第171話 ディバイド誕生
リュウと大臣の死体。
静寂。
戦いは終わった。
クロエとアストラがその場に座り込む。
「はぁ……」
「はぁ……」
二人とも肩で息をしていた。
限界だった。
身体も。
心も。
全て。
そして。
二人は顔を見合わせる。
数秒。
沈黙。
次の瞬間。
二人同時に笑った。
大声で。
止まらない。
安堵だった。
生きている。
二人とも。
それが嬉しかった。
笑いながら。
涙が出た。
自然に。
止まらない。
やがて。
二人は抱き合った。
強く。
離さないように。
クロエが泣く。
アストラも泣く。
三年間。
長かった。
苦しかった。
寂しかった。
辛かった。
でも。
もう一人じゃない。
やっと。
姉妹は繋がった。
◇
しばらくして。
二人は歩いていた。
静かな道。
壊れた街を離れ。
人気のない場所へ。
風が吹く。
クロエが口を開く。
「アス姉……」
少し迷う。
そして聞いた。
「第4位って本当なの?」
アストラが笑う。
「ほんとだよー☆」
クロエが固まる。
最上位。
能力ランキング第4位。
姉は。
いつの間にか。
そんな場所まで行っていた。
クロエが少し俯く。
「すごいな……」
アストラがクロエを見る。
「クロエはー?」
クロエが答える。
「まだ分からないけど」
「次の会議でランクインするのは間違いないって」
アストラが頷く。
静寂。
風が吹く。
アストラがふと呟く。
「私達さー」
「これからどうしよっかー?」
重い問いだった。
姉妹は地獄を見た。
この世界の。
醜さを。
残酷さを。
知った。
次は能力ランキング。
強者が上に立ち。
弱者が支配される世界。
その世界も。
きっと残酷だろう。
クロエが小さく言う。
「私は」
少し間を置く。
「自由になりたいな」
その言葉で。
アストラの中で何かが繋がった。
自由。
その言葉。
ずっと求めていたもの。
アストラが口を開く。
「だったらさー」
クロエが見る。
アストラの目が変わっていた。
「ランキング制度を乗っ取っちゃおうよ☆」
クロエが目を見開く。
「え!?」
驚く。
当然だった。
クロエが言う。
「壊すんじゃなくて?」
アストラが首を振る。
「違うよ」
静かな声。
真剣だった。
「壊しただけじゃ意味がない」
クロエが黙る。
アストラが続ける。
「ランキングがなくなっても」
「人はまた別のルールを作る」
「また強い奴が上に立つ」
「また弱い奴が縛られる」
静寂。
アストラの声が重い。
「この世界はずっとそうだよー」
クロエが息を呑む。
アストラが前を見る。
「自由ってさー」
「頂点に立つ人間だけの特権なんだよ☆」
クロエの瞳が揺れる。
アストラが笑う。
狂気を纏った笑顔。
「だからー」
「その頂点ー」
「奪っちゃえばいいよ☆」
クロエが固まる。
理解した。
姉が何を考えているのか。
アストラが言う。
「ランキングに入りながらー」
「ランキング者を殺していくー」
「頂点まで全部奪う!」
静寂。
クロエが聞く。
「二人でやれるかな?」
アストラが笑う。
「二人じゃないよー」
「組織でやっていこ☆」
静寂。
クロエが少し笑った。
「組織名は?」
少しワクワクしていた。
アストラが考える。
今までの自分達との決別。
この世界を切り裂く。
支配を断ち切る。
そして。
笑った。
「決めた☆」
アストラがクロエを見る。
「今日から私達は」
静寂。
「ディバイド」
風が吹いた。
この日。
ディバイドが誕生した。




