第129話 灼熱電磁
「なんなのよ……」
ブリザが後退る。
汗が止まらない。
目の前の男が理解できなかった。
「なんなのよあなたは!!」
叫ぶ。
そして。
再び能力を発動する。
空間が揺れる。
無数の氷鎖。
最後の力。
もう一度使えば。
自分はまともに戦えなくなる。
分かっていた。
それでも。
使うしかない。
氷鎖がボルトへ巻き付く。
全身。
腕。
脚。
首。
完全拘束。
そして。
凍結。
のはずだった。
だが。
凍らない。
「な……」
ブリザの顔が青ざめる。
鎖が赤くなる。
白かった氷が。
溶ける。
蒸発する。
そして。
能力ごと消えていく。
ボルトが一歩前へ出る。
「くらえ」
拳。
ただそれだけ。
避けられない。
ブリザは理解する。
死ぬ。
ドゴォォォォォォン!!
拳が直撃した。
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴。
熱。
肉が焼ける。
骨が溶ける。
人間だったものが。
崩れていく。
能力ランキング第44位。
ブリザ。
死亡。
静寂。
ボルトは見えない目で前を見る。
まだ終わっていない。
「ディオン」
歩く。
「今行く」
だが。
身体が傾いた。
「ん?」
違和感。
足がない。
いや。
あった。
だが。
灰になって崩れていた。
ボロボロと。
そう。
限界だった。
能力『電磁支配』
何度も。
何度も。
何度も。
使った。
そして。
今。
『灼熱電磁』
覚醒により進化した能力。
身体の許容量を超えた力。
ボルトの鍛え上げられた身体でも耐えられない。
ボルトが笑う。
不思議だった。
恐怖はない。
「すまん」
小さく呟く。
「ディオン」
「スライム」
「ガイア」
親友達の顔が浮かぶ。
そして。
フォーサの顔が浮かぶ。
ミントの顔が浮かぶ。
不思議だった。
あの二人を見ていると。
昔を思い出す。
「そういえば」
「娘と妻がいたんだったな」
苦笑する。
昔。
捨てたもの。
強さを求めた代償。
今になって思い出した。
ボルトの身体が崩れる。
腕。
胸。
首。
全てが灰になる。
能力ランキング第39位。
ボルト。
死亡。
◇
中衛。
戦いは続いていた。
異形。
異形。
異形。
終わらない。
その中で。
「レイ!!」
声が響く。
レイが振り向く。
「フォーサ!?」
「ミント!?」
二人が走ってきていた。
レイが驚く。
「どうしてここに!?」
ミントが息を切らしながら答える。
「最前線が危険になったの」
「だから後衛も中衛も前へ押し上げることになったわ」
レイの顔が曇る。
フォーサとミントの。
表情が暗い。
マッドが気付く。
「何があったんですか?」
聞く。
少しの沈黙。
そして。
ミントが答えた。
「……ボルトが死んだの」
レイが固まる。
クロエも。
マッドも。
言葉が出ない。
情報が来なかった理由は分かる。
士気。
戦場。
混乱。
だから遮断されていた。
だが。
知ってしまった。
フォーサが前へ出る。
そして。
レイの肩を掴む。
「レイ!!」
必死な声。
「お願い!!」
涙を堪えながら。
「指示を出して!!」
全員がレイを見る。
マッド。
ミント。
フォーサ。
そして。
クロエも。
レイは考える。
ディオン。
今一番危険なのは彼だ。
彼が死ねば終わる。
だが。
今目の前にフォーサがいる。
『強制覚醒』
この力なら戦況を変えられる。
なら。
答えは一つ。
「クロエ!!」
「マッド!!」
二人が振り向く。
「ここをお願い!!」
クロエが頷く。
マッドも頷く。
レイが続ける。
「フォーサとミントは私と来て!!」
二人が頷く。
「ディオンを助ける!!」
レイの判断。
異形を止めるなら。
クロエとマッドが必要。
二人は広範囲を支えられる。
だが。
ディオンのいる場所には。
ランキング者がいる。
なら。
必要なのは。
自分の光線。
レイはそう判断した。
そして。
走り出す。
フォーサ。
ミント。
三人が前線へ向かう。
誰も気付いていなかった。
この判断が。
戦場を大きく変えることに。
そして。
最悪の結果を招くことに。




