第191話 終わらない悪夢
森が止まった後。
レイ達は足を止め。
座っていた。
全員。
息が荒い。
死線だった。
スエルテが笑う。
いつもの調子で。
「助かったよー」
力の抜けた声。
その笑顔に。
レイ達も少しだけ安堵した。
だが。
レイはすぐに立ち上がる。
休まない。
止まらない。
レイの目は。
すでに次を見ていた。
「マッドとクロエを助けなきゃ!」
叫ぶ。
そして。
走り出した。
迷いはない。
スエルテが後を追おうとする。
「僕も行くよー」
その時だった。
「待て、スエルテ!!」
スカイが叫ぶ。
スエルテが振り向いた。
「どうしたの?」
スカイが真剣な顔で言う。
「どうしたもこうしたもない」
苛立っていた。
「もう彼女達から離れよう」
「危ない」
スカイの言葉は当然だった。
やっと。
死地から抜けた。
生き残れた。
これ以上。
危険に飛び込む意味はない。
スエルテが少し考える。
珍しく真面目な顔。
そして言った。
「でもさー」
少し空を見た。
「彼女たちと一緒にいたほうが」
「いい気がするんだよねー」
スカイが呆れる。
ため息。
「意味が分からない」
首を振る。
そして。
静かに言った。
「じゃあ」
「俺とお前はここまでだ」
静寂。
スエルテが少し残念そうに笑う。
「そっかー」
「わかった」
軽く手を振る。
いつもの笑顔。
「ばいばい」
そう言って。
スエルテも走り出した。
レイ達を追って。
スカイは一人残る。
心の中で繰り返す。
これでいい。
これで正しい。
生きるためだ。
慎重に。
そう。
慎重に生きなければ……
その瞬間。
グサッ。
何かが。
胸を貫いた。
スカイの目が見開く。
「……な」
痛み。
心臓。
ゆっくり視線を落とす。
木の枝。
心臓を貫いていた。
声が出ない。
血が溢れる。
崩れ落ちる。
能力ランキング第76位。
スカイ。
死亡。
スカイの後ろ。
白いワンピース。
幼い少女が立っていた。
ノア。
ノアが冷たく笑う。
「植物をなめすぎよ」
レイの光線で開いた穴。
そこを。
植物が補完していた。
ノアがジョウロを持つ。
殺意。
狂気。
瞳に宿る。
静かに呟く。
「まだ終わってないわ」
そう。
ガーデンは。
滅んでいない。
◇
「はぁ……」
「はぁ……」
荒い呼吸。
近くの影が揺れる。
そこから。
クロエが現れた。
ゆっくり。
苦しそうに。
地面へ降りる。
生きていた。
男の攻撃。
直撃寸前。
影の中へ逃げ込んだ。
ギリギリ。
避けた。
だが。
冷や汗が止まらない。
なんて力。
恐ろしすぎる。
クロエが前を見る。
男は静かに歩き出す。
周囲の空間が。
崩れていた。
存在が壊れている。
異常。
クロエが歯を食いしばる。
生きる希望はない。
正直。
そう思った。
だが。
脳裏に浮かぶ。
アストラの言葉。
自由になれ。
ディオンの言葉。
お前は生きろ。
クロエの目に覚悟が宿る。
男を見る。
あれは恐らく。
能力ランキング第14位。
アルディオ。
だが。
知っているアルディオじゃない。
違う。
明らかに異常。
最上位級。
クロノよりも。
恐ろしい。
どうする。
どう戦う。
クロエが考えた。
その時。
遠くから声。
「クロエさん!!」
マッドだった。
クロエの顔が変わる。
「ばか……!!」
思わず叫ぶ。
遅かった。
アルディオが振り向く。
マッドとクロエを見る。
そして。
口元が歪む。
笑った。
「まだ生きてたか」
マッドの顔が青ざめる。
しまった。
そう顔に書いてあった。
アルディオが右手を上に上げた。




