第175話 ガーデン
「ふんふふーん♪」
一人の少年が。
鼻歌を歌いながら。
食事をしていた。
穏やかな昼。
静かな家。
どこにでもありそうな光景。
だが。
少年は普通ではない。
能力ランキング第10位。
ハルシ。
最上位。
能力。
『幻覚支配』
相手に幻覚を見せる能力。
だが。
ただ見せるだけではない。
現実と幻覚の境界を壊す。
気付いた時には。
死んでいる。
嵌め殺し。
それが彼の戦い方だった。
ハルシがため息をつく。
「つまらないなー」
机に頬杖をつく。
退屈そうだった。
ランキング者が。
どんどん死んでいく。
世界は大きく動いている。
だが。
ハルシは動かない。
昔。
人を弄びすぎた。
結果。
ドルガンに殺されかけた。
それ以来。
大人しくしていた。
その時だった。
「暇そうだね、ハルシ」
ハルシが振り向く。
そこにいた。
白いワンピースの少女。
手にはジョウロ。
静かに立っている。
能力ランキング第5位。
ノア。
ハルシが笑う。
「やあ、ノア」
気軽な声。
「どうしたの?」
ノアは無言。
そして近づき。
ゆっくり指をさす。
野菜。
ハルシの食卓にある。
サラダだった。
ハルシが首を傾げる。
「食べたいの?」
その瞬間。
ノアの雰囲気が変わった。
目が開く。
口が動く。
異常な速度で。
喋り始めた。
「食べたい?」
「何を言っているの?」
「逆でしょ?」
ノアの目が狂気に染まる。
「なんで人間が植物を食べるの?」
「植物だって生きている」
「食物連鎖の最底辺にされている」
「一番虐げられているのは植物なの」
「誰もそれを気にしない」
「許せない」
ハルシが固まる。
いつものノアではない。
やばい。
本能が告げた。
危険。
即座に能力発動。
『幻覚支配』
だが。
何も起きない。
ハルシが目を見開く。
「あれ……?」
能力が発動しない。
その瞬間。
ノアがジョウロを傾けた。
水が落ちる。
野菜へ。
野菜が動く。
うねうねと。
生き物みたいに。
ハルシの目が見開く。
「なっ……」
遅かった。
野菜が飛ぶ。
目。
耳。
口。
一瞬で侵入した。
「んぐっ!?」
ハルシがもだえる。
身体が震える。
中から。
掻き回される。
破壊される。
「や……め……」
ドサッ。
倒れた。
動かない。
静寂。
能力ランキング第10位。
ハルシ。
死亡。
ノアが微笑む。
優しく。
狂気的に。
「ありがとう、植物」
「ありがとう、リンク」
その時。
奥から男が現れた。
能力ランキング第33位。
リンク。
能力。
『魂接続』
死者の能力のうち。
一つを使用できる。
異常な能力。
最強クラス。
だが。
大きな制約がある。
一度選んだ能力は。
二十年間。
変更できない。
だから。
彼は待っていた。
本当の最強能力を。
それは。
能力ランキング第4位。
アストラの。
能力。
『能力無効』
リンクが静かに笑う。
「ようやくだ」
長かった。
本当に。
長かった。
ノアが笑顔で両手を広げる。
「さぁ」
「植物の世界を作りましょう」
「私達は」
その時。
さらに二つの影が現れる。
一人。
能力ランキング第20位。
ゼクト。
もう一人。
能力ランキング第64位。
リペア。
四人。
揃った。
ノアが微笑む。
「ガーデン」
ディバイドの崩壊によって。
新たな怪物達が生まれた。
最悪の組織。
ガーデン。
彼らの目的は。
能力ランキングの支配でもない。
ランキング制度の破壊でもない。
そんな小さいものではない。
ノアが静かに笑う。
狂気に満ちた瞳。
「人間はいらない」
「動物もいらない」
ジョウロから水が落ちる。
植物が揺れた。
「この世界に必要なのは」
「植物だけ」
ノアが両手を広げる。
「世界を滅ぼす」
最悪が。
動き出した。




