第188話 第11位と第3位の決着
クロノは。
空中都市が割れる前に。
脱出していた。
地面へ降り立つ。
そして。
振り返る。
空を見上げた。
割れていく。
空中都市。
信じられない光景だった。
静寂。
クロノが呟く。
「ふぉっふぉっふぉ……」
「なんとも恐ろしい力じゃ」
ディオン。
あの男。
無能力者。
なのに。
最上位に届いていた。
クロノが踵を返す。
去ろうとした。
その時だった。
ゾワッ。
悪寒。
全身が凍る。
人生で一度だけ。
感じたことがある感覚。
初めて。
第2位と会った時。
あの時と同じ。
死の気配。
クロノが振り向く。
そして。
目を見開いた。
そこにいたのは。
ディオン。
立っていた。
血だらけ。
全身が壊れていた。
皮膚はえぐれ。
肉が裂け。
至る所から骨が見えている。
右腕は。
完全に潰れていた。
原形すらない。
なぜ立てる。
なぜ動ける。
理解できない。
クロノが声を震わせる。
「おぬしは……」
「なんなんだ……」
ディオンが笑う。
血を吐きながら。
それでも。
笑った。
「俺は……」
一歩。
前へ出る。
「最強の無能力者だ!!」
次の瞬間。
左手が動く。
速い。
クロノの反応より。
先だった。
ドゴン。
鈍い音。
クロノの頭部が。
粉砕された。
能力ランキング第3位。
クロノ。
死亡。
クロノの身体が崩れる。
地面へ倒れた。
静寂。
ディオンがそれを見る。
ゆっくり。
息を吐く。
視界が揺れる。
限界だった。
ディオンが空を見る。
そして。
小さく呟いた。
「ドルガン様……」
血が落ちる。
「どうか」
「悲願を達成してください」
それが。
最後だった。
能力ランキング第11位。
ディオン。
死亡。
◇
レイ達は。
必死に逃げていた。
マンチニールの森から。
毒の枝。
毒の果実。
毒の樹液。
全てが死を示していた。
レイが焦る。
「どうすればいいの!?」
叫ぶ。
だが。
答えはない。
スエルテも。
スカイも。
フォーサも。
黙っていた。
触れられない。
燃やせない。
相性最悪。
しかも。
ノアから。
どんどん離される。
このままじゃ。
倒せない。
その時。
スエルテの目が変わった。
何かを思いつく。
「レイ」
レイが振り向く。
「君」
「細い光線は放てないの?」
レイが目を細める。
「細い光線?」
スエルテが頷く。
「とにかくノアに当てればいいんでしょ?」
静かな声。
いつもの軽さが消えていた。
「だったら」
「マンチニールを極力焼かなければいい」
レイの目が見開く。
確かに。
ノアの位置は分かっている。
問題は。
マンチニールの森。
これまで。
レイはひたすら。
太い光線を放っていた。
広範囲殲滅。
だが。
違う。
元々は。
1ミリ。
1ミリの光線だった。
レイが息を呑む。
できる。
いや。
出せる。
レイが確信した。
「出せる」
スエルテが笑った。
いつもの。
ゆるい笑顔。
「じゃあ」
軽く手を振る。
「よろしくねー」
次の瞬間。
スエルテが走った。
マンチニールの森へ。
一直線。
「スエルテ!?」
レイが叫ぶ。
だが。
スカイがレイの肩を掴む。
真剣な顔。
「奴は囮になった!」
レイが固まる。
スカイが叫ぶ。
「レイ!!」
「お前が一撃で決めろ!!」
レイが息を呑む。
理解した。
スエルテ。
見た目も。
言動も。
最悪だった。
やる気もない。
だらしない。
でも。
違った。
本当は。
誰よりも冷静で。
誰よりも頭が回る。
そして。
誰よりも勇敢かもしれない。
ライゼン。
アクア。
あの二人以上に。
レイが目を閉じる。
深呼吸。
ノアの位置を思い出す。
集中。
極限まで。
右手を構える。
光が集まる。
細く。
鋭く。
一点へ。
研ぎ澄ます。
そして。
レイが目を開く。
静かに。
言った。
「終わりよ」
次の瞬間。
1ミリの光線を。
放った。




