の会話をしに来たぞ」
静寂。
風が吹く。
世界が静まり返る。
ついに。
始まる。
最後にして。
最強の戦いが。




