第135話 大戦争終戦
はるか前方。
戦場の中心から離れた場所。
ディオンは立っていた。
息は乱れていない。
先程まで。
レイの暴走した光。
あれを避け続けていた。
ただ避けるだけ。
それだけなのに。
極限だった。
マギアの『鈍足化』が残っていたからだ。
身体が重い。
普段の動きができない。
それでも。
避けた。
ギリギリで。
何度も。
死線を超えた。
だが。
途中で能力が解けた。
身体が軽くなる。
ディオンが息を吐く。
恐らく。
マギアも能力を解いて。
レイの光線を避けたのだろう。
静寂。
ディオンは拳を握る。
強く。
強く。
頭に浮かぶ。
ガイア。
ボルト。
ミント。
そして。
死んでいった兵士達。
仲間達。
「久々だな……」
「怒りを感じるのは」
目が冷たくなる。
その時だった。
前方。
一人の女が歩いてくる。
能力ランキング第18位。
マギア。
その目は真っ赤だった。
涙。
怒り。
憎しみ。
全てが混ざっている。
「殺す……!!」
低い声。
手には剣。
ディオンが目を細める。
一人。
違和感。
罠か。
ディオンは周囲を見る。
気配を探る。
殺気。
能力。
何もない。
誰もいない。
ディオンは理解した。
「そうか……」
マギアを見る。
「お前も怒っているのか」
マギアは答えない。
歯を食いしばる。
涙を流しながら。
ディオンを睨む。
「あなた達は……」
「私が……」
さらに涙が溢れる。
「殺す!!」
叫んだ。
次の瞬間。
バキ。
音が鳴った。
マギアの首が折れる。
一瞬だった。
ディオンの蹴り。
速すぎて。
見えない。
マギアの身体が崩れる。
地面に倒れた。
ディオンが静かに言う。
「能力も使わずに」
「俺に勝てるわけないだろ」
静寂。
マギアは強かった。
だが。
優しすぎた。
彼女の性格は。
戦いには向いていない。
まして。
戦争には。
向いていなかった。
能力ランキング第18位。
マギア。
死亡。
◇
マッドは走っていた。
全速力で。
ただ前へ。
息も忘れて。
そして。
見つけた。
レイ。
フォーサ。
「レイさん……!!」
叫ぶ。
だが。
次の瞬間。
止まる。
二人の隣。
横たわる姿。
ミント。
眠っているみたいだった。
だが。
動かない。
「そんな……」
声が震える。
膝から力が抜ける。
崩れ落ちた。
レイが涙を流しながら言う。
「ごめん……」
声が震えていた。
「ごめんマッド……」
フォーサも泣いていた。
「守れなかった……」
マッドの目から涙が溢れる。
止まらない。
三人は泣いた。
声を上げて。
子供みたいに。
ただ泣いた。
レイ。
マッド。
フォーサ。
三人の少年少女。
両親を失った子供達。
◇
空中都市。
内部。
クロノは治療を受けていた。
異形達が忙しく動く。
この都市には。
回復能力を持つ異形が数体いる。
その力で。
クロノの傷は塞がり始めていた。
左腹の穴も。
少しずつ。
回復していく。
クロノが息を吐く。
「こやつらでは歯が立たんのぉ」
苦笑する。
「そろそろワシが出るとするか」
そう呟いた。
その時だった。
バサッ。
巨大な影。
空中都市が揺れる。
クロノが振り向く。
そして。
固まる。
巨大な鳥。
黒い。
カラスのような漆黒。
鋭いくちばし。
四つの巨大な羽。
さらに。
羽から生える。
鋭い四本の爪。
神話の怪物。
ガルーダ。
クロノの額に汗が流れる。
理解した。
これは。
警告。
第2位。
ドルガン。
クロノが息を呑む。
「ドルガンか……」
冷や汗が止まらない。
クロノは即座に決断した。
「撤退じゃ」
迷いはない。
命令が飛ぶ。
空中都市が動く。
方向転換。
上昇。
そのまま。
離れていく。
こうして。
能力ランキング第3位。
クロノは。
空中都市と共に撤退した。




