第170話 完成する第4位
能力ランキング第7位。
リュウ。
この男は。
異常な執念を持っていた。
両目にレイピアが刺さったにもかかわらず。
倒れない。
それどころか。
凄味が増していた。
化け物。
その一言だった。
アストラが焦る。
汗が流れる。
その時。
「な……!?」
リュウが動いた。
速い。
目にも止まらぬ速さで。
アストラへ拳を振る。
完全な油断だった。
いくら身体能力が高いアストラでも。
これは。
避けられない。
死ぬ。
その瞬間。
ガクン。
リュウの身体が沈んだ。
影。
クロエだった。
リュウが影へ落ちる。
「チ」
リュウが舌打ちする。
間一髪だった。
クロエが叫ぶ。
「アス姉!!」
焦った声。
「奴はすぐ出てくる!!」
アストラが構える。
その時。
奥の木の影が揺れた。
リュウが現れる。
静かに。
まるで何事もなかったように。
「厄介な姉妹だ」
アストラの背筋が凍る。
恐怖。
本能が告げていた。
勝てない。
この男には。
アストラが震える声で言う。
「クロエ……!」
「ここは退くしか……」
その瞬間だった。
消えた。
リュウが。
次の瞬間。
クロエの目の前。
拳を振り下ろす体勢。
速い。
速すぎる。
間に合わない。
そのとき。
クロエの口が動いた。
小さく。
静かに。
「ごめんね」
アストラの思考が止まる。
嫌だ。
クロエ。
せっかく。
やっと。
分かり合えたのに。
目の前で。
死ぬなんて。
いやだ。
いやだ。
いやだ!!!!
その瞬間。
アストラの中で。
何かが切れた。
覚醒。
能力じゃない。
アストラ自身。
その身体。
これまで無意識に抑え込まれていた。
全てが。
解放される。
リミッターが。
完全に外れた。
骨。
筋肉。
神経。
全てが悲鳴を上げる。
壊れそうだった。
身体が軋む。
痛い。
だが。
止まらない。
もっと速く。
もっと。
もっと。
クロエを守るために。
その速度は。
加速世界のセレスと同じ。
いや。
超えていた。
ブン。
リュウの拳が風を切る。
だが。
そこにクロエはいなかった。
静寂。
リュウが目を見開く。
クロエも固まる。
アストラがいた。
クロエを抱えて。
少し離れた場所に。
クロエの瞳が揺れる。
「アス姉……?」
アストラが静かにクロエを下ろす。
その覚醒により。
アストラは正真正銘の第4位になった。
最上位アストラが完成した。
そしてリュウは悟る。
自分の死を。
笑う。
「なるほど」
低い声。
リュウが構えを解く。
「最後に聞いてもいいか?」
アストラが黙って見る。
リュウが聞く。
「お前は何者だ?」
静寂。
アストラが前を見る。
狂気を纏った笑顔。
そして答えた。
「能力ランキング第4位」
「アストラちゃんでーす☆」
次の瞬間。
消えた。
超速。
リュウが反応する。
だが。
遅い。
シュッ。
レイピアが走る。
首。
シュッ。
もう一撃。
シュッ。
さらに。
何度も。
何度も。
何度も。
リュウの首を刺した。
血が舞う。
大量に。
リュウの身体が揺れる。
膝が崩れる。
ドサッ。
倒れた。
能力ランキング第7位。
リュウ。
死亡。
◇
大臣が後ろへ倒れ込む。
腰が抜けていた。
震える。
止まらない。
目の前で。
最上位が死んだ。
能力ランキング第7位。
リュウが。
死んだ。
信じられない。
そんな馬鹿な。
大臣が這いずる。
必死に。
涙を流しながら。
叫んだ。
「クロエ!!」
「助けてくれぇ!!」
クロエが静かに見る。
冷たい目だった。
感情はない。
クロエが言う。
「みっともないわ」
「あなた」
その瞬間。
影が動く。
黒い手。
大臣の首を掴む。
大臣が目を見開く。
「ま、待ってく……」
ゴキッ。
鈍い音。
大臣の首が折れた。
力なく崩れる。
静寂。
全てが終わった。




