第131話 次の標的
中衛。
戦場は血と怒号に包まれていた。
異形。
異形。
異形。
終わらない。
だが。
押されてはいなかった。
むしろ。
押している。
その中心にいるのは。
能力ランキング第60位。
スライム。
「うおおおおぉぉぉぉ!!」
怒号。
粘液が地面を埋め尽くす。
異形を飲み込む。
動けなくなったところを。
殴る。
潰す。
ガイアの死。
ボルトの死。
その怒りは消えていなかった。
兵士達も同じだった。
誰も退かない。
誰も怯まない。
異形を殺し続ける。
ただそれだけを繰り返していた。
クロエが呟く。
「恐ろしいわね」
マッドも頷く。
二人は支援している。
影で兵士を助ける。
泥で異形を足止めする。
しかし。
今は必要ない。
兵士達だけで押している。
ランキング者は前線へ集中している。
だから。
この中衛に怖いものはない。
本来なら。
だが。
クロエは感じていた。
兵士達の疲労を。
限界が近い。
クロノに大ダメージを与えてから。
あの老人は姿を現さない。
だが。
異形だけは増え続ける。
終わりが見えない。
クロエは空を見た。
空中都市。
まだ浮いている。
レイ。
上手くやりなさいよ。
心の中で呟いた。
◇
レイ達は走っていた。
前線へ。
ディオンの元へ。
三人で駆ける。
だが。
途中で異形達に見つかった。
「見つかった!!」
フォーサが叫ぶ。
前方。
異形の群れ。
数十。
いや。
百はいる。
レイが足を止める。
そして叫んだ。
「フォーサ!!」
振り返る。
「私に能力を!!」
フォーサが頷く。
両手を向ける。
緑の光。
能力『強制覚醒』
光がレイを包む。
身体が熱くなる。
力が溢れる。
両手を前へ向けた。
ミントが目を見開く。
「レイ……まさか!」
レイが笑った。
「任せて」
次の瞬間。
両手から光が放たれる。
ズガァァァァァァァン!!
巨大な光線。
右手。
そして。
左手。
異形達を貫く。
さらに。
レイは腕を振った。
「くらえ!!」
光が動く。
横薙ぎ。
一直線。
異形達が切り裂かれる。
上半身と下半身が分かれる。
悲鳴もない。
一瞬だった。
異形の群れが消えた。
フォーサが呆然とする。
ミントも言葉を失う。
レイが左手を見る。
そして。
握る。
開く。
小さな光。
「左手からも出るようになったの」
嬉しそうに言う。
「1ミリだけどね」
笑った。
ディオンとの特訓。
死ぬほど苦しかった。
何度も首を絞められた。
何度も気絶した。
その結果。
左手からも光線が出るようになった。
ただし。
1ミリ。
今はフォーサの能力で無理やり引き出している状態。
だが。
十分だった。
フォーサとミントは黙っていた。
今の光景が。
理解できなかった。
もうレイは。
上位能力者だった。
◇
前線。
ディオンは戦っていた。
視界はない。
真っ暗。
何も見えない。
だが。
問題はなかった。
身体が覚えている。
耳が。
皮膚が。
空気が。
全てを教えてくれる。
ディオンは思い出す。
昔のことを。
能力ランキング第2位。
ドルガン。
「ディオン」
「あらゆる状況に対応できるようになれ」
ディオンは若かった。
理解できなかった。
だが。
ドルガンは続けた。
「例えば」
「目が見えないなら」
「見えない状態で戦え」
簡単に言った。
そして。
始まった。
地獄。
目隠しをして戦う。
毎日。
何度も。
何度も。
何度も。
死にかけた。
それでも続けた。
誰も同じ特訓をしなかった。
いやできるわけがなかった。
だが。
ディオンだけはやった。
今。
その意味が分かる。
ディオンが笑う。
「さすがドルガン様だ」
異形を蹴り飛ばす。
首を折る。
さらに前へ。
その時だった。
ヴェルナが笑う。
小さく。
静かに。
ディオンには超圧縮が当たらない。
もう分かった。
ラギも。
マギアも。
ファルスも。
通じない。
なら。
狙う場所は一つ。
ヴェルナが口を開く。
「ファルス、ラギ」
二人が振り向く。
ヴェルナの目が細くなる。
能力『直感』
その先に映る未来。
ヴェルナが言った。
「作戦を変更するわ」
そして。
遠くを見る。
こちらへ向かってくる三人。
レイ。
フォーサ。
ミント。
『直感』が示していた。
別の潰すべき相手を。
ヴェルナの視線は。
レイ達へ向いていた。




