第151話 至高の女王
マッドは震えていた。
全身の震えが止まらない。
相手は。
能力ランキング第8位。
ノクリア。
怪物。
勝てるわけがない。
頭では分かっていた。
マッドは必死に考える。
どうすればいい。
勝つ方法。
いや。
せめて逃げる方法。
だが。
何も浮かばない。
ノクリアの能力。
『超高速』
あの速さの前では。
逃げ切れるわけがない。
マッドが震える声で口を開く。
「ぼ……僕達は……」
息が詰まる。
怖い。
それでも。
言うしかない。
「第7位の味方じゃありません」
必死だった。
情けなくてもいい。
生き残るためなら。
「見逃してください……」
静寂。
ノクリアが冷たく答える。
「お前と」
「奥にいる少女は殺さない」
フォーサが息を呑む。
だが。
ノクリアの目がレイに向く。
殺意が宿る。
「だが」
「そこの黄色い髪の少女だけはだめだ」
マッドが顔を上げる。
「な……」
マッドが叫ぶ。
「妹だから殺すんですか!?」
ノクリアの表情がわずかに揺れる。
だが。
消えた。
「そうだ」
迷いなく答える。
「危険因子は」
剣を握る。
「殺すべきだ」
マッドの怒りが爆発する。
「ふざけるな!!」
叫ぶ。
震えながら。
それでも。
前へ出る。
「レイさんが兄を止めたんだ!!」
涙が滲む。
「お前達最上位が!!」
「もっとしっかり世界を守らないから!!」
拳を握る。
強く。
「レイさんも!!」
「僕達も!!」
「こんな目に遭ってるんだ!!」
静寂。
ノクリアの目が細くなる。
そして。
低く言う。
「我々は」
静かな声。
「世界を守るために」
「能力ランキングを制定した」
圧が増す。
重い。
「お前ごときが否定していい道理などない」
マッドが即座に叫ぶ。
「ある!!」
涙がこぼれる。
「道理ならある!!」
マッドの脳裏に。
家族が浮かぶ。
死んだ。
皆。
何もできなかった。
マッドが叫ぶ。
「僕の家族はみんな殺された!!」
ノクリアが止まる。
マッドがフォーサを指さす。
「フォーサも父親を殺されて!!」
「利用されそうになった!!」
指を下ろす。
そして。
レイを見る。
涙が溢れる。
「そしてレイさんは……」
声が震える。
「両親を殺され」
一拍。
「兄を殺さなきゃいけなくなった!!」
「お前達のせいだ!!!」
静寂。
風が吹く。
ノクリアは少しだけ下を向いた。
沈黙。
そして。
ゆっくり顔を上げる。
「それは」
「悪かった」
マッドが目を見開く。
ノクリアは続ける。
「だが」
目が鋭くなる。
「私は」
剣を構える。
「私のできる限りの人間を助ける」
マッドが言う。
「だったら……」
だが。
ノクリアが遮った。
「だめだ」
冷たい声。
レイを見る。
「彼女は危険だ」
その瞬間。
バシュ!
光が走った。
ノクリアの目が見開く。
「な……」
胸。
真ん中。
光線が貫いていた。
血が舞う。
ノクリアの身体が揺れる。
マッドが固まる。
フォーサも固まる。
ノクリアがゆっくりレイを見る。
レイはこちらを向いていない。
右手で。
カイを抱えていた。
だが。
左手が。
真っ直ぐノクリアへ伸びていた。
レイが。
左手で。
光線を撃った。
ノクリアが口から血を流す。
「そんな……」
膝が崩れる。
信じられない顔。
能力ランキング第8位。
ノクリア。
超高速。
圧倒的な速さを誇る怪物。
至高の女王。
ノクリアが倒れる。
ドサッ。
土埃が舞う。
動かない。
能力ランキング第8位。
ノクリア。
死亡。
静寂。
風だけが吹いていた。




