第152話 革命の意志
ノクリアを撃ち抜く前。
レイは。
カイの亡骸を抱いたまま。
静かに座っていた。
涙はまだ止まらない。
胸が苦しい。
兄を失った痛み。
後悔。
喪失感。
全てが心を押し潰していた。
だが。
意識は。
マッドとノクリアの会話を聞いていた。
静かに。
全てを。
マッドの言葉。
弱者の叫び。
家族を奪われた怒り。
理不尽への憎しみ。
ノクリアの言葉。
世界を守るための正義。
能力ランキング制度。
秩序。
平和。
どちらも。
正しかった。
レイは思う。
どちらも間違っていない。
いや。
むしろ。
世界から見れば。
ノクリアこそ正義なのだろう。
能力ランキング。
強者が支配する制度。
それによって。
救われた命もあるはずだ。
だが。
レイの瞳が揺れる。
マッドの発言の。
何が悪い。
彼は。
弱者の気持ちを代弁してくれた。
虐げられる者。
奪われる者。
踏みにじられる者。
その叫びを。
代わりにぶつけてくれた。
ランキング制度によって。
多くの弱者が命を落とした。
苦しんだ。
泣いた。
ランキング制度がなければ。
世界は良くなるのか。
それは分からない。
誰にも。
だが。
少なくとも。
今の制度は。
間違っている。
レイの拳が震える。
こんな制度がなければ。
両親も。
兄も。
ペーパーも。
ミントも。
死ぬことはなかった。
レイがふと。
原点を思い出す。
国を出た日。
あの日。
私は決めた。
能力ランキング制度を壊す。
それが始まりだった。
それが。
自分の全てだった。
レイの目が変わる。
迷いが消える。
最上位を殺さなければ。
この制度は終わらない。
誰かがまた。
ランキングを守る。
きっと。
この女もそうだ。
ノクリア。
制度を守る者。
レイの目に。
静かな殺意が宿る。
その時だった。
ドクン。
左手が熱い。
力が湧く。
レイが目を見開く。
「え……」
左手。
力が満ちていた。
覚醒。
レイは理解する。
ディオンとの特訓。
左手からも。
光線は出せるようになった。
だが。
1ミリ。
細すぎた。
弱すぎた。
フォーサの力を借りて。
ようやく実戦レベル。
だが今は違う。
出せる。
ブラッドを殺したあの時と同じ感覚。
確信する。
レイは横目で。
ノクリアを捉える。
能力『超高速』
バレれば終わり。
一瞬で殺される。
だから。
静かに。
身体を動かさない。
右手も動かさない。
ただ。
左手だけを。
ゆっくり向ける。
ノクリアへ。
呼吸を止める。
そして。
放つ。
バシュ!
◇
マッドは。
ノクリアの死体を見ていた。
呆然と。
何が起きたのか。
理解が追いつかない。
能力ランキング第8位。
ノクリア。
死んだ。
一瞬で。
マッドがゆっくり顔を上げる。
レイを見る。
「レイさん……」
息を呑む。
レイの顔が見えた。
その顔は。
冷たかった。
瞳に感情がない。
静かな殺意だけがあった。
マッドが固まる。
怖かった。
その目は。
人を殺すと決めた者の目だった。
その時。
「マッド!!」
フォーサが駆け寄ってきた。
マッドがハッとする。
フォーサを見る。
その時だった。
「二人とも」
静かな声。
マッドとフォーサが振り向く。
レイだった。
「大丈夫?」
いつもの声。
いつものレイ。
さっきの顔は。
もうなかった。
優しい目。
穏やかな顔。
マッドとフォーサが固まる。
見間違いだったのか。
いや。
違う。
確かに見た。
だが。
二人は小さく頷いた。
レイが頷く。
「そう」
静かな声。
レイはゆっくりカイを地面へ置く。
カイを少し見つめる。
そして立ち上がる。
振り向く。
マッドとフォーサを見る。
「マッド」
「フォーサ」
二人がレイを見る。
レイは静かに言った。
「これで最上位は」
静寂。
風が吹く。
レイの髪が揺れる。
そして。
言い切った。
「残り六人」
目に迷いはない。
「全員殺そう」
静寂。
マッドが固まる。
フォーサも固まる。
言葉が出ない。
目の前の少女は。
もう。
ただの光線の少女ではなかった。
世界を変えるため。
最上位全員を殺すと決めた。
革命者だった。




