第197話 非情の第2位
レイとフォーサは。
泣いていた。
エンエンと。
声をあげて。
子供のように。
いや。
二人はまだ。
子供なのだ。
マッドの死。
その傷は深かった。
あまりにも。
深すぎた。
スエルテだけが。
前を見ていた。
警戒する。
アルディオではない。
神話の怪物達。
ケルベロス。
ガルーダ。
サキュバス。
デュラハン。
そして。
こちらをずっと見ている。
巨大な男。
ドルガン。
能力ランキング第2位。
どう見ても異常。
怪物達以上に。
異常だった。
スエルテは動けない。
下手に動けば死ぬ。
今できることは一つ。
待つこと。
レイとフォーサが。
立ち直るのを。
ただ待つしかなかった。
◇
しばらくして。
泣き声が止まる。
レイとフォーサが。
ようやく顔を上げた。
目は赤い。
腫れていた。
スエルテが小さく聞く。
「だいじょうぶー?」
だが。
返事はない。
二人の顔。
そこにあったのは。
悲しみではない。
絶望だった。
心が。
完全に沈んでいた。
スエルテが考える。
どうする。
どう声をかける。
その時。
低い声。
「おい」
スエルテが振り向く。
ドルガンだった。
いつの間にか。
すぐ後ろに立っている。
スエルテの背筋が凍る。
ドルガンが聞く。
「お前は」
「この二人の仲間か?」
静寂。
スエルテは迷う。
答えを間違えれば。
死ぬ。
本能がそう告げていた。
だが。
ドルガンが続ける。
「お前は絶対に死なん」
「だからさっさと言え」
スエルテが目を細める。
意味が分からない。
なぜそんなことが言える。
だが。
ここで嘘は危険。
そう判断した。
スエルテが答える。
「味方……だよ」
静寂。
ドルガンが頷く。
「よし」
「その二人を連れて」
「俺の城へ来い」
命令だった。
拒否権はない。
◇
医療室。
レイ。
フォーサ。
スエルテ。
三人は治療を受けていた。
静かだった。
レイとフォーサは。
ずっと下を向いている。
涙は止まらない。
スエルテは。
気まずそうに。
小さな音で。
ポテチを食べていた。
パリ。
パリ。
妙に音が響く。
その時。
扉が開いた。
ドルガンが現れる。
三人を見る。
そして短く言う。
「お前達」
「大広間へ来い」
それだけだった。
三人は立つ。
黙って。
ドルガンの後ろを歩く。
重い空気のまま。
大広間へ向かった。
◇
大広間。
広かった。
静寂。
中央。
レイ。
左にフォーサ。
右にスエルテ。
そして。
向かい側。
ドルガンが座っていた。
圧倒的存在感。
ドルガンが口を開く。
「さて」
「気付けば」
少し間を置く。
「残った能力ランキング者は四人になった」
静寂。
ドルガンが指を折る。
「第1位レギウス」
「第2位ドルガン」
「第14位アルディオ」
「第59位スエルテ」
スエルテが苦笑する。
「なんか急に紹介されたねー」
誰も反応しない。
クロエ、ディオン、スライムも死んだ。
だがレイもフォーサも。
もう思考する脳みそも働いていなかった。
ドルガンが続ける。
「レイ」
「お前には」
「第1位を殺すために」
「協力してもらいたいと頼んだな」
ドルガンの目が鋭くなる。
「覚えているか?」
静寂。
だが。
レイは答えない。
俯いたまま。
動かない。
ドルガンは気にしない。
続ける。
「だが」
「今のお前では足りん」
空気が張り詰める。
「もう少し強くなってもらう必要がある」
静寂。
そして。
ドルガンが言い放つ。
「だから」
「アルディオを殺せ」
その言葉が響く。
だが。
レイとフォーサは。
反応しない。
アルディオ。
知らない。
誰なのか。
分からない。
ドルガンが見抜く。
そして。
一言付け足した。
「あいつは」
「マッドを殺した男だぞ?」
その瞬間。
レイの顔が上がる。
フォーサも。
目が見開く。
空気が変わる。
殺意。
悲しみ。
憎しみ。
全てが混ざる。
ドルガンは黙って見ていた。
そう。
彼は知っていた。
レイを強くする方法を。
悲しみ。
怒り。
憎しみ。
それが。
レイを覚醒させる。
だから。
あえて。
アルディオを生かしていた。




