第185話 三つの絶望
マンチニール。
世界で最も危険な木。
樹液に触れるだけで。
皮膚が焼ける。
深刻な角結膜炎。
失明。
木そのものが猛毒だった。
レイが目を細める。
「焼けば同じことでしょ」
レイが右手を構える。
だが。
スエルテが叫んだ。
「だめだ!!」
全員が見る。
スエルテが焦った顔で続ける。
「焼けば有毒の煙が出る!」
「失明して呼吸障害で死ぬよ!!」
静寂。
レイ達が固まる。
フォーサも青ざめる。
スカイがマンチニールの森を見る。
嫌な汗が流れる。
ノアが感心したように言う。
「よく知ってるね」
スエルテが答える。
「昔、本で読んだことがあるんだ」
ノアが笑った。
嬉しそうに。
狂気的に。
「へぇ」
そして。
小さく手を振る。
「じゃあ」
「頑張ってね」
次の瞬間。
ズズズズズズ……。
マンチニールの森が。
動き出した。
枝が伸びる。
果実が揺れる。
毒の森。
死そのものが。
レイ達へ迫った。
◇
道場。
血の匂い。
焦げた匂い。
三人は。
血反吐を吐きながら。
森と戦っていた。
隕石を砕いた直後。
新しい森が迫っていた。
フェルが剣を振るう。
「このままでは……!」
必死だった。
腕は血まみれ。
限界が近い。
フレアが前へ出る。
最も軽傷。
だが。
それでも満身創痍。
「俺が何とかする」
赤い剣で。
木を斬る。
焼く。
後方。
ボムが倒れていた。
血を流し。
意識がない。
絶望的。
だが。
それでも崩れない。
これが。
レギウス直属の剣士。
その時。
森の奥で。
ゼクトが笑った。
「限界が近そうだな」
冷たい目。
「とどめを刺すか」
少し回復したゼクトが。
足元の隕石の破片へ触れる。
能力発動。
破片が浮かぶ。
ゆっくり。
空へ。
能力。
『隕石落下』
ゼクトが笑う。
落下先は一つ。
「終わりだ」
ボム。
気絶した男へ。
隕石の破片が落ちた。
◇
マッド。
兵士達。
悲しみに暮れていた。
スライムが死んだ。
戦場の支柱。
最重要戦力。
失った。
兵士達の顔に絶望が浮かぶ。
その時。
リペアが呟いた。
「なんてこと……」
動揺していた。
リンク。
ガーデンの要。
最重要人物。
第1位も第2位も。
倒すために必要だった男。
そのリンクが死んだ。
リペアの思考が乱れる。
ノアに。
どう報告する。
どうすれば。
混乱。
その時だった。
ミシ。
異音。
森が崩れた。
リペアが顔を上げる。
違う。
森だけじゃない。
地面。
岩。
空間。
全て。
存在そのものが。
崩れていた。
バラバラに。
壊れていく。
兵士達が固まる。
マッドも。
言葉を失った。
一人の男が。
歩いてくる。
静かに。
左手で頭を掴む。
右手を前へ向ける。
異質。
あまりにも異質。
リペアが震える。
「なに……?」
男が顔を上げる。
冷たい目。
感情がない。
そして。
口を開いた。
「ノアは」
「どこだ」
一歩。
また一歩。
歩く。
「仲間だろ?」
リペアを見る。
圧倒的威圧感。
リペアが固まる。
そして。
震えながら言う。
「し、知らな……」
最後まで言えなかった。
男が右手を上げる。
その瞬間。
地面が崩壊した。
リペアごと。
空間ごと。
消える。
跡形もなく。
能力なんて関係なく。
能力ランキング第64位。
リペア。
死亡。
静寂。
誰も動けない。
男だけが立っていた。
能力ランキング第14位。
アルディオ。
第9位モルドを殺した男。
能力。
『核崩壊』
存在を。
根本から崩壊させる。
最悪の能力。
新たな怪物が。
現れた。




