第180話 止まらぬ絶望
隕石を見上げる三人。
巨大だった。
空を埋め尽くす。
絶望。
圧倒的。
逃げ場はない。
フェルが叫んだ。
「やりますよ!! 二人とも!!」
怒号。
フェルらしくない声だった。
長年共に戦ってきた。
フレアも。
ボムも。
こんなフェルは初めてだった。
二人が我に返る。
フレアが剣を構える。
「やるしかない」
静かな声。
だが。
覚悟は決まっていた。
ボムが前へ出る。
歯を食いしばる。
「俺が先に一撃を放つ」
拳を握る。
「後は任せたぞ」
フェルが頷く。
すぐに指示を飛ばす。
「割れた後は私が斬撃で小さくします!」
冷静だった。
極限でも頭は回る。
「フレアは最後」
「道場へ落ちてくるものだけ焼き切ってください!」
フレアが頷く。
「ああ」
「任せろ」
三人が前を見る。
隕石。
巨大な死。
だが。
逃げない。
彼らは。
レギウス直属の剣士。
その実力を。
今こそ見せる時。
◇
マッド。
スライム。
兵士達。
森と戦っていた。
押していた。
戦況は完全にこちら優勢だった。
その中心にいたのは。
マッド。
「この程度!!」
叫ぶ。
目が鋭い。
ハイになっていた。
能力。
『泥』
広範囲。
超広範囲。
大地が泥に変わる。
森が沈む。
木々が飲み込まれる。
動きが止まる。
そこへ。
スライムと兵士達が突っ込む。
拳。
次々に破壊していく。
兵士達は驚いていた。
状況を有利に進めているのは。
一人の少年。
その少年が。
この戦場を支配していた。
マッドは笑う。
興奮していた。
自分が強くなっている。
覚醒している。
それが分かった。
嬉しかった。
だが。
スライムは違った。
冷静に見ていた。
マッドは。
力の覚醒に。
精神が追いついていない。
危うい。
彼は。
精神的に強くない。
レイ。
フォーサ。
クロエ。
ディオン。
彼らよりも。
明らかに脆い。
だが。
力だけは。
ランキング上位者級。
危険だった。
スライムが口を開く。
「マッドぉぉ……少し落ち着……」
その時だった。
「ぐわああああ!!」
兵士の悲鳴。
全員が振り向く。
一人。
二人。
三人。
兵士達が。
次々に木に貫かれていた。
「なにがぁぁぁぁ!?」
スライムが目を見開く。
周囲を見る。
異常だった。
破壊したはずの木。
折れたはずの枝。
それらが。
音を立てて。
元に戻っていく。
ミシ。
ミシミシ。
再生。
ありえない。
その瞬間。
グサッ。
スライムの腹部に。
枝が突き刺さった。
「……!」
スライムが目を見開く。
破壊したはずの木。
復活していた。
「何の能力だぁぁぁ!?」
スライムの身体が崩れる。
能力。
『粘液』
液状化。
致命傷を避ける。
間一髪だった。
マッドが叫ぶ。
「なんですか!?」
その時。
一人の女が現れた。
静かに。
森の中から。
「やるわね」
「スライム」
冷たい声。
スライムを見る。
次に。
マッドを見る。
「あと」
口角が上がる。
「そこの少年」
能力ランキング第64位。
リペア。
女が静かに立つ。
能力。
『高速再生』
本来は。
自身を再生する能力。
だが。
覚醒の果てに。
周囲すべてを再生できるようになった。
壊れた木。
折れた枝。
全て元通り。
森そのものが。
蘇る。
リペアが手を広げる。
笑った。
「思い知れ」
「ガーデンを!!」
次の瞬間。
森が。
再び動き出した。
無数の木々が。
一斉に襲いかかる。
絶望が。
上書きされた。




