第十七話 怪物の影
マリンとナギが対峙する。
マリンの天敵。
ならば私たちがやるしかない。
レイが右手を上げる。
その時だった。
「……!?」
63位の仮面の男がナギの背後に回っていた。
いつの間に。
ナギへ向かってクナイを振り下ろす。
だが。
辺りを濃い霧が包み込んだ。
仮面の男は即座に後退する。
「チッ」
霧の中から声が聞こえる。
「ナギ、先走るな」
二人の男がナギの前へ出た。
一人はイヤホンをした男。
もう一人は太った男だった。
ナギが肩をすくめる。
「ひやひやしたわ」
「ステップはやっぱり不気味ね」
ステップ……仮面の男か。
レイは目を細めた。
「奴らもランキング者ね」
「はい」
マリンがうなずく。
「99位ミスト」
「能力『湿度操作』」
太った男を見る。
そしてもう一人。
「66位イヤーズ」
「能力『超聴覚』」
イヤホンの男を見る。
厄介な能力ばかりだ。
ペーパーが小さく呟く。
「奴らの地面に紙を仕込んだ」
「やるならいつでもいいぜ」
レイたちが驚く。
いつの間に。
「すごい、ペーパー」
レイが素直に感心した。
だが。
「全部丸聞こえだぜ!」
イヤーズが大声で叫ぶ。
全員が固まった。
「なっ……」
マッドが目を見開く。
これだけ離れている。
しかも小声だった。
それなのに聞こえた。
「彼の能力は一体どれだけの範囲が……」
マッドが呟く。
イヤーズは笑った。
「さぁな」
「試してみるか?」
最初に狙うべきはあいつだ。
レイはそう判断する。
その時だった。
マリンのアンコウが構える。
再び大量の水が集まり始める。
だが。
ナギは余裕の表情だった。
「無駄よマリン」
「私がいる限り、あなたは戦力にならない」
水流操作。
深海魚の力をほぼ封じる能力。
まさに天敵だった。
しかし。
突然。
地面が揺れる。
ドドドドドドドドドドッ!!
大量の馬が敵陣へ向かって突進してきた。
「くっ!」
ナギが顔色を変える。
「まずい!」
「動物……?」
レイは驚く。
味方の能力か。
それとも敵か。
だが。
今しかない。
レイたちは一斉に構える。
その時だった。
ガチャ。
ガチャガチャ。
ガチャガチャガチャガチャ。
不気味な音が響く。
全員の視線が地面へ向いた。
落ちていた剣。
槍。
鎧。
壊れた兵器。
金属という金属が一か所へ集まっていく。
巨大な塊になる。
そして。
塊から。
金属の腕が生える。
金属の脚が生える。
金属の顔ができる。
それは。
巨大な人型だった。
「なっ……」
マッドが息を呑む。
次の瞬間。
巨大な腕が振るわれた。
ドゴォォォォン!!
突進していた馬たちがまとめて吹き飛ぶ。
まるで子供がおもちゃを払うように。
圧倒的だった。
レイは理解する。
「あれが……」
「30位……」
誰もが言葉を失う。
巨大な人型の中心に埋め込まれる大男。
能力ランキング30位。
ギル。
能力『金属融合』
まさに怪物だった。
「下がりましょう」
マリンが即座に言う。
声には焦りがあった。
「あれが出てきては勝ち目がありません」
レイも反論できなかった。
強いとか弱いとか。
そんな次元ではない。
格が違う。
「撤退してください!」
マリンが叫ぶ。
レイたちは後退を始めた。
幸い。
巨大な身体のせいで機動力は高くない。
今なら逃げられる。
誰もがそう思った。
だが。
ギルは撤退するレイたちを見つめ。
不気味に笑っていた。




