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1ミリの光線しか出せない私が、能力ランキング22位を殺した日から全てが始まった  作者: eutoria


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第162話 それぞれの歪んだ愛情

大きな部屋。


豪華だった。


広い。


静か。


クロエはベッドに横たわっていた。


「ふぅ……」


深く息を吐く。


疲れていた。


心も。


身体も。


限界に近かった。


その時。


扉が開く。


入ってきたのは。


夫。


この国の大臣だった。


「お疲れ、クロエ」


穏やかな声。


優しい声だった。


クロエがハッとして起き上がる。


慌てて姿勢を正す。


「ごめんなさい、私……」


謝ろうとした。


だが。


夫が優しく手を上げて止める。


「いいんだ」


笑顔。


穏やかだった。


「いつもよく頑張っている」


クロエの目が少し揺れる。


夫は続ける。


「ゆっくりしなさい」


優しい。


本当に優しかった。


クロエの緊張が少し解ける。


この人だけは。


自分を認めてくれる。


必要としてくれる。


クロエはそう思っていた。


夫が言う。


「クロエ」


「新しい首は?」


クロエが頷く。


「はい」


「予定通りです」


その瞬間。


クロエの影が伸びる。


床を這うように。


黒く広がる。


そして。


影の中から。


死体が現れた。


一つ。


二つ。


三つ。


複数。


賞金首達の死体だった。


全員。


首を折られていた。


夫が満足そうに笑う。


「いつもすごいな」


感心した声。


「さすがは影姫クロエだ」


クロエの顔に笑顔が浮かぶ。


嬉しかった。


「すぐ兵士が取りに来る」


夫が淡々と言う。


「しばらく休みなさい」


そう言って。


部屋を出ていった。


クロエは満足そうに。


夫の背中を見ていた。


扉が閉まる。


静寂。


その瞬間だった。


夫の表情が変わる。


笑顔が消えた。


苛立ち。


嫌悪。


露骨だった。


「あの化け物が」


低い声。


冷たかった。


夫が舌打ちする。


「早く王になって」


目が濁る。


欲望。


野心。


「伴侶を増やしてやる」


吐き捨てるように言う。


そして。


去っていった。


クロエに。


光はなかった。











セレスと出会ってから一年。


アストラは変わった。


圧倒的に。


強くなった。


速さ。


剣技。


判断力。


能力の扱い。


全てが成長していた。


その日も訓練。


芝の上。


風が吹く。


ヒュン。


レイピアが走る。


次の瞬間。


セレスの頬に。


赤い線が走った。


傷。


浅い。


だが確かに。


当たった。


静寂。


アストラが目を見開く。


そして。


叫んだ。


「当たった!!」


喜びが爆発する。


ついに。


ついに届いた。


能力ランキング第4位。


セレスに。


セレスが頬に触れる。


血がつく。


そして。


手を叩いた。


パチパチと。


「やったわね」


微笑む。


穏やかな笑顔。


称賛だった。


アストラが固まる。


意外だった。


怒ると思っていた。


傷つけたら。


殺されるかと思っていた。


だが違った。


セレスは。


本当に嬉しそうだった。


アストラが思わず赤面する。


少し照れた。











部屋。


紅茶の香り。


二人は向かい合って座っていた。


静かな時間。


この一年。


アストラは多くを経験した。


人を殺した。


何人も。


目を抉った。


何十個も。


瓶の中にある。


最初は無理だった。


吐いた。


震えた。


泣いた。


だが。


慣れた。


少しずつ。


標的は悪人ばかりだった。


女を売る男。


子供を殺す賞金首。


人身売買。


殺人鬼。


そういう連中ばかり。


だから。


自分が正義だと思うようになった。


悪を殺している。


そう思えば楽だった。


そして。


認めたくなかったが。


変化もあった。


目。


その存在に。


ほんの少しだけ。


綺麗だと思う感情が。


生まれてしまっていた。


セレスの価値観が。


侵食していた。


セレスが紅茶を飲みながら言う。


「ついに」


「私に追いついてきたわね」


アストラが顔を上げる。


そこに悔しさはなかった。


嫉妬も。


怒りも。


ただ。


称賛だけ。


セレスは狂人だった。


間違いなく。


だが。


面倒見は良かった。


厳しく。


だが丁寧に。


アストラを育てた。


ずっと。


目をかけてくれた。


目玉収集を除けば。


強者として悪を狩る丁寧な師匠。


そんな風にも見えた。


だが。


アストラは決めていた。


もう充分だ。


学ぶことは終わった。


次は。


クロエだ。


妹を助ける。


それだけ。


アストラが口を開く。


「クロエを助けに行こうと思う」


静寂。


セレスは驚かなかった。


分かっていたように。


静かに頷く。


「いいわ」


あっさりだった。


アストラが少し驚く。


だが。


セレスは続けた。


「ただし」


空気が変わる。


静寂。


「条件があるの」


アストラが固まる。


以前も同じようなことがあった。


嫌な予感。


セレスが微笑んだ。


そして。


狂気を孕んだ目で。


言った。


「あなたの目を頂戴」


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