第134話 両軍崩壊
ヴェルナは直感でレイの光を回避した。
だが。
頭は真っ白になっていた。
能力ランキング第23位。
ファルス。
能力ランキング第34位。
ラギ。
二人とも。
死んだ。
一瞬で。
ヴェルナの呼吸が乱れる。
あり得ない。
こんなこと。
だが。
現実だった。
そして。
ヴェルナは理解する。
自分の失敗を。
『直感』は告げていた。
あの作戦は危険だと。
否定していた。
なのに。
自分は信じなかった。
レイを潰すことを優先した。
ヴェルナは知らなかった。
もう一人の本当の脅威を。
フォーサ。
『強制覚醒』
補助系能力の最高峰。
彼女の可能性を無視した。
その代償。
ファルスとラギの死。
あまりにも大きすぎた。
「やってしまった……」
小さく呟く。
そして。
光線が止む。
これでは。
もう勝てない。
ヴェルナが考える。
撤退。
ここまで戦った。
多くを失った。
だが。
まだ終わりではない。
体勢を立て直す。
もう一度。
準備する。
そして。
次こそ殺す。
ヴェルナは決断した。
「マギア!!」
叫ぶ。
マギアが振り向く。
「撤退よ!!」
その瞬間。
マギアの顔が歪む。
怒りで。
悲しみで。
涙で。
「何言ってんの!?」
叫ぶ。
「フィオナの……!」
声が震える。
「みんなの仇!!」
涙を流しながら。
吠える。
「ここで討たなきゃ意味ないでしょ!!」
ヴェルナは黙って見ていた。
数秒。
静寂。
そして。
その目から感情が消えた。
冷たい目。
「そう……」
それだけ言う。
ヴェルナは背を向けた。
マギアが目を見開く。
「ヴェルナ!?」
だが。
ヴェルナは止まらない。
振り返らない。
そのまま。
去っていった。
◇
レイの視界が戻る。
突然だった。
光。
色。
景色。
全てが戻る。
「戻った……?」
レイが息を呑む。
そして。
周囲を見る。
絶句した。
何もない。
木。
岩。
異形。
全て消えた。
焼けていた。
抉れていた。
破壊されていた。
戦場が。
消えていた。
「これを……」
レイの声が震える。
「私が……?」
信じられない。
自分がやった。
何も見えないまま。
レイが震える。
そして。
慌てて右を見る。
フォーサ。
いた。
無事だった。
レイが安堵する。
よかった。
だが。
その隣。
ミント。
静かに横たわっていた。
穏やかな顔。
苦しみのない顔。
眠っているみたいだった。
でも。
動かない。
レイの膝から力が抜ける。
「あ……」
声にならない。
現実が。
再び胸を貫く。
「ああぁぁぁぁぁぁ……」
嗚咽。
涙。
止まらない。
フォーサも泣き崩れる。
「ミントぉぉぉ……」
二人とも。
もう戦えない。
戦意など。
残っていなかった。
◇
中衛。
兵士達は耐えていた。
疲労は限界。
それでも。
誰も倒れない。
スライムも。
怒りのまま戦い続けていた。
その時だった。
伝令が叫ぶ。
悲報。
ミント死亡。
マッドが止まる。
完全に。
動かない。
「……は?」
小さな声。
理解できない。
「何を……」
顔が青ざめる。
「何を言ってるんですか?」
思考が止まる。
ミント。
死んだ?
あり得ない。
あり得ない。
あり得ない。
だが。
その否定が。
次の瞬間。
怒りへ変わる。
どす黒い感情。
憎しみ。
殺意。
内側から。
溢れる。
止まらない。
「ふざけるな……」
低い声。
マッドの空気が変わった。
「僕の母を……」
拳が震える。
目が血走る。
「よくも殺したなぁぁぁぁぁ!!!!」
叫び。
能力発動。
地面が揺れる。
泥。
広がる。
一帯全て。
敵も。
味方も。
関係ない。
全域。
兵士達が驚く。
「マッド!?」
スライムが振り向く。
次の瞬間。
泥の手が現れる。
無数。
だが。
違う。
クロエが目を見開く。
「……っ!」
泥の手。
その形が変わる。
手ではない。
尖る。
細く。
鋭く。
棘。
「あなた……」
クロエが息を呑む。
理解した。
覚醒。
マッドは。
クロエを見ていた。
学んでいた。
影の棘。
それを。
泥で再現した。
無数の泥の棘。
一斉に異形を。
貫く。
ズガガガガガガガガッ!!!!
串刺し。
何百。
何千。
まとめて。
貫通。
異形達が崩れる。
落ちる。
死ぬ。
静寂。
中衛の異形が。
一瞬で消えた。
兵士達が絶句する。
誰も動けない。
マッドだけが動く。
能力解除。
息も忘れて。
ただ。
走る。
全速力で。
前線へ。
ミントの元へ。
母の元へ。




