第130話 人外の無能力
ディオンは一人だった。
能力ランキング第16位。
ヴェルナ。
能力ランキング第18位。
マギア。
能力ランキング第23位。
ファルス。
三人を相手にしている。
マギアの『鈍足化』を受けながら。
ディオンは止まらない。
ファルスの『超圧縮』を避ける。
攻撃へ転じる。
だが。
ヴェルナの『直感』が邪魔をする。
ディオンはギリギリだった。
だが。
それは相手も同じだった。
これだけの戦力。
これだけの能力者。
それでも。
ディオンが崩れない。
異常だった。
その時。
異形達がこちらへ流れてくる。
ディオンの顔が曇る。
異形。
つまり。
向こうの戦いが終わった。
誰かが勝った。
嫌な予感がした。
すると。
一人の女が駆けてくる。
能力ランキング第34位。
ラギ。
「ファルス様!!」
全員がラギを見る。
ラギは息を切らしていた。
そして。
少しだけ言葉を詰まらせる。
「ボルトは死にました」
静寂。
ディオンの表情が固まる。
ラギは続けた。
「でも」
「ブリザも死にました」
全員が目を見開く。
相打ち。
いや。
恐らくラギも援護した。
それでも。
ブリザと相打ち。
ボルト。
やはり怪物だった。
ディオンは何も言わない。
だが。
その目だけが変わる。
殺意。
怒り。
悲しみ。
全てが混ざった。
おぞましい感情。
「もういい」
低い声。
誰も動けない。
「もう許さん!!」
叫ぶ。
次の瞬間。
ドゴォォォォォン!!
異形が吹き飛ぶ。
さらに。
もう一体。
もう一体。
破壊。
破壊。
破壊。
ディオンが暴れ始めた。
その姿は人ではない。
猛獣。
いや。
怪物。
マギアの『鈍足化』を受けている。
それなのに。
全く遅く見えない。
異形を破壊しながら。
位置を変える。
軌道を変える。
動き続ける。
だから。
ファルスの『超圧縮』が当たらない。
「なんなんだよあいつ……」
ファルスが汗を流す。
全員が息を呑む。
だが。
一人だけ。
ヴェルナだけは違った。
『直感』が告げる。
今。
当たる。
能力ランキング第34位。
ラギ。
ディオンが焦っている今なら。
ラギの能力が通る。
ヴェルナが振り向く。
ラギを見る。
ラギも理解した。
小さく頷く。
そして。
準備を始めた。
◇
ディオンは感情を押さえ込んでいた。
怒り。
悲しみ。
憎しみ。
今にも爆発しそうだった。
だが。
抑える。
冷静でなければ死ぬ。
異形を破壊する。
身体は重い。
マギアの能力。
それでも動く。
ファルスの狙いを避ける。
そして。
ヴェルナを見る。
殺す。
そう思った瞬間。
世界が消えた。
真っ黒。
何も見えない。
「しまった」
ディオンが焦る。
怒りを抑えることに集中しすぎた。
ラギの存在を忘れた。
ディオンらしくない。
致命的なミス。
「よし!!」
マギアが拳を握る。
勝った。
そう思った。
「ブリザの仇!!」
ファルスが能力を構える。
『超圧縮』
今なら当たる。
誰もがそう思った。
だが。
その時だった。
「緩めるな!!」
ヴェルナが叫ぶ。
マギアが驚く。
ファルスも驚く。
「は?」
二人がディオンを見る。
そして。
凍り付いた。
ディオンの動きが。
全く変わっていなかった。
異形を破壊する。
避ける。
走る。
戦う。
何も変わらない。
見えているかのように。
「な……」
ラギが震える。
信じられない。
視界を奪った。
完全な暗闇。
なのに。
何故。
ディオンは止まらない。
ファルスが後退する。
「馬鹿な……」
ディオンは前を向く。
見えていないはずなのに。
真っ直ぐ。
ヴェルナ達を見据えるように。
能力ランキング第11位。
ディオン。
常識から外れている。
いや。
人間から外れている。
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