第174話 五人目
クロエが目を覚ました。
白い天井。
静かな部屋。
また。
この景色。
見慣れたはずだった。
だが。
今回は違う。
何もかも。
違った。
アストラ。
姉を失った。
その事実が。
ゆっくり。
確実に。
クロエの胸を抉る。
「っ……」
涙が溢れた。
止まらない。
頬を伝う。
声にならない。
苦しい。
痛い。
胸が。
壊れそうだった。
その時。
「あなたも失ったのね」
クロエが固まる。
ゆっくり隣を見る。
そして。
ぞっとした。
そこにいたのは。
マッド。
フォーサ。
そして。
レイ。
マッドが気まずそうに視線を逸らす。
フォーサは心配そうだった。
だが。
レイだけ違った。
空気が。
雰囲気が。
以前とは別人。
静か。
あまりにも静か。
クロエの脳裏に。
先ほどのレイの言葉が蘇る。
あなたも失った。
まさか。
クロエが聞く。
「第7位は死んだの?」
静寂。
レイが頷く。
そして。
淡々と言った。
「私が殺した」
クロエが目を見開く。
言葉を失う。
そうか。
この子は。
先に乗り越えたのか。
最も重いものを。
しかも自分の手で。
クロエが静かに聞く。
「これからどうするの?」
レイが答える。
迷いなく。
「能力ランキング制度を破壊するために」
「最上位を殺す」
クロエが息を呑む。
昔。
レイはそう言っていた。
クロエは不可能だと切り捨てた。
だが。
今は違う。
今のレイなら。
本当にやるかもしれない。
そう思わせる圧があった。
逆に。
レイが聞く。
「あなたはどうするの?」
クロエが黙る。
考える。
ディバイド。
自由を得るために。
アストラと作った組織。
ランキングを乗っ取る。
その予定だった。
だが。
もういない。
姉も。
幹部も。
部下も。
全員死んだ。
残ったのは。
自分一人。
今さら。
ランキング制度を乗っ取っても。
待っているのは。
孤独だけ。
だったら。
クロエが顔を上げる。
覚悟の目。
「仲間に入れて」
レイ達が驚く。
クロエが続ける。
「姉も幹部も部下も全員死んだ」
「もうディバイドはなくなったも同然」
息を吸う。
そして。
言い切る。
「だったら」
「私もランキング制度を破壊する」
静寂。
覚悟だった。
ランキング制度を壊して。
新しい世界の中で。
自由をつかみ取る。
自分の手で。
レイが静かに言う。
「あなたの力があれば」
「私は嬉しいけど……」
その時。
フォーサが勢いよく言った。
「仲間は多い方がいいよ!!」
明るい笑顔。
空気が少しだけ和らぐ。
マッドも頷く。
「大賛成です!!」
即答だった。
かなり嬉しそうだった。
レイが少しだけ笑う。
「色々思うところはあるけど……」
クロエを見る。
そして。
手を差し出した。
「よろしくね」
クロエの目が揺れる。
そして。
その手を握った。
こうして。
能力ランキング第19位。
能力『影喰い』
クロエが仲間になった。
その時。
扉が開く。
スライムだった。
「目が覚めたねぇぇぇぇ」
「大広間へおいでぇぇぇぇ」
◇
大広間。
広い空間。
ディオン。
スライム。
クロエ。
レイ。
マッド。
フォーサ。
六人。
だが。
ドルガンはいない。
レイが周囲を見る。
静寂。
ディオンが口を開く。
「悪いな、レイ」
「ドルガン様はいない」
レイが少し黙る。
数秒。
そして。
「まぁいいわ」
冷静だった。
ディオンが続ける。
「色々あったが……」
重い声。
「ランキング者はもう十七人しかいない」
静寂。
スライムが表を広げる。
能力ランキング表。
そこに並ぶ名前。
レイが静かに見る。
目指すものは一つ。
最上位の殺害。
そして。
ランキング制度の破壊。
残る最上位は。
あと五人。
能力ランキング制度。
その崩壊は。
目前だった。




