第十三話 ディバイド
レイたちは城を脱出した。
夜。
人気のない路地裏。
そこへ辿り着いてようやく足を止める。
誰も喋らなかった。
反乱軍は壊滅した。
ペーパーの妹も死んだ。
多くの仲間も死んだ。
全ての事情をペーパーに話す。
静寂。
ペーパーが口を開いた。
「そうか……」
それだけだった。
静かに下を向く。
レイは胸が苦しくなった。
もし。
もっと早く覚悟を決めていたら。
もっと早く戦っていたら。
結果は変わっていたかもしれない。
だが。
もう終わったことだ。
死んだ人間は帰ってこない。
レイは拳を握る。
二度と同じことを繰り返さないために。
もう恐怖してはいられない。
その時。
ペーパーが顔を上げた。
「レイ」
「お前は何者なんだ?」
レイが視線を向ける。
ペーパーは真剣な顔だった。
「俺もランキング者だ」
「51位の攻撃も少しは見えた」
「だが」
「お前の攻撃は」
「何も見えなかった」
マッドも黙っている。
聞きたいのだろう。
レイは少しだけ迷った。
だが。
正直に話したい。
ここにいる二人は共に戦った仲間だ。
レイは息を吐く。
そして言った。
「私は22位を殺した」
二人が驚愕する。
「両親を殺されたの」
「そして能力が覚醒した」
二人は黙る。
「私は能力ランキングを破壊する」
「能力ランキングに虐げられてきた人たちを救う」
「そのために旅をしている」
ペーパーが目を細める。
レイはまっすぐ前を見た。
「必ずこの制度を壊す」
「どんな相手がいても」
「絶対に」
沈黙。
そして。
ペーパーが笑った。
久しぶりに笑ったような顔だった。
「だったら」
「俺も仲間に入れてくれ」
レイが驚く。
ペーパーは続けた。
「俺も」
「俺みたいな人間をもう出したくない」
妹を失った。
仲間を失った。
何も守れなかった。
だからこそ。
もう同じ悲劇は見たくない。
レイとマッドは顔を見合わせる。
そして笑った。
「もちろん」
レイが答える。
こうして。
能力ランキング88位。
能力『紙変形』
ペーパーが仲間になった。
◇
城内は大混乱だった。
反乱軍の襲撃。
囚人たちの脱走。
だが。
それ以上に大きな問題があった。
能力ランキング51位。
ゼノの死亡。
王の間。
ぺブルは玉座に座ったまま頭を抱えていた。
「馬鹿な……」
「ゼノがやられた……」
信じられなかった。
51位。
自分より遥かに上の存在。
そのゼノが死んだ。
その時。
声が響く。
「ゼノは誰にやられた?」
ぺブルが顔を上げる。
そこには。
黒いフードを被った集団が立っていた。
いつ入ってきたのか分からない。
気配すらなかった。
ぺブルの顔が引きつる。
「ディバイド……!!」
ランキング狩り。
能力者を狙う謎の集団。
ぺブルは即座に能力を発動する。
無数の小石が浮かび上がる。
だが。
違和感。
体が動かない。
「な……?」
自分の影が。
自分の首を締めていた。
「か……は……」
息ができない。
玉座から立ち上がることもできない。
「誰がやったか聞いてるの」
冷たい声。
一人が前へ出る。
そして。
フードを外した。
黒い長髪。
冷たい瞳。
美しい女だった。
ぺブルの顔から血の気が引く。
「お前は……」
「影姫クロエ……」
「19位……」
クロエは表情を変えない。
「知らないのね」
その一言。
次の瞬間。
ゴキッ。
嫌な音が響く。
ぺブルの首が折れた。
能力ランキング73位。
能力『小石射出』
ぺブル死亡。
クロエは床に転がる死体を見た。
そして静かに呟く。
「ゼノの傷」
「あの時の跡と同じだった」
周囲のディバイドたちが顔を見合わせる。
クロエは窓の外を見た。
「どこに行ったのかしら」
夜風が吹く。
黒髪が静かに揺れた。




