第177話 最上位の影喰い
ディオンは。
レイ達と兵士を引き連れて。
迫る森の元へ来ていた。
地響き。
ズズズズズ……
大地が揺れる。
木々が蠢く。
森そのものが。
こちらへ向かっていた。
ディオンが目を見開く。
「これは……」
兵士達がざわつく。
顔が青ざめる。
誰もが理解していた。
異常だと。
フォーサが呟く。
「こんなの……」
「どうすれば……」
恐怖が広がる。
だが。
レイは驚かなかった。
静かだった。
むしろ。
森ではなく。
周囲を見渡している。
探していた。
ノアを。
能力ランキング第5位。
最上位を。
もう一人。
驚いていない女がいた。
クロエ。
その瞳は冷静だった。
クロエが前に出る。
「私が止めるわ」
静かな声。
マッドが焦る。
「危険です!!」
止めようとする。
ディオンも言う。
「クロエ、よせ」
無茶だ。
いくら覚醒しても。
相手は森そのもの。
だが。
クロエは振り返らない。
代わりに。
フォーサを見る。
「フォーサ」
「力を貸して」
フォーサが息を呑む。
そして。
頷いた。
「うん!!」
仲間に頼られて喜ぶフォーサ。
能力発動。
『強制覚醒』
緑の光が。
クロエを包む。
光が脈打つ。
力が流れ込む。
クロエが目を閉じる。
そして。
能力を発動した。
『影喰い』
次の瞬間。
森全体の影が。
大きく膨れ上がった。
兵士達が息を呑む。
地面が黒く染まる。
影が広がる。
どこまでも。
どこまでも。
そして。
影の中から。
現れた。
巨大な獣。
影の怪物。
兵士達が絶句する。
でかい。
あまりにも。
大きすぎた。
以前。
建物を飲み込んだ影。
そんなものではない。
比較にならない。
森ごと喰らう怪物。
それが。
そこにいた。
獣が口を開く。
闇そのものみたいな口。
次の瞬間。
獣の影が。
森へ食らいついた。
ゴオオオオオオ!!
森が消える。
木々が。
土が。
根が。
全て。
飲み込まれる。
圧倒的。
森が。
丸ごと。
喰われた。
静寂。
誰も動けない。
兵士達が固まる。
ディオンも。
マッドも。
フォーサも。
言葉を失った。
レイだけが。
静かに見ていた。
クロエが肩で息をする。
「はぁ……」
「はぁ……」
額に汗。
疲労。
クロエは。
アストラの死を超えた。
絶望を超えた。
そして。
フォーサの力を借りることで。
最上位に。
追いついていた。
ディオンが呟く。
「クロエ……」
「お前……」
だが。
クロエは冷静だった。
息を整えながら言う。
「一時しのぎよ」
「また新しい森が来るわ」
全員が顔を上げる。
「先手を打たないと……」
ディオンが頷く。
理解した。
守っているだけでは勝てない。
攻めなければ。
ディオンが叫ぶ。
「全員分かれろ!!」
兵士達が反応する。
「ノアを見つけ次第」
「直ちに殺せ!!」
◇
道場の前。
森が迫る。
木々が唸る。
殺意を持って。
進んでくる。
その前に。
三人の男が立っていた。
一人目。
ひげを綺麗に整え。
ポマードで固めた紳士の男。
剣を振る。
「はっ」
斬撃。
音が消える。
次の瞬間。
森が裂けた。
能力ランキング第17位。
フェル。
能力『音速斬撃』
二人目。
赤い剣を持つ男。
剣を振る。
森が燃える。
一瞬で。
木が炭になった。
能力ランキング第48位。
フレア。
能力『高熱刃』
三人目。
鉢巻を巻いた男。
豪快に笑う。
「オラァ!!」
剣を振り抜く。
ドガァァン!!
爆発。
周囲一帯が吹き飛ぶ。
能力ランキング第69位。
ボム。
能力『爆発刃』
三人は強かった。
ランキングだけでは測れない。
彼らは。
能力ランキング第1位。
レギウス直属。
道場の剣士達。
レギウスに鍛えられた。
化け物達だった。
今のランキングなど。
まるで意味を持たない。
それほど。
強い。
だが。
それでも。
ガーデンにとっては。
許容範囲内だった。




